【全文掲載】妻夫木聡「なかなか癖の強い…、うさん臭さと言うか…」“嫌な野郎”になりきった共演者との距離感を明かす

MC:安藤さんはどうでした?

安藤:家族のシーンはすごく幸せに撮影できたので、一番刻まれています。

MC:窪田さんは、木を切ったりもしてましたよね。

窪田:初めてチェーンソー持って使い方から練習をして、でも木ってそんな簡単に倒れないんですよね。すごく切り方にも工夫がいるし、チェーンソーだけでは絶対に切り崩せないものだし、樹齢80年の木がそこら中に立ってて。でもこの木を切らなければいけないって思った時に本当に一つの命を自分の中に取り入れるような、儀式的な感覚にもなったんですよね。すごい貴重な体験でした。

MC:眞島さんは、癖のある役でございましたが、どんな印象が残ってますでしょうか?

眞島:石川組っていうのは参加出来るだけで楽しいものと緊張感があるんですけれども、特に妻夫木さんと久々にお会いして、前回お会いした時もどちらかというと僕が一方的に話して、妻夫木さんが頷いて一言二言何か質問をするような、そういうシーンが前回はあって。久々にお会いしてお芝居させてもらった時に同じような感じだったので、僕がずっと話をして、たまに妻夫木さんが頷いているような。なので、いつか逆の関係性の役をやらせていただけたらなって撮影中に思ってました(笑)。

MC:『愚行録』のときにご一緒してたんですよね?

眞島:そうです。

MC:妻夫木さんはどうでしたか?

妻夫木:眞島さんっていうだけで、すごく安心感があるというか、なかなか癖の強い役なんで、何ていうか…、あってるっていうと語弊があるかもしれないですけど(笑)。

眞島:ありがとうございます(笑)。

妻夫木:安心して僕もすっと入っていけるというか、なんか言おうとすると絶対語弊が…(笑)、ご本人は本当に素晴らしい方なんで全然違うんですけど、ちょっとうさん臭さと言うか(笑)、すうっと入ってくるんですよ、嫌味なく。それがすごく、僕自身はやっていて気持ちが良かったです。

MC:またね、反対の役というのを石川組でね。

石川:やります(笑)。

MC:監督、撮影で特に印象に残っていることとか、教えてもらってもいいでしょうか?

石川:今回は本当に素晴らしい役者さんたちが揃って、見てるだけですごく楽しい気分で。本当に2年前のコロナ渦の中だったので、撮影終わりにいつもみたいにみんなで飲みに行ったりとかっていうことがなく、本当に静かにでもすごく充実した撮影の期間だったんですけど、その後、釜山でお三方と揃ってご飯を食べられたっていうのがすごく思い出に残ってます。

MC:これだけのストーリーで緻密な人間模様で見えてくるので、それを紡ぎあげた平野さんにもお伺いしますけれども、撮影現場にも行かれたりしたんでしょうか?

平野:そうですね。コロナ期間中だったんで、なかなかタイミングを見出せなかったんですけど、一回だけ伺いました。丁度、弁護士事務所で妻夫木さんと眞島さんと安藤さんが対面する割と緊迫した場面だったんですけど、原作を読んでくださった方はご存知かもしれませんけど、眞島さんの役が原作でも嫌な野郎なんですけど(笑)、すごくいい感じで嫌な感じで絶妙で(笑)。その緊迫した場面に向かって、皆さんが集中している雰囲気を感じ取れて、すごく僕自身も興奮しましたし、あとは素人みたいな感想なんですけど、弁護士事務所のセットが、本当に緻密に作られていて、美術の人たちがよく作ったなあと、ちょっと感動したりしましたね。

MC:初号試写でご覧になったと思うんですけど、いかがでしたか?

平野:はい、もう本当に感動しました。実は二回ほど試写で観たんですけど、一回目は小説がどういうふうに映画になったのかなっていうことを気にしながら観ていたんですけど、二回目は原作が一回解体されて、映画的な内的なロジックでどういうふうに場面が結びあわされているかっていうのが、すごく腑に落ちて、監督の技量に非常に敬服しました。皆さん本当に素晴らしい表情をされていて、演じられた役者の皆さんと、その表情を引き出した監督さんのコラボレーションに胸を打たれました。はい。

MC:どうもありがとうございます。そして、ベネチアと釜山に行かれたわけでございますけれども、実際にお客様とお会いになったと思います。どんな反響があったかっていうのを教えて貰っていいでしょうか?

妻夫木:ベネチアは、日本で観てくださった方の反応には無い反応があって、僕たちもベネチアの方々と一緒に観終わって、その後スタンディングオベーションをいただいたんですけれども。終わったとき、何人か笑ってる人がいて、ベネチアの方だとこういうふうに見えるんだな、こういうふうに感じるんだなあっていう。こういう作品が国境を越えてこんなにも捉え方が違うんだっていう、そういう反応は初めてだったので、すごく面白かったですね。あと釜山国際映画祭のクロージング作品に選ばれて、最後に僕たち壇上に立って挨拶して、観終わった後に皆さんが二回盛大な拍手をしてくださったみたいで、本当に目が肥えている方々がいっぱいいらっしゃる中で、そうやって盛大に迎え入れてくれたっていうのはすごくうれしかったですね。一つの映画として認めてくれたんだなあっていう、シンプルにすごくうれしかったですね。

MC:窪田さんはいかがでしたか?

窪田:観終わって、スタンディングオベーションがあって、じゃあ終わりですってなって、帰る動線が観てくださった人と一緒に出て行ったんですけど。観てくださった方が「グレート!」とか言ってくれたり、「写真撮って」とか言ってくれて。動線が一緒なのもすごい新鮮でしたね。生で観終わった感想をすぐにいただけたりしたんで。

妻夫木:ずっと、進めないんだよね(笑)。

窪田:全然先に行けなくて(笑)。みんなと帰り道が一緒なので(笑)。面白かったですね。

MC:安藤さんはどうでしたか?

安藤:私は釜山に行かせていただいて、撮影中とかも、みんなでご飯っていうのもなかったし、監督とも。私はもともと監督とあんまりおしゃべりができないので、石川監督に限らず、どの監督でも。だけど映画祭で一緒になると、違う異国の場所でご飯食べて、やっとチームみたいな気持ちになれて、今すごい私たち仲良しなんです(笑)。

MC:石川監督も感無量だったんではないでしょうか?

石川:先ほども言ったように、本当に釜山で皆さんと仲良くご飯を食べるっていう、それだけでもこんなに幸せなことなんだと思いながら過ごしましたし、あとベネチアは、皆さんが帰られた後も数日自分は長く残ったんですけれども、上映が終わって数日経っているのに、その辺を歩いてるとすごい声をかけられて「良かったよ」って言ってもらえて、届いたなあっていう実感がすごくあって、思い出に残ってます。