池松壮亮「映画とか、人とか、表現とかものすごく気を遣う時代になってしまって、そういうものを超えたかった」『君が君で君だ』トークイベントレポート

池松壮亮主演、満島真之介、大倉孝二、キム・コッピ共演の松居大悟監督最新作『君が君で君だ』が7月7日より公開中。このほど、8月2日に新宿バルト9にて上映後トークイベントが行われ、池松壮亮と松居大悟監督が登壇した。

上映終了後、池松壮亮、松居監督が登壇すると大きな拍手が沸き起こった。MCを務める本作の女性プロデューサー、日野原から企画を初めて聞いた時の感想を聞かれると、池松は「松居監督とはドラマや舞台などいろんな仕事を共にしてきて、お互いのキャリアが一周してもう一度しっかりと組めてよかったです。ただ、非常に難しい戦いになるなとは思いました。誰も踏み入れていないところに踏み入れようとしていましたし、大げさな言い方をすると、人類が答えを出していないものにシンボリックな表現を含めて挑もうとしていたので、しかもこんな時代に。どれだけ説得力を持たせるか企画を頂いてから今日まで考えていました」と本作の企画をもらった時の心境、そして覚悟を語った。

尾崎豊役をオファーされたことについて聞かれると、池松は「最近、色々な映画があって、色々な表現があって、自分もその中の一人ではあるのですが、あまりにもごちゃごちゃしていると思っていて、なんかここら辺で一つ、かっ飛ばしてみようかなと思いました。映画とか、人とか、表現とかものすごく気を遣う時代になってしまっていて、そういうものを超えたくて、宇宙人みたいになって、銀河みたいなところに行ってみようと思いました。伝わると思って表現していたものを一度爆発させて、この作品に乗せて演じさせていただいたように思います」と尾崎を演じるにあたっての熱い想いを語った。

撮影現場でのお互いについて聞かれると、松居監督は「プロとして正しい正しくないというものを超えてモノづくりをやる仲間としてすごく脚本について話しました。映画というものにも向かって前向きにやっていった時間は生産的というか正しかったなと思います」と語ると、池松は「熱い中、朦朧としながらも針の穴に糸を通すようにやっていた気がします」とお互いに真剣に取り組んだ撮影を振り返った。

そして、質疑応答を行うと、「好きにも色々あるんだなと思いました。好きだとこんなに人っておかしくなってしまうんだなと思ったのですが、客観的この映画を見てどう思いましたか」という質問が出ると、池松は「最近、人の感情をたやすいものとされがちだと思う。すごく色々なものがシステム化されて、言葉にされて、みんなの中で同じベクトルになっている。この映画は人間の本物の感情の強さみたいなものは見せられるような気がしていて、本当に誰かを想うとか、本当に人と喧嘩するとか人間の感情のすごさを見せられる映画だなと思います」と語った。

最後に、「ありがたいことに好評をいただいておりまして、僕たちにできることは映画を作り上げてスクリーンに流すことだけなので、あとは皆さんの生活とか人生とかに意味があって、この映画が何か与えられたかわからないけどほんの一ミリでも豊かになれば嬉しいなと思います」と池松が締めくくり、会場は大きな拍手に包まれた。

『君が君で君だ』
7月7日(土)より全国公開中
監督・原作・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮 キム・コッピ 満島真之介 大倉孝二 高杉真宙 向井理 YOU
配給:ティ・ジョイ

【ストーリー】 大好きな子が好きな「尾崎豊」「ブラピ」「坂本龍馬」になりきり、自分の名前を捨て、10年間ただひたすら好きな子を見守ってきた3人の男たちを描いた恋愛譚。触れ合うことも告白することもなく、ただ見守り続けてきた3人が、執拗な借金の取り立てから好きな子を守るべく立ち上がるも返り討ちに!物語は大いなる騒動へと発展していく。

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