【全起こし】『沈黙』ジャパンプレミア、窪塚洋介「監督はどこの馬の骨とも分からない俺に敬意を払ってくれた」

MC:浅野さんから見ていて、他の方の印象に残っているシーンはありますか?

浅野:海のシーンに見学に行った時に、「ここでやってんの……?」っていう(驚き)。もう大変な波を起こしてやってるんで「ここは僕は入れないなあ」と思って、涼しい顔をして見てました(笑)。

MC:海のシーンというとやっぱり塚本さんだと思うんですけど。

塚本:僕はもうスコセッシ教の信者ですからね。(会場笑い)苦行も喜びのひとつです(笑)。全然大丈夫なんですけど、ただでかいんですね、いろんなことがすべて。波がでかいんです。波があってセリフを言うってのいうのが僕の使命ですけど、波が来るとですね、人間の身体の構造的にどうしても鼻の中に水が入って咳き込むんですね。フガフガって(笑)。その咳をおさめてからセリフを言うんですけど、言おうとすると次の波が来てるんです(会場笑い)。どのようなタイミングでセリフを言ってどう咳をおさめてというのがかなりシビアで、その悲壮感が顔を引きつらせてかなりリアリティを呼んでいるじゃないかと。そんなところ見ていただくとね悲壮なシーンなのに笑いが起こってしまうかもしれません。

スコセッシ:あのシーンの塚本さんは本当にすごくてスタッフの皆さんの中には涙を流す人もいたんですよね。

MC:小松さんも加瀬さんもアンドリュー・ガーフィールドさんとの共演もありましたけど、振り返ってどうでしたか?

小松:アンドリューさんは、役的にもとても大変な方で、ずっとストイックに減量をしていたりとか声もかけられ状態ではなくお話もなかなかすることはできなかったんですけど、本編で観ていてもすごく過酷なものだったんだなと思いました。自分とは全然比べられないなっていうぐらいの大変さで。最後にアップする時はハグをしてくださって、もうちょっとお話できたらなとは思いました。

MC:監督からも演出いただきましたか?

小松:加瀬さんの役のジュアンに関するシーンのお芝居で、一日中撮影をしていて、だんだんと日が落ちてきて夕方ぐらいになったときに私の撮影をするということになって、「やっときた」と思って撮影してOKが出て、自分の感情を出す印象的なところだったんですけど、次の日になってプロデューサーの方々が私の前に来て、「菜奈ごめんね。昨日のシーンを編集したら天候がつながらなかったんだよ。もう一回今日やってくれ」って言われて……。その時の感情を思い出しちゃって、すごい泣いちゃったんですけど、でも求めてくれていることはまだできると思ってくれているんだなと思って。その時は辛くて大変だったんですけど、幸せなことだ、もう一回見ていただけるんだなと思って。そんなことがありました。

スコセッシ:彼女がリアクションをする激しいシーンなんですよね。その彼女の芝居にびっくりして、もう一回お願いしないといけないのが痛くて痛くて。でももう一度お願いしましたら、同じぐらい激しい演技を見せてくれました。本当にこれはなかなか見ものでしたよ。

MC:という話がでましたが、加瀬さんは振り返ってなにかございますか?

加瀬:小松さんは普段だるそうなのに(会場笑い)、芝居に入ると200%位の力が出るんで、そのシーンのことはよく覚えています。その日の撮影が終わるとたおれちゃうんじゃないかと思うくらい、毎回力を出し切っちゃうんで、さすがにもう一回って言われた時は大変だなと思いましたけど、監督のおっしゃるように次の日も全く同じ位の力でやるんで、普段パワーを蓄えているのかなと思いました(笑)。

MC:ありがとうございます。そしてイッセー尾形さんの登場シーンは、海外でも笑いが起こったということなんですが、スコセッシ監督の現場でなにか意識していたことはありますか?

イッセー:いつもの一人芝居でやっているような人物の捉え方を全部喜んでくださって、窪塚くんが言うように幸せの絶頂の連続でしたし、スコセッシさんのところに行くためには、カツラをかぶってメイクをして衣装を着て行かなければならないんですね。全員日本人のスタッフで、彼らがいなければこの映画は成り立たなかったと思います。もうそれはそれは見ていてとんでもない事態が起こっているらしいんですね。言葉の違いとか、この人だったのにこの人になったとか、僕たち侍はおでこをバリカンで剃るんですけども、何百人そったんでしょう?壊れたバリカンが何個もあって。朝早くから夜遅くまで、汚れたら洗濯して、次の日はケロッとして僕達を迎えてくれて、その日の撮影がうまくいくと。同じホテルに帰ってきたスタッフは泥だらけになって、「今日戦ったね」という顔を見るんですね。スタッフ同士が、すごい絆で結ばれたりもして、そういうことが全部含めてこの映画が成り立っているんだなとあらためて思いました。

MC:どうもありがとうございました!