【全起こし】板谷由夏×有村昆が語る『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、日本最速試写トークイベント全文掲載

本年度アカデミー賞主演男優賞・脚本賞を受賞した、マット・デイモン プロデュース、ケイシー・アフレック主演、ケネス・ロナーガン監督・脚本『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。本作の日本最速試写が、4月24日、渋谷ユーロライブで行われ、ゲストとして女優の板谷由夏、映画コメンテーター有村昆が登壇、トークショーを繰り広げた。今回はその模様を全文掲載でお届けする。本編を観ていない方はネタバレ注意!(核心に触れるネタバレは○○○○と伏字にしております)

本作は、第74回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞、第88回ナショナル・ボード・オブ・レビュー主要賞4賞受賞、第70回英国アカデミー賞主演男優賞、オリジナル脚本賞受賞、第82回ニューヨーク批評家協会賞主演男優賞、助演女優賞、脚本賞受賞…そして、アカデミー賞主演男優賞、脚本賞を受賞と、世界中で227部門にノミネート、107部門受賞という快挙を成し遂げている。公開に先駆けて行われているマスコミ試写会は、一時間前から長蛇の列ができ、全回満席で溢れかえっている大盛況ぶり。鑑賞後は「心揺さぶれた」という感想が続出。「アカデミー賞候補作品の中で『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が一番だと思う」という声も多数。派手さはないながら、圧倒的な監督の演出と脚本、キャスト陣の演技の素晴らしさゆえに、良質な作品として非常に高い評価を受けている。

今年の現地取材をされていて、アカデミー賞のことを語らせれば誰よりも詳しい(!?)女優の板谷は、アカデミー賞受賞予想の際、周りが『ラ・ラ・ランド』一色の中、「私の中では『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が作品賞!」と断言。人間の内面を深く描いた本作に最も魅了されていた。そして映画コメンテーターでおなじみの有村昆さんはケイシー・アフレックの演技を大絶賛。「主演男優賞は彼で間違いない!」と強く推していた。そんな二人が、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が名作である理由を熱く語る!

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↑左から女優の板谷由夏、映画コメンテーター有村昆

MC:それではお呼びしたいと思います。皆さん拍手でお迎えください。有村昆さん、板谷由夏さんです。拍手でお迎えください。どうぞ。
板谷:こんばんは。
有村:どうも、皆さんこんばんは。これ日本最速なんですよね?
MC:一般のお客さんにご覧いただくのは今回が初めてということで。
有村:もうなんか嬉しいですね。なかなかこういった作品ってご覧になってない方にはまずネタバレになるので、言えないことが多いんですけど、今日は言えるっていうのが非常にありがたく思っております。今日はよろしくお願いします。
板谷:皆さん泣いてらっしゃらないんですか…?ね?泣けませんでした?
有村:これはもともと「めざましテレビ」という番組で軽部さん(フジテレビアナウンサー、軽部真一さん)がそのときMCで、板谷さんと僕とで3人で「アカデミー当ててみー」という企画がございまして。板谷さん、この『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、作品賞と予想するんですけど、主演男優、両方とも入れられてましたよね?思い起こせば。
板谷:そうなんです。思い起こせば一か月前。皆さん、どうしてもやっぱり『ラ・ラ・ランド』を…。
有村:僕は『ラ・ラ・ランド』に入れたんですけど。
板谷:気持ちは『ラ・ラ・ランド』に行くんじゃないかなっていう思いもあったんだけど、応援団としては『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が作品賞、もっと言うと助演女優賞もミシェル・ウィリアムズが獲ると思って、主演もケイシーが獲るんだろうなって予想はしてたんですけど。獲りましたね。
有村:獲りましたね。僕一番びっくりしたのが、ケイシー・アフレックが主演男優賞を獲って、まさかのお兄さんのベン・アフレックが、前日にゴールデンラズベリー賞っていうのがあるんですね。まさかのラズベリー賞を受賞するというですね。だから兄弟でまさかの(笑)こういうのもそれはそれでなかなか味わい深いなぁなんて思いながら見てましたけども。
板谷:スピーチのときにベン・アフレックに対する感謝と、プロデューサーであるマット・デイモンに対する感謝を話した時に、涙ぐんでたじゃないですか、ケイシー・アフレックが。あれを見るだけで涙を誘いましたけどもね。
有村:これは本当に、ある男が再生していくというお話なんですけれども、僕的にはこれはまさにケイシー・アフレックの話だなというか。ケイシー・アフレックって『容疑者、ホアキン・フェニックス』という映画を撮ったんですけど、非常にハリウッド上で総スカンで、干されてしまったっていう部分で5年ぐらいキャリア的にはなかなか不遇な時代が続いたんですけど。でもやっぱりマット・デイモンとかお兄さんとかの周りのサポートとかもあって、再生していくっていうのが、まさにミッキー・ロークの『レスラー』であり、ナタリー・ポートマンの『ブラック・スワン』でありっていうように、まさに彼のためにあるもの。かたやマット・デイモンはこの役は製作にまわって…。
板谷:本当はもともと監督もする予定だったんですよね?『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は。
有村:そうですね。監督、主演バージョンも観てみたかったなという感じはしますね。板谷さん的には『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はどうご覧になりました?
板谷:どうでした?皆さん、どうでした?
有村:激推ししてましたもんね?
板谷:今日ここに参加させていただいたのは応援団の一人としてなんですが、最近観た映画の中でこんなにも人の心の襞…いろんな不幸があって少し落ちぶれてしまった男の再生と言ってしまえばそれまでだけれども、人の心の襞に寄り添うっていう、監督の才能プラス脚本の良さが、もうやっぱり素晴らしいと思ったんですよね。それを手にして役者としてケイシー・アフレックがこういうふうに演じることができたっていうのが…。やっぱり脚本ありきだと思うんですよね。だからこのケネス・ロナーガンの脚本を見た役者たちはもうその時点で心が震えたと思うんですよね。ケネス・ロナーガンが監督した、脚本を書いて演出したっていう、きっとマジックが起きたというか。なんでこんなに人の心の襞の機微みたいなのを表現できるのかなと思って、私は2月に観させていただいた時に本当に感動してしまって。

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有村:隙間がすっごいたくさんあるのが良くなかったですか?説明しないっていう。僕一番好きなのが、冒頭の雪掻きしてるシーンあるじゃないですか。あのへんの何とも言えないそのやるせなさっていうか、これなんかあったんだなっていう、セリフなしでずっと雪だけ掻いてるだけなんですけど、で、電話がかかってくるっていうあのくだりだけで…。いわゆるその、アメリカのトランプ大統領にたくさん票を入れたラストベルト地帯の人たちが、やっぱりああいう人たちがアメリカにいるんだなということが改めて見せられたというか。その雪掻きしているシーンから、あれっこれは…というのを僕はすごく感じたんですね。説明しない。
板谷:そう、説明がない。説明が少ないという。今おっしゃったケイシー・アフレックが、リー・チャンドラーが雪掻きをしているあの雪のサクッという音を思い出すだけで、彼の背景を想像できるっていうか。あの音だけで結構…(笑)
有村:そうですね。サクッだけちょっと、なんていうのかな、切ない感じというか。
板谷:そう、無駄なというか説明が多すぎない。それって映画の醍醐味だと思うんですよね。
有村:しかも、我々目線から観ると時間軸の切り方が、最初何で落ち込んでいるのかわからないじゃないですか。マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ることに何かあるのかなというのが段々回想劇でわかってくるんですけど、回想劇のこの入れ方、エレベーターに乗った時にふと…だからこれは僕らの生活でもある。何かあった時にふっと、「ああそういえばこのときこうだったな」と。お酒飲んでみんなでどんちゃん騒ぎをしてそこで一回切ってまた現実に戻る。…なんて言えばいいんでしょうね、時間軸の切り方がすごいなと思いましたね。あれ間違えちゃうと感動が半減するじゃないですか。
板谷:シーンのパズルの組み立て方が完璧。過去未来、心情、心の動き、そのパズルの組み立て方が、そのケネス・ロナーガンが書いた脚本が完璧なんだと思います。
有村:板谷さんに伺いたいのが、例えば女優目線で、演じるっていう目線ですと、ケイシー・アフレックとか、それこそミシェル・ウィリアムズとか、女優さん的には演じるのがさぞ大変だろうなというか、どういう見方で観るんですか?演じる側として観ちゃう部分もあるんですか?
板谷:そうですね。もちろんあります。ただ、一お客として観る感覚と、一役者として俳優部として観る感覚とあんまり差はなくて、心が動かされるか動かされないかというただそれにつきるんですね。この映画の良さっていうのは私たちがどこのシーンにもふっと入り込める気がするんです。それはきっと説明が多すぎなくて、ドラマチックすぎなくて、淡々とマンチェスター・バイ・ザ・シーという場所に住む普通の人たちの傷を負った、それぞれ大変な人生を送っている中で、みんなに寄り添えるというか。私がここに例えばふっといたとしてもおかしくないような感覚にもっていかれたんですね。それって映画の中で役者たちがその役で生きているか否かだと思うんですよ。それがその場を生きていることに私も寄り添えるというか。だから、そういう見方はします。わかります?
有村:わかります。言い方がすごく難しいんですけど、実在してるってことですよね? 演じてるということはともかく置いておいて。
板谷:そうです。この場にこの1シーンに生きているかどうか、その人が。ケイシー・アフレックだけどリー・チャンドラーとしてその映画の中で生きているかどうかということをすごく思います。
有村:という意味ではお二人の、甥っ子も素晴らしかったですけど。
板谷:素晴らしかったですね。みんな『マンチェスター・バイ・ザ・シー』という映画の中でそれぞれの役者陣が登場人物として生きていたと思うんですよね。それがたぶんいい芝居だっていう言われ方をこっち側にきた時に言われるんだけど…。でもその映画で生きているか否かということだけがいい映画のすべてというか、好きな映画のすべてな気がしていますね。特にこういう映画は。

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有村:そうですね。いまここのポスターにミシェル・ウィリアムズとケイシー・アフレックが写っていますけども、本当にこの短いシーンなんですけどね、ミシェル・ウィリアムズの只者でない佇まい感といいますか、あんまりセリフもないんですけどね。板谷さん、助演女優賞もミシェルに入れてましたもんね。やっぱりすごかったですよね。
板谷:すごかったですね。「いるでしょ、この街にあの人!」って思いませんでした?
有村:(笑) わかります。
板谷:すごい大変なこともあったけど、いろんな葛藤があって、その複雑な心模様みたいなのが、あのカットバックだけですべてが見えるというか。きっと。
有村:これは僕的には、ケイシー・アフレックが先ほど彼の半生を役に投影していると話ありましたけど、ミシェル・ウィリアムズも『ブロークバック・マウンテン』という、ヒース・レジャーと夫婦役でやって、実際に旦那さんになるんですけど、ヒース・レジャーもああいうことがあって…。亡くした喪失感が、何かあてがきみたいなもので彼女にぜひ演じてもらいたいという演出サイドの、もちろん女優として演じるんですけれども、何かそのバックボーンもキャスティングの際は僕はあるような気がしました。
板谷:そうかもしれないですね。
有村:去年のアカデミーでいうとディカプリオが『レヴェナント』でそれこそあれだけすごい役作りをして過酷な環境の中で臨んだりとか、それこそクリスチャン・ベールが太ったり痩せたりというアプローチでいろいろしたりしてますけど、この映画に関しては一切そういう体重の増減であったり、例えば歯を抜いたりとか、役作りをしないっていうところがおもしろい…インタレスティングの方の興味深いの方なんですけど僕はすごい感じましたね。見た目で役作りしない、中身で役作りしていく。
板谷:その人になっていくってことなんでしょうね。
有村:確かに。どうでしょう、マット・デイモンがもしこの役をやっていたらどうなっていたと思います?
板谷:どうですか?どうだろう?ちょっとギラギラしそうですよね。あの哀愁のささくれ感と…。
有村:スター感が出ちゃいますよね(笑)、さすがに。
板谷:そうそう。この人物の枯れた感じはもしかしたらケイシーしか考えられないですね。
有村:そうですねぇ。本当にだからはまり役。
板谷:そうだと思います。
有村:ボソボソっていうくだりもいいですよね。わりかしアカデミーってバーンっていう強い演技が評価されがちですけど、どっちかっていうと引き算の演技ですよね。
板谷:引きの演技と受け身の演技ですよね。
有村:それもなんかよかったですよね。
板谷:前半のちょっと気があるアパートの女性に口説かれそうになったのにしれーっとしてる顔とか良くないですか?(笑)
有村:あと、あの女性もよかったですよね(笑) あるある!という口説き方というか。しれーっと。
板谷:すました顔をしてて。
有村:配管工かなんかのあれでね。そうですね。かたやマット・デイモンは『グレートウォール』に出てますからね。
板谷:らしいですね。
有村:『47RONIN』以来ですよ。
板谷:すごい映画らしいですよ(笑)。
有村:すごい作品でしたね。いろんな意味ですごかったです。『DRAGONBALL EVOLUTION』のような感じも(笑)、いろんな意味でエボリューションな。でも、そのマット・デイモンがちゃんと製作もやって、ちゃんと後輩を育てていくっていうんですか、作業もされている。
板谷:スケジュールが合わなかったからって何かに書いてたけど、それ撮ってたのかなマット・デイモン。
有村:そうです、そうです。『グレートウォール』の仕事をとって…
板谷:とってこっちを蹴ったんだ。
有村:蹴ったというか、こっちを後輩に譲るというか。いろんな意味でグレートですよね。
板谷:そうですね(笑)。

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有村:あとは監督が、今作でいうとケイシー・アフレックが主演男優賞、脚本賞をケネス・ロナーガンが獲ってますけど、脚本も本当に良く練られている。
板谷:素晴らしいと思います。
有村:確かに。あとは板谷さん的にここがすごく…ここにいる皆さん映画ご覧になっていらっしゃるので…。
板谷:この映画を人に勧める時に、いろんなことが起きるからあんまりネタバレとして言えないじゃないですか。その中でどう勧めるかなって悩んだ時に、重い映画だけどユーモアがあって考えすぎたり重すぎたり悲しい思いをしたり、そういう重さじゃないよって。人生の重さをわかってる大人たちが出てくるけど、どこかにユーモアがあるからぜひ観てみてって私言ってるんですけど。
有村:確かに。そのユーモアのアイコンの使い方が、甥っ子のルーカス・ヘッジズが二股をやったりとか、わりかしプレイボーイなんですけど、くすっと役どころとして入れるんですよね。
板谷:ケネス・ロナーガンのインタビューを読んだんですけど、絶対に人生にユーモアが必要だと。悲しくても笑うことだってきっとあるし、明日になるのが怖いなってぐらい落ち込んだとしてもやっぱりユーモアがある。それがあるから人の人生っておもしろい、それを描くのがおもしろいって書いてあるのを記事で読んで。でも確かにそうじゃないですか、すごい大変な毎日でもやっぱりユーモアがないと。
有村:そうですよね。板谷さんのインスタグラムも拝見させていただいでますけど、息子さんがまさかの骨折するっていう…(笑) 、笑い事じゃないですけど(笑)。
板谷:いやいや、靭帯、靭帯!(笑) 
有村:伸びちゃったんですよね?僕もびっくりしました。まさかインスタグラムにレントゲンの写真がアップされる。でもこれもひとつのユーモアなのかもわからないですね。確かに起きたことはあれですけど、そういうちょっと腕白なところも。
板谷:ユーモアを探さないと大変じゃないですか、生きていくって。それがとんでもなく悲しい思いをした夫婦だけど。
有村:これはそうですよね。
板谷:だけど悲しいことだけじゃ終わらない人生が続いていくよっていうことを表現してる気がしてて。だから特別よし、今日は頑張ろうとか、よし、明日からピースだという終わり方じゃないじゃないですか。まだこのテンションは淡々と続いていく、でもそれが人生だし、その中にかすかな光みたいなものがあるんじゃないの?みたいな終わり方な気がしてて。「どうなの、ハッピーエンドなの?」って聞かれるんですよ、この映画。でも、そのハッピーエンドを求めたいの?っていうふうに思っちゃうっていうか。ハッピーエンドじゃなくてもそれがリアリティーなんじゃないかなっていうのを教えてくれた気がして。
有村:まさに板谷さんがおっしゃっていたように、監督自体がインタビューでこう言ってるんですよね。「僕はあくまで事実を淡々と伝えるだけでいいと思ってる。そこに作家性の主張を入れたりはしたくない」と言ってるんですね。だから、ほんとにおっしゃるように「こういう出来事があってこうなって最後こうなるところで終わります。そこに演出的にこれは喜んでくださいねっていう演出を入れたり、悲しんでくださいねってのをあえて僕は入れたくない」ってことを言ってるんですね。だから、隙間があってその隙間を我々が行間をどう読み解くのかっていうとこだと思うんですよね。
板谷:だから受け取り側にお任せっていうところが映画として上質というか、大人の映画というか。
有村:確かにそうですね。あと余白っていう部分ではあそこも素晴らしかったですね、説明しないっていう意味では、ケイシー・アフレックが、これ完全にネタバレになりますけど、○○○○○○○○を一瞬考えたけど、まぁいいかっていうのとかも、そんなセリフとかもちろんあるんだけども、隙間で見せるというか、ああいうとこで最後戻ってきた時――、説明しないことのサービスというか、すごいなあと思いましたね。もっと過度な演出を入れてもいいと思うんですよ。でも全部その説明を省くっていうところはちょっと驚きましたね。
板谷:淡々と事実のみを。でも息を呑みませんでした?あそこで○○○○○○○○、あんなことが起きたってなった時、もう「はー!」って言っちゃいましたもん、私映画館で。
有村:ですよね。監督としては、もともとケネスさんはもともと脚本家からきている方なんですけど、やっぱり本ありきで撮ってる、やっぱり監督畑の人とはまた違う目線を持ってる方だなぁっていうのが思いましたけどね。
板谷:どういう演出されるんでしょうね。
有村:それこそ『3月のライオン』とかも拝見させていただきましたけど、なんか監督によってやっぱ演出の仕方とか全然違いますからね。
板谷:全然違います。
有村:おそらく板谷さんが思うケネス監督がこういう演出してるんじゃないかっていう、わかったりするんですか?予想で。
板谷:たぶん人物像を作るところから一緒にやっていくんじゃないかなぁ。予想ですよ。人物像の役作りとして、人物像を俳優陣だけに任せるというよりも、一緒にたぶん作り上げるやり方なんじゃないかなと思うんですけどね。
有村:監督も一緒に寄り添いながら、結構ディスカッションするんですかね。物静かな感じなんでしょうね。きっとね。撮影現場も静かな現場を撮りそうな気はしますけどね。
板谷:撮りそうですよね。
有村:そういった意味では、ケイシー・アフレックが再生したという意味では非常に、監督の今後もそうですし、ケイシー・アフレックのこの後はどんな作品に出て撮影されていくのかっていうのが楽しみですね。
板谷:私、アカデミー賞の時にインタビューはできなかったんですけど、ちょっとお見掛けしたんですけど、今より髪の毛が長めで後ろで一つ結びしてて、結構ワイルドな感じになってましたよ。
有村:え、ちょっとロン毛みたいな感じですか。
板谷:ロングの髪をひとつにまとめて。
有村:『グレートウォール』のマット・デイモンと一緒ですね。私この間(マット・デイモンに)お会いした時、『ジェイソン・ボーン』かなんかのときに来日したんですけど、まさにその撮影だったんです。ひとつに結んでて。
板谷:(ケイシー・アフレックは)出てないよね? (笑)『グレート(ウォール)』に。
有村:マット・デイモンが実際にっていう意味で。『グレートウォール』の宣伝みたいになっちゃいました(笑)。あと、マンチェスターって最初イギリスの映画だと思ったらマンチェスター・バイ・ザ・シーっていう街がボストンの上のマサチューセッツ州かなんかの上にあるんですよね?それも僕、あーっと思って。何とも言えぬこの街の雰囲気がね、また良かったなと。
板谷:そうなんですよね。
有村:お客様も観ていかがでした?皆さん的に。
板谷:(笑) なんて言うんでしょう、きっとこの映画ってああだったね、こうだったねって語れる映画でしたね。
有村:そう、語りたくなりますよね。観終わった後に、「あれはさぁ…」っていう隙間を埋めるのを僕らが確認作業したい。「僕はこう思ったけど、どう思った?」っていう感じしません?
板谷:そう。
有村:監督から宿題をもらった気がするというか。今後の人生はあなたたちですっていうメッセージもあるのかなって。
板谷:そうですね。でも、大きな変化はなかったけど、ささやかな幸せをケイシー・アフレックもリー・チャンドラーも、ルーカス・ヘッジズ、甥っ子も手にできるんだろうなっていう緩やかな優しい希望を残して終わったじゃないですか。あれがまたね、こっちの観てる側にとっても私たちの人生も日々も、日常として日々流れていくけど、ささやかな何かがあるかもしれないって思わせてくれるというか。そういう意味ではラストはハッピーなのかもしれないなと思いますけどね。
有村:あえてだからそういうちょっとふわっとしたところがまたおしゃれな感じっていうところがね。皆さんと語れて嬉しいですよね。我々、拝見させていただいたのは二か月前…。
板谷:そうですね。2月頭ぐらいだったと思いますね。
有村:なかなか言えなかったんですけど、ようやく言えて気が楽になりました。
板谷:そうですね。今日観て気に入った方は周りにぜひお勧めください。よろしくお願いします。
有村:人によって感じ方が十人十色変わる映画だと僕は思うので、ぜひSNSとか、私はこう思ったとか、もちろんネタバレはしない形で。これはすごくわかるとか、ぜひ皆さんいろいろつぶやいていただきたいですよね。よろしくお願いします。
板谷:よろしくお願いします。

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『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
監督:ケネス・ロナーガン 出演:ケイシー・アフレック ミシェル・ウィリアムズ カイル・チャンドラー ルーカス・ヘッジズ カーラ・ヘイワード
配給:ビターズ・エンド/パルコ

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