【全起こし】『沈黙』ジャパンプレミア、窪塚洋介「監督はどこの馬の骨とも分からない俺に敬意を払ってくれた」

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遠藤周作の小説をマーティン・スコセッシ監督が映画化した『沈黙-サイレンス-』。1月17日(火)、本作のジャパンプレミアが都内で行われ、マーティン・スコセッシ監督をはじめ、キャストの窪塚洋介、浅野忠信、塚本晋也、イッセー尾形、小松菜奈、加瀬亮が登壇した。今回はその模様を全文でお届けする。

MC:マーティン・スコセッシ監督、再び日本に来ていただきありがとうございます!

スコセッシ:(日本語で)ありがとう、ありがとう。

MC:撮影以来、再会されたキャストの方もいると思いますが、久々にお会いになられてどんな思いでしょうか?

スコセッシ:東京でこうやって一堂に再会できるなのは本当に感慨深いものであります。久しぶりの方もいるわけですが、2年間かけて作品を編集してきたので、2年間ずっとみなさんとお付き合いしていた感覚でおります。なので私にとっては昨日あったばかりという感覚の方ばかりです。私達の周りの友達ですとか、家族ですとか、映画を観た人がたくさんいまして、「日本人キャストのあの方はどうだった、あの方はこうだった」というような話をたくさんいただいてまして、もう日本人キャストの皆さんはおなじみの顔になってます。

MC:監督が映画で一番伝えたかったことは?

スコセッシ:まず皆さん御存知の通り、本作は遠藤周作先生の原作に基づくものですが、私はこの原作に非常に感動を覚え、そして非常にインスピレーションを受けました。遠藤先生の他の本も全部読んでるんですけどね。この本に関しては本当に27、8年がかりでようやく映画として完成させたわけですが、これだけ長年かかった理由としてひとつ思い浮かぶのが遠藤先生がなにを言いたかったのか。これをまずは咀嚼しなければならなかった。そしてようやく理解するに至ってから、どうやって映像にしていくのか。どういう解釈を加えていくのかという思案が続きました。これは共同脚本を務めているジェイ・コックスさんと一緒に二人三脚で脚本を書き、ようやく2006年になって脚本を書き上げたわけです。そしてもう一つ言いたいことは、この原作とともに生き、原作で描かれる文化とともに生きることを通して、私は自分自身が成長することができましたし、また自分自身の中でも生活がいろいろ変わったり、あるいは再び父になったりしたわけですけど、自分の私生活のあれこれと並行してこの原作とともに生きて参りました。それがこの映画をより豊かなものにしていったんだと思います。その経験を通して、先生が言いたかったことは、より明瞭に理解することができるようになりました。

MC:日本人キャストの演技はどのように感じられましたか?

スコセッシ:本当に皆さん、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれて、僕としてできることはそれを形にして、それを映像で見せることとしか言いようがないですね。こう言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、これは心の底から言えることですが、皆さんの頑張り、力、深みを見せてくれました。それを映像という形にする上で、編集にも1.5年かかったわけですけれども、それだけ精魂込めて作り上げて参りました。そしてもう一言いわせてください。この映画を公開してくださるKADOKAWAの皆さんにもこの場を借りて感謝の意を評したいと思います。完成するまでに時間がかかったので、辛抱強くお付き合いくださいましてありがとうございました。KADOKAWAの皆さんとは去年『雨月物語』のレストレーションをさせていただいたのですが、次の作品である『山椒大夫』を手がけようと思っているのですが、この『雨月物語』ですが、私が初めてみた日本映画なんですね。12、3歳ぐらいの時だったと思います。非常に美しい映画で、こうやってKADOKAWAの皆さんと一緒に作業していく中で、もう一回原点に立ち戻ったかのようなそういう感覚でおります。