【全起こし】『沈黙』スコセッシ監督来日会見「モキチのはりつけシーンは全キャストが泣いた」

遠藤周作の小説をマーティン・スコセッシ監督が映画化した『沈黙-サイレンス-』。本作の日本公開を記念して、昨年10月に続きマーティン・スコセッシ監督が再来日を果たし、1月16日(月)に都内で記者会見を行った。今回はその模様を全文でお届けする。

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スコセッシ:積年の思いでやっと映画を完成させることができました。そして日本の皆さんにこの作品を受け入れてもらうことができて、私としては夢が叶ったという思いです。本当にありがとうございます。

MC:映画が完成した今、改めて日本の方々にどんなことを伝えたいですか?

スコセッシ:本当にこれは長年かけてようやく完成にこぎつけた作品なわけですが、原作は実は日本で読ませていただき、その時に映画化したいと思いました。しかし、どう作るべきなのか、どうこの原作を解釈すべきなのか、なかなか自分の中で答えが見つからずにおりました。それには、自分の当時の宗教観とか、自分の中にあった疑念だったりとか、日本の文化に対する理解がまだ浅かったこともあったと思うんです。この作品と付き合っていくのは試行錯誤の旅のようでした。もうひとつ、人生を生きていく中でのさまざまな葛藤を学んでいきましたし、歳を重ねていくことでもいろいろと学んでいきました。それで作品は完成したんですが、これで終わりだとは思っておりません。今の自分の心の中に掲げていて、この映画とともに生きているという感覚でいます。

質問者:昨年ヴァチカンで上映された際に、ローマ教皇に謁見されたと思うんですが、その時の感想や何をお話になったかをお聞きしたいのですが。

スコセッシ:実際、教皇に映画を観てもらっているかは確信を持てません(笑)。というのも非常に忙しそうにしていらしたんで。ただ、謁見した時に小さな部屋で会わせていただいたんですけど、人を緊張させないお方なんですね。(謁見時に)物事の順番だとか、いろいろ覚えなければいけなくて混乱したんですけど、非常にリラックスしてお会いすることができました。教皇とは、例えば、この映画の中でもフィーチャーされていますけど、「雪のサンタマリア」という絵画の話だとか、長崎の話をしたりイエズス会の神父たちの話をしたりしました。そして教皇から「映画で伝えたいことが伝わり、なにか成果をあげることができると良いですね」という言葉をいただきました。そして最後に、「僕のためにも祈って欲しい」というお言葉をいただきました。というのも、その後、教皇は別のミーティングに入らなければいけなかったのですが、それが隣の部屋で行われるミーティングだったようなんです。そこにはなんと200人ぐらいの枢機卿(カトリック教会における教皇の最高顧問)が並んでいました(笑)。

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スコセッシ:上映会は100人位の聖職者の方に来ていただいたんですけど、実はその前の日にも、数百人のイエズス会の方を迎えて試写会を開催いたしました。その時は、アジアの方々ですとか、南アメリカの方々が多くいらしていて、かなり面白い対話をさせていただきました。