【全起こし】斎藤工、井口昇監督からデブレクチャーを受け「人体のメカニズムを学べた」映画『ブルーハーツが聴こえる』プレミア上映会 全文掲載②

オムニバス映画『ブルーハーツが聴こえる』の公開に先駆け、3月15日(水)に新宿バルト9にて公開直前プレミア上映会が開催され、『ハンマー(48億のブルース)』から尾野真千子、飯塚健監督、『人にやさしく』から市原隼人、『ラブレター』から斎藤工、井口昇監督、『少年の詩』から清水崇監督、『ジョウネツノバラ』から工藤伸一監督、『1001のバイオリン』からは豊川悦司、李相日監督が登壇した。今回はすでに記事にした質疑応答の前半に引き続き、後半を全文掲載する。たっぷりとどうぞ。

MC:それでは、『ハンマー』のお話に戻ります。撮影現場はいかがでした?結構テンポが良かったのですが、テンポ感とかも細かく指示をされたんですか?

飯塚:指示したか、してないかといえばしてると思うんですけども(笑)、すごく早くしようと思ってやったということはなかったんですけど、皆さんがやってくれたものがそのまま。そんなにカッ トを割ってないので。

MC:長回しのシーンが結構ありましたけど。

尾野:長いとこは顔合わせとか、本読みの時に皆んなで話し合って、練習を重ねて、本番で「じゃあこんな風に動いてみよう」「この動き方じゃないね」とか。皆んなで作っていくというか。意外と仲がいい感じ(笑)?

MC:本当にチームワークがいいんだなと思いました。その後もお付き合いがあるとお聞きしてますが。

尾野:そうですね、月に何回か呑みますね。

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MC:そのチームワークの良さが、しっかりと作品に出ていると思いますので、楽しみにしてください。ありがとうございます。そして『人にやさしく』の下山天監督なんですが、残念ながら地方ロケで本日は出席ができなかったということなんですけど、市原さんにお聞きしていきたいのですが、先ほども申し上げた通り、はるか遠い未来の宇宙という独特の世界観の中で進行していくお話ですけど、撮影はどのようにしていったのですか?

市原:宇宙と聞くとCGのイメージがあると思うんですけど、今回は特撮をメインにしていて、機械の技術が発達していく中で、もう一度人と向き合うということをどうやって表現しようと思った時に、現代の技術ではなくて、昔から使われていた特撮っていう手法を使ってやられたと思うんですけど。観ていてすごく味があるので、他の作品とは違うなと思いました。

MC:現場ならではの大変だったことはありましたか?

市原:宇宙に浮遊しているシーンがあるんですけども、でっかい球体の上に乗せられて360度グルグル回る機材があるんですけど、夜通し回ってましたね(笑)。でもそれがすごく楽しくて、監督も少年のように、言い方が失礼になってしまうかもしれないですけど、自主制作のような、「やらされてやってるんじゃなくて、やりたくてここにいるんです」っていう職人が集まってできた作品なんで。それを間近で感じさせていただいて、この作品に携わることができて本当に楽しかったです。

MC:共演者の皆さんからも熱みたいなものがものすごく現れている作品ですよね。

市原:そうです、はい。

MC:高橋メアリージュンさんですとか、錚々たる方々が宇宙で浮遊している様というのはなかなか日本の映画で観る機会がないので。

市原:これがモノ作りなんだなと思いました。映画とか作品ってこうあるべきなんだなと思いました。

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MC:ありがとうございます。そして、『ラブレター』なんですが、井口監督の青春時代がすごく投影された作品ということで、いろいろとレクチャーですとか、演出もされたと思うんですが。

井口:はい。特に、太った男の子ってどんな動きをするかっていうこととかをレクチャーしました(笑)。工さんの過去の高校時代をやった男と僕の2人でデブレクチャーをしまして(笑)、「あの、工さん、顎の下の肉を触ると柔らかいんで、ついつい触っちゃうんですよ」とか(笑)。走り方とかですかね。

斎藤:はい。近くにモデルが二人いらっしゃったので、恵まれた現場でした。

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MC:そのレクチャーの中で、特に難しいところはありましたか?

斎藤:呼吸法が基本的にちょっと上を見て、気道を確保するみたいな(笑)。人体のメカニズムを学べました。

井口:たたずまいが、太った方の動きをちゃんと完璧にコピーしていただいているので、素晴らしいと思いました。

斎藤:いつでも僕は、太る準備ができています(笑)。

MC:人体の深いところまで学べる作品になっているとは思ってもみませんでしたけど(笑)。あと、斎藤さん、劇中でご自身が実際に撮られた映像も。

斎藤:そうですね。そういう綺麗な話をしろと言われていたんですけども(笑)、『わびしゃび』でも監督が意中の方を撮っていたものと同じように、山本舞香さんを僕が実際に撮らせていただいた映像を使ってくださっています。

MC:ありがとうございます。そして、『少年の詩』の主演の優香さんはスケジュールのご都合で出席できなかったんですけど、清水監督に伺っていきたいと思います。舞台が1987年ということで、劇中に出てくるCMですとか、服装ですとかヘアスタイルですとか、ものすごくリアルに作られているなと思ったのですが、この時代を選ばれた理由を教えてもらえますか。

清水:小学生の男の子が出て来る映画なんですけど、最初は、自分自身に投影して生まれ故郷で撮りたいと思ったんで、自分の小学生の頃を思い出していたら、その頃はブルーハーツも結成されてないし、「少年の詩」も生まれていないということに気がついて。で、自分の子供時代とは違うんですけど、87年に生まれた人の設定をいろいろ調べて、その頃の人に話を聞いたりして、流行っていたものとか、当時の世相、当時騒がせた事件とか、実は細かいところで小道具も衣装も、喋り方とか、クセとか、人の有り様とか、看板とか、テレビCMとか、そういうところにこだわらせてもらって。子供って石とか拾ってきて集めたりとか、大人には理解できない度を超えた世界を持っているじゃないですか。そういうところをなんとなく、世界観にまぶしたいなと思いまして。ショッピングモールが出てくるんですけど、これは当時あったある事件と関係があったり、ちょっとブラックな意味合いの事実が入っていたりするんです。その辺も、観て懐かしいと思える方は懐かしんで観つつ、ブルーハーツ世代ではない人もいるとは思うんですけども、今日、こうやって舞台挨拶をしていて、それぞれの監督の色が確実に出ていると思いました。落ち着きのない、井口さんと僕とか(笑)。たぶん6作品それぞれに、「気持ちどうすればいいんだ!?」っていうくらい上げられたり下げられたりすると思うんですよ。ジャンルも全部違うので。まさかのSFもありますし、疲れるくらいお腹いっぱいになると思います。楽しんでいただければと思います。

MC:地元の前橋で撮影をされてますよね。それにも理由があるんですか?

清水:初めて、故郷で撮りたいと思って。ブルーハーツの曲に出会ったのも、まだ地元にいた頃でしたし、懐かしい街を映したいと初めて思ったので、実は出てくる小学校も母校だったり、地元の市長に挨拶に行って。ところが撮影から2年以上も経ってしまっているという。地元の人達みんなに謝りながら、今日を迎えられて嬉しいです(笑)。

MC:地元の方もみんな嬉しいと思います。ありがとうございます。そして『ジョウネツノバラ』の主演の永瀬正敏さんなんですが、本日撮影中とのことで出席できなかったんですが、工藤監督に伺っていきます。永瀬さんは脚本から参加されているとのことで、どのような協同作業だったのでしょうか?

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工藤:永瀬さんとはもう12、3年前に僕が監督で永瀬さんが役ではなくカメラマンとして参加していただいて、作品を作ったことがあって。シリーズで三年くらい一緒に作らせていただいたんですけど、その頃から映画の話で盛り上がっていて、僕が書いたプロットを永瀬さんに読んでもらったりとか、永瀬さんが持たれている原案を読ませていただいたりとか、意外とそういう作業がすでにあったんですけど、しばらく時間が空いて、今回の企画がスタートした時に、曲をどうしようかすごく悩んだんですね。「情熱の薔薇」と「Too Much Pain」と、どっちで撮るかものすごく悩んで。「情熱の薔薇」を選ぶきっかけになったのが、プロットを書いている時に、その当時永瀬さんと話しをしていた原案を、「情熱の薔薇」のストーリーに載せたらそうとう良い話になるんじゃないかなあと思い、すぐに永瀬さんに連絡したら、永瀬さんが喜んで、二つ返事で「じゃあ僕が脚本を書くよ」と言ってくれたので、「お願います!」ということで書いてもらったらですね、2時間近い脚本が上がってきまして……(笑)。ものすごい熱量があったので(笑)。これを短編の20分強に集約していく中で、20か30回近く脚本のやり取りをさせてもらったんですけど、どんどんシンプルに無駄を削いで削いで、究極にシンプルに、映画を作っていくってこういうことだなというくらい無駄を省いて出来上がったのが今回の『ジョウネツノバラ』だと思ってます。

MC:工藤監督は『ブルーハーツが聴こえる』自体の企画の早い段階から関わっていらっしゃったので、情熱も並々ならぬものがあったんじゃないですか。

工藤:そうですね。2015年の30周年に向けて2013年の企画からスタートさせてもらって、2015年に公開する予定だったんですけど。でもやっと公開ができるというところで本当に感謝しかないです。

MC:ありがとうございます。そして『1001のバイオリン』なんですが、今回『フラガール』以来の豊川さんと李監督の再タッグなんですが、豊川さん、監督との撮影はいかがでしたか?

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豊川:緊張感の連続といいますか、なかなかOKを出してくれない監督で有名なので(笑)。ね、はい(笑)。

李:あのう、井口さんと斎藤くんの話とか聞いてると、なんか面白いことを言わないといけないのかなと思うんですけど(笑)、自分は自分らしくいこうと思いつつも、今いろんなこと考えちゃって(笑)。

MC:実際に福島に行かれて撮影されたんですよね。

豊川:はい。実際その場所に行ってみますと、自分が思っていたものを遥かに超えていて、すごい所で。そこはもちろん映画の中に出てきますけど、本当にここで起こったことが、大変なことだったんだなと肌で感じたというか。その上でこの映画をやるということを、監督と一緒に作るということを、スタッフの皆さんも含めて、心の底からきちっとしたものを作らなきゃいけないなという気持ちにさせられました。

MC:脚本を読まれて、オファーを受けようと思う決め手となったのはなにか理由があったのでしょうか?

豊川:もう、それは、李監督だったので。ぜひやりたいと思いました。ただ、こういう形の企画が来るとは正直思いませんでしたけれども。

MC:監督が豊川さんを選んだのには、どのような理由があったのでしょうか?

李:豊川さんの福島弁がまた聞きたくなって(笑)。

豊川:(笑)。

李:独特の味がありますし、重苦しいことはたくさんあるんですけど、でも映画ってそうではない、生きていて日々辛いことだけではないし、なにか兆しみたいなものを探していると思うんですよね。そういうちょっとした良い意味での浮遊感みたいなものが、独特の味が豊川さんにしかない雰囲気だと思うので、ぜひこの役をやってもらいたいと思いました。

MC:ありがとうございます。まだまだお聞きしたいのですがここで、お時間がきてしまいました。皆さん、ありがとうございました。

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『ブルーハーツが聴こえる』
2017年4月8日(土)公開
監督:飯塚健 下山天 井口昇 清水崇 工藤伸一 李相日
出演:尾野真千子 角田晃広 市原隼人 高橋メアリージュン 斎藤工 要潤 山本舞香 優香 内川蓮生 新井浩文 永瀬正敏 水原希子 豊川悦司 小池栄子 三浦貴大
配給:日活/ティ・ジョイ

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