塚本晋也「スコセッシ監督が遠藤周作の小説を映画化するのは事件だ!」

10月19日にマーティン・スコセッシ監督と窪塚洋介、浅野忠信が登壇した映画『沈黙−サイレンス−』来日記者会見に続き、11月1日(火)にカトリック信徒のモキチ役を演じた塚本晋也が、長崎の日本二十六聖人記念館にて記者会見を行なった。自ら主演を務めた監督作『野火』は、ミニシアターの公開ながら社会現象化し大ヒット。また、大ヒット作『シン・ゴジラ』や福山雅治主演の『SCOOP!』など、俳優としても個性的な演技を披露している。オーディションでモキチ役を射止めた塚本さんは、出演が決まった2009年に訪れて以来、二度目の長崎訪問となった。

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写真:繫延あづさ

黒い装いで登場した塚本は、長崎メディアが多数集った会見場で「(マスコミの数が)凄いですね」と驚いた様子。「2009年に役が決まった時、少しでも「沈黙」の世界に近づきたい、舞台となるトモギ村を見てイメージを固めたいと思い、外海や遠藤周作文学館を周りました。今回、映画が完成間近となった二度目の長崎では、遠藤周作さんが足を運ばれた場所を訪れて、更に見識を深める旅をしたい」と挨拶した。

質疑応答では、「現在生きている監督で、最も尊敬しているスコセッシ監督が日本の原作を映画化するということは“事件”。皆さんも一緒にその“事件”を体感していただきたい」とコメント。『タクシードライバー』を見て以来のファンなので、テレビドラマで英語を話す役を演じていたことでオーディション参加を打診され、即答で「もちろん」と答えたのが始まりとなった。遠藤周作の原作は、「高校時代に「野火」も含め日本文学を読みまくったのですが、あろうことか「沈黙」は読んでいませんでした。すぐに書店に行き読んだ。様々な側面のある非常に興味深い小説で、今まで気づかなかったのがかなり恥ずかしいと思った」と述べた。

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写真:繫延あづさ

敬愛するスコセッシとのオーディションでは、「監督と台詞の掛け合いをする機会がありました。監督はもの凄く演技が上手で、自分も名優になったように感じた。それはまるでジャズのセッションのようで、この経験があれば受かっていなくてもいいと思えたくらいだった」と振り返る。巨匠との現場では、「あまり演技指導はしないんです。その代わり、何度も何度も撮る。5回6回なんてレベルではなく、カットによっては100回くらい。それがもうビックリでしたね。ただ、役者をすごく信用していて、全て委ねるんです。極端に言うと『好きにしていいよ』と。役者が出したものを最終的に監督が汲み取って、映画の血肉にしていく」と、演出術に驚いた。自分にとってこの作品はと問われ、激しい弾圧を受けるモキチの「殉教シーンの撮影で、万が一、死んでしまってもまあいいか、と思えるほどの映画。それほどの想いで取り組んだ。答えるのは難しいですが、一言で言うと最高の映画です」と熱く語った。

演じたモキチの役作りについて、「自分のキャラに近いのはキチジローですが、敬虔な信徒であるモキチを演じるに際しては、自分が信じるスコセッシをスコセッシ教として崇める気持ちと、戦争がまた起こってしまうかもしれない現在に、未来の子供たちに祈りを捧げる気持ち。この2つを心に持って」挑んだとのこと。更に「モキチ役では50kg切るまで痩せなくてはならなく、栄養士がついていたものの、かなりギリギリまで痩せて辛かったです。立ち上がるのも、何かをつかまなくてはならない感じだった」と、精神面だけではなく、肉体面でも過酷な役作りだったという。

そして、遠藤周作が見つめた長崎について、「一度目は、ただ「沈黙」に近づきたい、という想いで来ました。今回は、「女の一生」などの小説も読んで来ましたので、より深い理解がある。思想を奪われる、爆弾を落とされるという二度の暴力を受けた長崎という土地を愛した遠藤周作さんは見事に描いている」と、日本を代表する文学者に対する敬意を語りました。

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写真:繫延あづさ

2018年の世界文化遺産登録に推薦されている“長崎の教会群とキリスト教関連遺産”対する質問には、「まさに隠れキリシタンが生きた場所。遠藤周作さんの小説では、隠れキリシタンのことを“弱者”、殉教した方を“強者”、棄教してしまうもうひとつの“弱者”を描いています。考えさせられるのは、何が強くて、何が弱いのか、読んでいてそれがわからなくなるんです。殉教とは、自分がとやかく言えることではなく、その当時、その時を生きた方々の尊厳があったのだと思います。では隠れの方が弱いのかというと、僕には弱いと思えない。信念を曲げずに、隠れてでも信仰を守ろうとした方々で、自分の考え方に近い。そんな方々が生きた場所は、とても綺麗で美しい場所。だからこそ、世界遺産に指名されたことは素晴らしいこと」と締めくくった。映画『沈黙-サイレンス-』は2017年1月21日(土)に全国ロードショー。

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Photo Credit Kerry Brown

映画『沈黙-サイレンス-』
原作:遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊) 原題:Silence 監督:マーティン・スコセッシ 
脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ 撮影:ロドリゴ・プリエト 美術:ダンテ・フェレッティ 編集:セルマ・スクーンメイカー
出演:アンドリュー・ガーフィールド リーアム・ニーソン アダム・ドライバー 窪塚洋介 浅野忠信 イッセー尾形 塚本晋也 小松菜奈 加瀬亮 笈田ヨシ 
配給:KADOKAWA  映画素材クレジット:Photo Credit Kerry Brown
公式サイト:http://chinmoku.jp
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