キャスリン・ビグロー監督最新作『デトロイト』是枝裕和、町山智浩、小島秀夫らが称賛コメント!井上三太のイラストも

イラク戦争を舞台にした『ハート・ロッカー』で女性初のアカデミー賞監督賞を受賞し、続く『ゼロ・ダーク・サーティ』ではオサマ・ビンラディン殺害を描いたキャスリン・ビグロー監督の最新作で、1967年に発生したアメリカ史上最大級の暴動の渦中に起きた凄惨な事件を描く映画『デトロイト』が、2018年1月26日より上映される。これに先がけ、本作を鑑賞した映画監督の是枝裕和、映画評論家の町山智浩、ゲームクリエイターの小島秀夫、漫画家の井上三太、作家のいとうせいこうらがコメントを寄せた。

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アメリカ在住の映画評論家の町山智浩は、「40分の尋問シーンは『悪魔のいけにえ』以上の恐怖!これは現在も続いているアメリカの狂気だ!」と、ホラー映画の傑作に匹敵する衝撃に打ちのめされたとコメント。ゲームクリエイターの小島秀夫は、「暴動の裏側で蔓延する、社会が抱える秩序という闇を、映画という力をフルに活用して描き切る。凄かった」と語った。

漫画家の井上三太は「強烈な差別と暴力にゾッとする」と“戦慄の一夜”に衝撃を受け、凶悪な白人警官クラウス(ウィル・ポールター)と被害者の一人、ラリー・リード(アルジー・スミス)をモデルに、一触即発なシーンを加えた激熱なイラストを公開した。

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作家のいとうせいこうは、「142分間、あらゆる胸の痛みを喚起しながら、問題の根幹にある差別への厳しい糾弾を伝える。傑作」と断言。そして日本を代表する映画監督の一人である是枝裕和は、「あの時いったい何が起きたのか?ビグロー監督は記録を縦糸に想像力を横糸に、裁判でも明らかにならなかった“真実”を丹念に紡いでいく。ドラマチックな飛躍が紛れ込む余地を安易に与えないその倫理観に敬意を表したい」と、ビグロー監督の演出手腕を讃えている。

以下は著名人によるコメント一覧。

■町山智浩(映画評論家)
40分の尋問シーンは『悪魔のいけにえ』以上の恐怖!これは現在も続いているアメリカの狂気だ!

■越智道雄(アメリカの政治・文化研究者)
重苦しい主題の牽引車にサスペンスを駆使した手腕に舌を巻いた。ビグロー監督の卓抜さは、トランプ支持層がむき出す「幼稚さ」を「童顔」の俳優に形象化したことに集約される。

■小島秀夫(ゲームクリエイター)
あらゆる“恐ろしい”という感覚を体験させる衝撃の142分。サスペンスでもホラーでもフィクションでもない。1967年の『アルジェ・モーテル殺人事件』を元に撮られたビグローの最新作は、暴動の裏側で蔓延する、社会が抱える秩序という闇を、映画という力をフルに活用して描き切る。凄かった。

■ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
50年前の『サマー・オヴ・ラヴ』は同時に人種対立の夏でもありました。実際にあった事件に基づくこの力作で警察の残虐行為を見ていると、いまだに問題が解決されていないことを痛感します。

■井上三太(漫画家)
強烈な差別と暴力にゾッとする。これが実話で、さらにその差別と暴力が未だに鳴り止まないことにさらにゾッとする。ただこの重いテーマをビグロー監督は一流のエンターテインメントに仕上げた手腕に脱帽する!面白い!

■吉岡正晴(音楽ジャーナリスト)
名門レーベル、モータウンのスーパースター、テンプテーションズに憧れていたドラマティックス。彼らのキャリアに重くのしかかる運命の一夜。『ドゥ・ザ・ライト・シング』以来の衝撃の本質を突いた問題作だ。

■前嶋和弘(上智大学教授)
冷静な事実の積み上げ。特殊な状態の中での不合理の連続に圧倒される。史実を一気に駆け抜ける追体験。だが、これは50年前の過去ではない。白人警官に対する黒人のやり切れない怒りは今も耐えがたき現実そのものだ。

■宇多丸(ラッパー・ラジオパーソナリティー)※11/30発売『週刊文春エンタ!』より
「極限状況下で一線を踏み越えてしまう者たち」を描いてきた剛腕監督が、ついに米国内の「戦場」にカメラを向けた……極めて鋭利かつ、残念ながら今もタイムリーな群像劇。

■いとうせいこう(作家・クリエーター)※「twitter」より
1967年のデトロイト暴動のまるでドキュメントのような映像の連続で始まり、142分間、あらゆる胸の痛みを喚起しながら、問題の根幹にある差別への厳しい糾弾を伝える。傑作。

■五十嵐浩司(元朝日新聞NY支局長・大妻女子大教授)
黒人への不正義を、監督はジャーナリストのような手法で告発する。この不正義はいまも燻るだけでなく、イスラム教徒、移民へと広がりつつある。デトロイト中心部はこの暴動以来、荒れ果てたままだ。それは不正義が消えないことへの異議申し立てのようでもある。

■鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
舞台は1967年に起きたデトロイト市の暴動。悲劇はその片隅で起きた白人警官と黒人住人との対立で生まれるが、司法は黒人二人を射殺した白人警官を無罪とする。今でも時折噴出する人種差別の事件。米国社会の黒い亀裂をズシリと感じさせる映画だ。

■山崎まどか(コラムニスト・翻訳家)※11/30発売『週刊文春エンタ!』より
緊張感のあるサスペンス。リンチ事件の只中にいるような臨場感がありながら抑制が効いていて、隅々まで静かな怒りのパワーが行き届いている。たった今、見るべき映画。

■辛坊治郎(ニュースキャスター)
1967年、日本はアメリカがもたらした自由と民主主義の下で、高度経済成長の真っただ中にあった。しかし同じ頃、アメリカには実は白人のための自由と民主主義しかなかったのだ。今はどうか?映画の問いは深い。

■是枝裕和(映画監督)
あの時いったい何が起きたのか?ビグロー監督は記録を縦糸に想像力を横糸に、裁判でも明らかにならなかった『真実』を丹念に紡いでいく。ドラマチックな飛躍が紛れ込む余地を安易に与えないその倫理観に敬意を表したい。

■モーリー・ロバートソン(ジャーナリスト・アーティスト)
監督の繊細な場面設定に加え、見事なまでの俳優陣の迫力ある演技に早々に釘付けに。当時の露わになった衝突があるからこそ、改めて今も形を変えて残る差別について、多様性について考える必要がある。

■丸屋九兵衛(bmr)
あの日、ソウル・ミュージックの拠点ミシガン州デトロイトで何が起こったのか……真相はこれだ!(Whatcha See Is Whatcha Get)。重い物語の中、(ここでも)軽めの男を演じるジェイソン・ミッチェル(Eazy-E)にも注目を!

■川村晃司(テレビ朝日コメンテーター・ジャーナリスト)
見るべき映画が50年を経て日本に上陸。トランプ大統領の支持基盤デトロイト。闇の歴史が息詰まる演出で活写される。観客は胃がキリキリ痛む。痛みの中でアメリカの今も見えてくる。見逃せない作品だ!

■堀尾正明(フリーキャスター)
人間とはここまで残虐になれるのか、酷く暴力的になれるのか、恐怖感に全身襲われながらスクリーンに吸い込まれていく。カメラワークと編集の技が「お見事!!」のひと言。気がつけば、実際に起こった史実の現場・デトロイトに私は居た。この映画を見逃すと後悔します。

■真魚八重子(映画評論家)
恐れることなく、キャスリン・ビグローの最高傑作と言おう。142分をこんな構成で作り上げるとはなんたる度胸。これが過去の海外の出来事では済まされない、この時世にこそ観るべき作品!

■高橋諭治(映画ライター)
派手な煽りの演出は一切なし。異常な緊張と恐怖に囚われた人間たち、そして刻一刻と悪化する現場の状況が、ひたすら克明に映し出される。その描写の並外れた迫真性と、決定的な“暴発”の瞬間に身震いせずにいられない。

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『デトロイト』
2018年1月26日(金) TOHOシネマズ シャンテ他全国公開
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ ウィル・ポールター ジャック・レイナー アンソニー・マッキー
配給:ロングライド

【ストーリー】 1967年7月、米デトロイト。史上最大級の暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。すると、警官たちは偶然モーテルに居合わせた若者へ暴力的な尋問を開始。やがて、それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を生むのだった…。

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