【全文掲載】アンセル・エルゴート「第二の故郷に」、山下智久「中から見ていた」、全編日本ロケで“東京”の見え方に変化が!

MC:アンセルさんには、日本語が大変お上手ですが、どのようにして日本語を勉強されたのでしょうか?

アンセル:ありがとうございます。先生と毎日4時間勉強しました。日本にいるときは、毎日、日本人と話しました。だから役のためにとってもいい練習でした。最近もインタビューのために練習しました。

MC:ありがとうございます。渡辺謙さんは、本作のエグゼクティブプロデューサーでもあります。どのような役割を果たされたか教えてください。

渡辺:最初の企画の成り立ちがJ・T・ロジャー、つまりこの脚本を書いている方なんですけれども、彼が『王様と私』のバートレット・シャーと仲良しで、バートにJ・Tを紹介されまして、そこからが企画の立ち上げなので、エグゼクティブプロデューサーとして参加をするということになりました。仕事の内容としては、基本的には脚本が全部英語で書かれてくるので、新聞記者の言葉も刑事の言葉もヤクザの言葉も、それぞれそ普通に使わないような言語がたくさん出てくるんですね。ジェネレーションの問題もあるので、そういう中の日本語訳のそれぞれ各キャラクターに合ったチェックを全編、僕は撮影がなくても夜中の3時ぐらいにメールが来て、「明日までに返してください」みたいな、そんな仕事をしながら自分の役とも向き合っていました。ですから、アンセルの日本語がどんどん上達していくので、「ここは日本語でやりとりしたい」、「とりあえずトライしてみよう」ということでアンセルはその撮影に向けて準備をしてリハーサルをして、ただ上達したんですけれども、作品の流れをもしかしたら壊すかもしれないっていうシーンの場合は、「アンセル、ごめん。やっぱりもう1回英語に戻そうよ」っていう話を、プロデューサーともしながらディレクターともしながら、本当に腹を割って日本語と英語と行ったり来たりをしながらやる撮影をやらせてもらいました。でもこれってすごくリアルな外国人と日本人が喋る時のすごくリアルな雰囲気だったと思うので、そういう意味では彼がもしかしたら今後は全部日本語でジェイクの役をやるかもしれないという可能性もあるぐらい、とても頑張って上達をしてくれました。

MC:アンセルさんは、マイケル・マン監督の現場はいかがでしたでしょうか?

アンセル:マイケル・マン監督と仕事ができてとっても幸せです。マイケル・マン監督は力強い監督です。考えを明確に表現します。時々クルーにはちょっと厳しいですが、皆そんな監督を尊敬しています。私はいつもマイケル・マン監督を信じていました。

MC:渡辺謙さんはいかがでしょうか?

渡辺:本当に大変だったんですよ。スタッフも寝る間もないぐらい。例えば衣装のフィッティングで決めた事を、セットとキャラクターが合わないからもう1回やりなおそうと、オンセットで衣装チェンジしたり、僕の場合はネクタイを変えたりとか、プロップもいろんな小道具を用意してもらって、その中で現場でチョイスするとか、とにかくスタッフは大変だったと思います。でも僕たちはとにかくそのセットの中にあるものが全部真実なんだということを、マイケルが信じさせてくれたので、本当にある意味すごく居心地はよかったですし、惜しむらくは僕はあまり多くのシーンがなかったので、マイケル・マンとやり合うことがそんなに数多くなかったのが一番心残りではあります。

MC:マイケル・マン監督は第一話の監督を務めておりますので、まずはその第一話を楽しみにしていただければというふうに思います。それではここからはマスコミの皆様からの質疑応答に移りたいと思います。

Q1:渡辺謙さんにお伺いしたいんですけれども、今回日米合作の作品ということで、これまでハリウッド作品でも数多く活躍されて来られましたけれども、アメリカのスタッフおよびキャストの方たちと仕事をしたことで、改めて認識した魅力ですとか、新しい発見がありましたらお聞かせください。

渡辺:映画の場合と、こういうシリーズのテレビ作品っていう中で言うと、スケールはほとんど変わらないです。要するにサイズはテレビサイズなんですけれども、スケールは全く映画と同じぐらいで、キャストもエキストラの数もクルーの数も、ほとんど映画のスケールです。ただ、コロナ渦での撮影だったので、プレッシャーは非常に強くありましたね。要するに僕らは言い方悪いんですけども、代えがないので、僕たちがコロナにかかってしまうと、そのスケールの作品の撮影が止まってしまうんですよね。だからその間、本当に気をつけましたし、いつも以上に撮影中は誰とも会わなかったりとか、そういうことのほうが今作では非常に大きなハードルで、逆に言うとそれをきっちりコントロールする、ヘルスデパートメントみたいな方もいましたし、もちろんハリウッドでも今そういうデパートメントがきちんと活動できなければ撮影もできないの状況なので、そういうことは今までには感じなかった大変さではありました。でも現場に入ればやることはそんなに変わりはないので、非常にクオリティの高い脚本にしてもそうですし、ロケーションのスカウティングにしてもなかなか東京で撮影をするっていうのはハードルが高いんですよね。でも、それをプロダクションがすごく良い場所を見つけて、90年代の東京というのを描く、そういう場所を探してくれた。それも今作のかなりのパワーだという風に思っています。

Q2:エルゴートさんにお伺いしたいんですけれども、どのように漢字を書けるまで日本語のトレーニングしたのか、あと日本の社会、街、文化をどう思いましたか?

アンセル:マイケル・マンがまずLAでジャーナリスト学校みたいなことをやってくれたんですね。短期コースみたいなことをやってくれたんですけども、最初は私立探偵の人に電話をかけて、その私立探偵の人がいろんな人の役をやってくださって、いろんな人にインタビューをする訓練をしたんですね。その後に実際に街に出て、街の人にインタビューをして実際に記事を書くということをやったんですが、なかなか街の人がインタビューに答えてくれなくて。するとその私立探偵の人から「それじゃダメだ。なんでもいいからコメントをもらってこい」と言われて、それで記事を書いたというような経験がありましたので、本当にリアルな没入体験をしました。ですので、それが実際に新聞記者の役を演じる時にすごく役に立ったんですね。何かがおかしいなと感じたときに、プロデューサーとしても、ちょっとこれおかしいんじゃないかっていうことで、J・T・ロジャーズさんに話をすると、彼らは非常にオープンに聞き入れてくれまして、「じゃあ脚本を見直そうか」という風に言ってくださったんですね。そしてその結果、非常にリアルな非常に臨場感のある没入感のあるものが出来上がったのではないかと僕としては思っています。そしてコロナ渦での撮影だったということで、自分自身の家族や友達を日本に連れてくることができなかったんですね。ですので、ここにいらっしゃるキャストの方が自分の家族になったような気がしました。そして日本文化っていうのはもともと興味があったし、とてもクールだなって思っていたんですが、日本で過ごすうちにもっと大好きになりました。日本文化を愛するようになりました。そして東京は最初に来たときは全然違う世界だなと思ったんですが、撮影を経験して今は第二の故郷だと感じています。

Q3:渡辺さんにお伺いしたいんですが、先ほど東京での撮影は本当に難しいんだということをおっしゃっていました。どういうところが難しさなのかと、今後もし東京での撮影がより容易になるいうことがあるのであれば、そのために必要なことはどんなことなのか考えをお聞かせいただけますでしょうか。

渡辺:まず原則的に許可を取るのが非常に難しいですね。『明日の記憶』という映画の時にもプロデューサーをやったんですけれども、許可を得ないで撮ることは、いくらでも出来るんですけれども、例えば高速道路であったりとか新宿駅のコンコースであったりとか、そういうのもあの映画で初めて許可をちゃんともらって撮影することができたんですよ。でももちろんそれを撮影するときのレギュレーションは高いんですけれども、でも海外で撮影する時っていうのはちゃんとポリスがガードしてくれて、通行人も止めてくれたりとか、そのブロックを撮影用に許可していくれたり、今回もいくつかとれたんですけれども、やっぱり非常に高いハードルを越えなければいけないんですね。ですから、映画やドラマの撮影っていうものが、大事な文化なんだということを行政にもご理解を頂いて、できるだけハードルを下げていただく。僕らもそのルールをちゃんと守るっていうことを地道に続けていくしかないのかなという気はしています。もしかしたら、この作品が次のハードルを少し下げてくれる要因になれば嬉しいなというふうに思っています。

MC:ありがとうございます。そろそろお時間ということになってしまいましたので、最後にアンセルさん、そして渡辺謙さんにメッセージをいただきたいと思います。

渡辺:今、バイオレンスを描くということが、地球上で行なわれていることがあまりにも悲惨なことが多いので、なかなか難しい時代ではあると思います。でもその中にある、それぞれの人間性、人間の持っている過酷さ辛さ喜びも含めてですけれども、そういうものが詰まった作品だとは思っています。シリーズの作品ですので、1本も見逃さずに、それぞれのキャラクターのその裏にあるものをご覧いただけたら、また今までと違うドラマとして受け止めていただけるんじゃないかというふうに思っています。是非応援していただければと思います。よろしくお願いします。

アンセル:このテレビ番組を作ることを、そしてこのキャストの方々と一緒にお仕事ができたことを、そして日本で過ごしたこと、本当に素晴らしい体験になりました。僕のアメリカ人の友人たちがみんなヤキモチ妬いてるんですね。「羨ましい~」っていう感じで言ってました(笑)。アメリカの人たちは、みんな日本が大好きなんです。ですので本作は東京自体が主人公になっていると思いますので、アメリカの人が楽しめると思いますし、日本にいる方も本当に今までにない日本・東京が見られると思いますので、ぜひご覧になって頂きたいです。ありがとうございました。

「TOKYO VICE」
2022年4月7日(木)より、WOWOWオンデマンド(第1話のみ)、米HBO Max(第1話〜第3話)にて同時配信
2022年4月24日(日)より、WOWOWにて独占放送スタート
監督:マイケル・マン HIKARI ジョセフ・クボタ・ラディカ アラン・プール
出演:アンセル・エルゴート 渡辺謙 菊地凛子 伊藤英明 笠松将 山下智久 菅田俊 谷田歩 萩原聖人 豊原功補 伊藤歩 渡辺真起子 板谷由夏 松田美由紀

【ストーリー】 東京の大学を卒業したアメリカ人青年ジェイク(アンセル・エルゴート)は、故郷に戻ることを勧める両親に反し、難関な試験を突破して日本の大手新聞社に就職する。警察担当記者となったジェイクは特ダネを追いかけるうちに、ヤクザ絡みの事件を手練で解決する刑事・片桐(渡辺謙)と出会う。新聞記者として危険な闇社会へと入り込んでいくジェイクに片桐は忠告する。「この世界は、一度開いた扉は閉じるのが難しい」。秘密を抱えながら男社会を渡り歩く女性記者・詠美(菊地凛子)、風俗街で暗躍する刑事・宮本(伊藤英明)、ジェイクと意気投合する若きヤクザのリーダー・佐藤(笠松将)、謎めいたカリスマホスト・アキラ(山下智久)。夢や希望ものみ込まれる東京のアンダーグラウンドで、生き残れるのは誰か。そしてジェイクは、新興ヤクザ勢力の危険すぎるネタをつかもうとしていた…。