『EUREKA ユリイカ』などで世界的に知られる青山真治監督の7年ぶりの長編映画で、多部未華子が主演を務める『空に住む』が、10月23日より公開中。このほど、10月24日に新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶が行われ、キャストの多部未華子、岸井ゆきの、美村里江、そして青山真治監督が登壇した。
前回の舞台挨拶は、無観客、YouTubeチャンネルにて配信のみで行なわれたが、この日は観客を前にしての劇場での舞台挨拶が実現。多部は多くの観客で埋まった客席を見て、「本当に映画館に足を運んでくださること自体がありがたいのに、こんなにたくさんの方が来てくださって、本当に嬉しく思います」と感激していた。岸井も「この時期に映画が無事に公開できて嬉しいです」と喜びを語り、美村は「ちょっと前から客席が1席空けではなく、満席でOKになったんですが、改めてみると本当にありがたい景色だなぁ…と」としみじみと語った。
演じた役について自分と重なる部分や見習いたい点、アドバイスしたい点が尋ねられた多部は、自身が演じた直実との共通点として「ペットを飼っていること」を挙げ、劇中でペットロスが描かれることに言及。「愛する相棒、パートナーがいなくなった時の喪失感や絶望感…。私はいまはまだ経験していないけど、直実の行動力だったり、自分もそうなるのか?想像できない。大事な存在が近くにいて、それがなくなったときの行動の仕方、今後、自分も経験すると思います」と愛するペットの存在に思いをはせた。一方で、直実から見習いたい点については、「淡々としているように演じたんですが、(岸井さんが演じた愛子の)出産の時とか、突然、力強くなるんですね。淡々としているけど大事な時に出る底力は私もほしいです」と口にした。
同じ質問に、岸井は「愛子は強くあろうとして、自分を納得させるために強さを自分に押し付けているように見えるんですけど、近くにいる友人たちは、強がってるとわかっちゃう。それが友人を心配させてるぞと教えてあげたい。私も、もしかしたら強がっちゃうタイプなので(苦笑)」と自らを省みつつ回答。美村は、自身が演じた明日子を「善意で直実を追い詰める、なかなか厄介な方(笑)。こうなっちゃいかんなと(笑)。自分がいいと思って、誰かに何かを迫ってはいけないなと思いました。体を動かすか、地域のボランティアなどで発散するか、本を読むなら古典で『人間の幸せってなんだっけ?』と考えてほしい」とアドバイスした。
また、満たされないモヤモヤを感じている登場人物たちにちなんで、自身の「もやもや解消法」を質問されると、青山監督は「最近は、朝、5時半くらいから自転車で近所を走っています。ストレス解消法としてはいいですよ。一日が有意義に過ごせます」、美村は「頭を使いすぎても体を使いすぎてもダメ。頭が疲れてるときは体を動かして、身体がぐったりしているときは、頭に何かを入れるようにすると整います」、岸井は「私はどんな時でも映画を見ます!満たされないときも満たされている時も、哀しいときも楽しいときも『映画を見よう!』って思います」とコメント。岸井は続けて、もやもやしている時に見る映画ジャンルについて、「宇宙に行きます!」と壮大なスケールの映画をおすすめした。そして多部は「私は単純で、友達としゃべるに尽きます。モヤモヤが始まった瞬間に友達に連絡します!答えは出なくてもいいんです。聞いてもらえれば、解決しなくてもスッキリします」と微笑んだ。
次に、それぞれ劇中で相手役を演じた男優陣の印象を尋ねられると、多部は岩田剛典について「初めてお会いしたのが、撮影の始まるちょっと前の監督に質問をする機会だったんですけど、私は何を聞いたらわかんないままその場にいるくらいフワフワしてたんですが、岩田さんは台本に付箋をいっぱい貼っていらして、『そんなに聞くことあるんだ!?』と思いました。それだけ台本を読み込んでいて、監督ともすごくコミュニケーションをとってて、真面目で勉強熱心な方だなと。私にない部分をたくさん持っている方で、焦りました(苦笑)」と称賛。岸井は、大森南朋とそばを食べるシーンでの共演を述懐し、「(画として)湯気がほしいということで、熱々のそばを二人で食べたんですが、大森さんから近くのおいしいおそば屋さんのことを教えていただきました。『そば好きなの?いいとこあるよ』って。携帯にメモしたんですけど、その携帯を替えちゃって…」と大森とのやりとりを明かしたが、青山監督から「そば屋さんで(別の)そば屋の話を…?やめなさいよ!」とツッコミが飛び、会場は笑いに包まれた。美村は、過去に何度も共演している鶴見辰吾について、「先輩ですが、鶴見さんのさわやかでいい人の部分と、この人、本当は裏で何してるんだろう?と言うところの両方が好きなんです。今回は、わりといいダンナさんという感じでしたが、もしかすると誰にも言えないアコギな商売をしているのかも…とかってに明日子の中で思っていました。ただの“いい人”じゃないところが素敵でした」と語った。
この日は、感謝の思いを込めて多部から青山監督に花束が贈呈された。加えて、岩田、大森、鶴見から、女優陣に思いのこもった花束とビデオメッセージが到着。多部は、劇中で岩田演じる時戸がエレベーターで直実に贈った真っ赤な花束がプレゼントされ、「ありがとうございます!」と笑顔を見せていた。
最後に、青山監督は「楽しい映画だったと思いますがいかがだったでしょうか?静かに見ている中にも、大きな空にいるような雄大さがある楽しさだったと思います。人に言うときは『デカい映画だった』と言ってください!」、多部は「明日も、1週間後も、1年後もみなさまの印象に残っている映画になっていたらと思います。素敵な曲を聞いて、映画の1シーンを思い出してくだされば」と呼びかけ、温かい拍手の中で、舞台挨拶は幕を閉じた。
『空に住む』
10月23日(金)より、全国公開中
監督・脚本:青山真治
原作:小竹正人「空に住む」
脚本:池田千尋
主題歌:三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「空に住む 〜Living in your sky〜」
出演:多部未華子 岸井ゆきの 美村里江 岩田剛典 鶴見辰吾 岩下尚史 髙橋洋 大森南朋 永瀬正敏 柄本明
配給:アスミック・エース
【ストーリー】 郊外の小さな出版社に勤める直実(多部未華子)は、両親の急死を受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになった。長年の相棒・黒猫ハルとの暮らし、ワケアリ妊婦の後輩をはじめ気心の知れた仲間に囲まれた職場、それでも喪失感を抱え、浮遊するように生きる直実の前に現れたのは、同じマンションに住むスター俳優・時戸森則(岩田剛典)だった。彼との夢のような逢瀬に溺れながら、仕事、人生、そして愛の狭間で揺れ続ける直実。果たして彼女は、見失ってしまった自分を取り戻すことができるのか?そして葛藤を乗り越えた末に下した大きな決断とは?
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