【全文掲載】田中圭「すいません、ビビっていて…」異様な雰囲気に飲まれ、一言も口をきかなかった共演者に謝罪

MC:ありがとうございます。そして、今泉監督、お願いします。

今泉:『mellow』を監督しました今泉力哉です。こうやって初日を迎えられて、すごく嬉しく思います。「素敵でしたよね」って、さほちゃんが言ってくれて、だいぶ楽になりました(笑)。短い時間ですがよろしくお願いいたします。

MC:ありがとうございます。まずは、監督。この作品に登場するキャラクター、そして物語と、作る上で特別に意識したことはありますか?

今泉:『パンとバスと2度目のハツコイ』を作ったチームで「もう一本、なにか作れませんか?」というお話をいただいて、「オリジナルで好きに書いて良い」というお話だったので、いつも恋愛ものとかを作っているんですけど、今回も片思いとか、思いを伝えるとか、伝えないとか、あとは間に合う、間に合わないとかを主題に作ってみようと思って。あとは実際に今回、花屋さんの監修をしてくださった方が知人にいまして、実際に作品の監修もしてくださったんですけど、その方のお店に行ったことがあって、そこのイメージがあったり、実際に屋台のラーメン屋さんに行ったときに聞いたお父さんの話とかを盛り込んでいったりしながら作ったものになります。

MC:ありがとうございます。田中さんは本作の脚本を初めて読んだとき、どんな印象を持たれましたか?

田中:着眼点がすごいなというか、大きな出来事は特になく、日常に当たり前にあるようなことを、丁寧に紡いでいっているというのが、今泉監督ってどういう人なんだろうなと思っていたというのが、本を読んでいたときにあったんですけど。「好きに何でも書いて良い」って言われてできたんですね?

今泉:そうですね(笑)。でもめちゃくちゃ大変でした(笑)。好きに書いて良いというほど大変なことはないんですよ。役者さんが決まっていたり、原作があったりということとではまた別の…(笑)。

田中:すごいっすね(笑)。本当にこんなに温かいストーリーをどういう方が書くんだろうなと思って、最初はそこに興味がいきました。

MC:そして田中さんは、事前の役作りをされないと伺っているんですが、今回も同じように?

田中:役作りをしないというか、しようがない。限界があるじゃないですか。だからしないっていう…それだけですけど。今回も特にしてないです(笑)。現場で、それこそ監督とか、皆さんと一緒にシーンを作っていったほうが、そこで生まれる夏目の方が、自分で決めていくよりは結果良いんじゃないかというのが昔からありまして、あんまり役作りはしない…。でも役作りしないって言うのも、なんか良くないですよね…? ちょっとしまーす(笑)。

MC:現場で肉付けをしていくということですね(笑)。監督、アイデア段階では田中さんが演じた夏目という男性は、こんなにモテるキャラではなかったと。

今泉:そうですね、もうちょっと矢印がバラついていたはずだったんですよ。男性ももうひとりいたりとか、話を書いているうちに、全部田中さんに矢印が向いているみたいになっちゃって、「まあいいか」と(笑)。「いいか」ってことはないんですけど、矢印は向いているけど別に嬉しいという矢印でもなかったり、困る矢印がいっぱいになったり。人間が困る部分とか、コメディを作りたいという意識もあるんですけど、そういうときに「ここ面白いでしょ?」というよりかは、気まずさとか、ともさかさんのシーンが顕著だと思うんですけど、そういう部分で映画を作れたらと思っていたので、田中さんが必然的にモテるキャラになっても、それでいいかなと思って作ってました。

MC:田中さんは、夏目という男性をどのように思っていたんですか?

田中:モテるなあと思って。なんでモテるんだろうなと、最初は思っていたんですけど、ふと気がついたことがあって。実は、そこまでモテてないなと、ある程度のところで気が付きまして。思いを告げて満足できる人というか。ちょっと好きだけど、そんなに好きにならないぐらいのちょうど良いやつっていう。ちょうどいいモテ具合っていう。みんながこれから、恋愛をしていくであろう練習台みたいな(笑)。そういう独特のモテ方というか、行為の寄せられ方というか。そういう人にはそういう理由がきっとあって、優しさだったりとか、寄り添ってくれたりとか、でも押しが弱いとか。恋まで発展しない手前の人っていう感覚が僕には若干ありましたね。

今泉:その話は現場ではしなかったんですよ。モテるモテない話は。後で取材のときに田中さんとご一緒したときに、その話になって、なるほどと思ったので、たぶん田中さんがめちゃくちゃモテる人をやっていたら、たぶん嫌なヤツになったと思うんですよ。その辺を探ってくれていたから、この役になったんだろうなと思いました。

MC:ありがとうございます。続いて岡崎さんは、監督とのお仕事はいかがでしたか?

岡崎:この映画に参加させていただいて、日常をすごく大切されていて、いかに普通というか、日常の切り取りが積み重なっていて、セリフの言い方だったり仕草だったり、そういう日常を取り込むことが大切で、いざそれをカメラ前で現場で「やってみて」と言われても難しくて新しい挑戦だったんですけど、監督が出してくれる優しい空気感の中で挑戦ができて、自分の中ですごく刺激になりましたし、引き出しが増えた感じがしてありがたかったです。

MC:監督はいかがでしたか?

今泉:田中さんもそうなんですけど、岡崎さんも、そういう話を現場で全然してこないんですけど(笑)、日常ということを含めて自分の普段の会話を録音してくれていたみたいなんですよ。声とか。それを後で知ったりとか、そういうのがすごく素敵だなというか。ラーメンも道具を買って、家で練習していたらしくて、そういうのをわざわざアピールするわけでもなく、公開に向けての取材の中で、取材された雑誌を俺が読んで知るという(笑)。一番良い知り方というか、すごく嬉しかったし。たしかに言葉とかはちょっと特種で、「あの〜」とかをセリフに書くんですよ。それは他の方があまりやらないと思うので、それに慣れてもらうとか、そこを意識してもらえたのがすごく嬉しいなと思います。それと持ち前の明るさがあったので、木帆というキャラクターは、やろうと思えばどこまでも暗くできるキャラクターだったんですけど、岡崎さんの温度で木帆ができていったなと思いました。

岡崎:ありがとうございます(笑)。