4/29(土)~5/5(金)の1週間限定でレイトショー上映中の『食べられる男』では、連日トークイベントを開催! 2日目のゲストとして石井裕也監督が登壇した。一緒に登壇した近藤啓介監督と主演の本多力は、少しお酒が入りほろ酔いの石井監督が投げかける鋭い質問にタジタジ!? 以下、全文でお届けします!(ネタバレ注意!!)
MC:本日は『食べられる男』をご鑑賞いただきありがとうございます。それではこれよりアフタートークを始めて参りたいと思います。本日のゲストは、最新作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の公開(5月13日公開)が控える石井裕也監督をお迎えしております。それでは近藤啓介監督、本多力さん、石井監督お入りください。
近藤:『食べられる男』を監督しました近藤啓介です。本日はどうもありがとうございました。
本多:『食べられる男』の村田よしお役をやりました本多力です。本日はどうもありがとうございました。そして、ゲストの石井裕也監督です。
石井:よろしくお願いします。
近藤:石井さん、感想を伺ってもいいですか。
石井:あのー忍び込ませるってことが大事で、、あ、すみません、ちょっと酔っぱらってるんで(笑)。
本多:ちょっと今飲んできまして。その前に何となく関係性を言うと、近藤監督と石井さんが同じ、、
近藤:大阪芸術大学の大先輩で。
石井:9歳年上で。
近藤:はい、大先輩です。
本多:で、僕と石井さんも10年くらい前に出会って、一緒に何かするってことはなかったんですけど、一緒に飲んだりとか、石井さんが昔、池袋のシネマ・ロサでやってたレイトショーのときにトークで出させていただいたりとか、それが9年前ですかね。そういう関係性もあって今回、来ていたんですけれども。
石井:じゃあ感想を言っていいですか? やっぱ忍び込ませるっていことが重要で、あるようでない、ないようであるって話でしょ? 脚本家も含めて、今の日本社会とか世の中っていうところを、忍び込ませてエンタメをやるということの素晴らしさっていうか、価値みたいなことを感じましたね。
近藤:おぉぉ。。ちょっと整理するのに時間かかります。
石井:いや、書いてたでしょコメントでも。
近藤:そうですね。
石井:願わくばこういうことにならないように。でしょ? でも、もうなってるわけで。だから本多君は食い物にされたけど、食い物にされてる人だっていっぱいいるし、今の世の中ね。それこそシリアとかね。
本多:そういうのを混ぜ込ませて、でもエンターテインメントにしようとしてるってことですね。
石井:そうそうそう。忍び込ませるっていうことの価値。だから例えば今いろんな国際社会の問題があるなかで、それをそのままやるっていうのってそういうのは誰でもできて。でもエンターテインメントっていうフィクションを信じてる人が、フィクションに忍び込ませたうえで、表現をするということの価値みたいなところを感じましたよね。
近藤:ありがとうございます。
本多:それは考えながらやってたんですか?
近藤:そうですね。まずは宇宙人に食べられる人の話っていう。
石井:それはアイデアじゃん。
近藤:そういうアイデアで、やってたんですけど、どんな人が食べられたら面白いかとか、食べられる人について考えたときに、社会から食べられていくっていうかそういう辛い出来事がいっぱい起こったり、悲しい出来事が起こったりする人を突き詰めていって、考えたっていう。それを脚本にしたって感じですね。
石井:そうそう。だからそれは天然でやってるから。でも問題意識があるうえで天然でやってるってことでしょ。それが20代の表現者の面白さで、俺みたいに30過ぎちゃうとそれを論理的にやろうとしてしまうから、その無邪気さっていうところがひとつの表現の魅力で。(と監督に言いながら本多の方を振り返る)
本多:急に振り返られても(笑)。僕もね、ちょっと、1コ上なんで。
石井:1コ上?
本多:あ、歳がね。ちょっと上なんで。
石井:4コ上。
本多:あの、石井さんが今回のトークショーをお願いしたのが、1カ月前ぐらいなんですけど、そのときに見た感想を書いていてノートに。それを今日、写真で撮って持ってきてくれたんですよね。
石井:そう。
本多:で、それ何書いたか覚えてないんですよね? 見終わったあと率直な感想がたぶん書かれてるんですよね。
石井:そうです、そうです。
本多:それをちょっと聞かせてほしいんですよ。
石井:いや俺、いま手が、動かなくなって。
石井:見れない。
本多:いや見れるでしょ。
石井:いや見てもいいけど。
(客席にいた、ひと:みちゃんから拍手!)
本多:ひと:みちゃんが拍手しました。“ひと:みちゃんが拍手”っていう時間でした。
石井:まず、「設定が面白い」「撮影もいい」「寄りきらないところがいい」
本多:「寄りきらない」っていうのは?
近藤:カメラマンがアップにしすぎないっていう。
石井:そう。「ギリギリのリアリズムが得られた」あと本多力っていう項目があって。「AKB48みたいなところがある」
近藤:(笑)ちょっとそれは。
本多:僕にですか?
石井:One of Themで輝く。いろんな人の中のひとりとして輝く本多君が主演っていうところは、近藤監督どうだったんですか?
近藤:最初の脚本段階で想像していたイメージとは全然違ったんですよ。本多さんに来てもらったときに、この人に寄せていこうって感じで考えていったんです。
石井:でもOne of Themで輝くタイプじゃん。AKB48みたいに。
近藤:たくさんいる中で目立つっていうことですか?
石井:奇跡を起こせる俳優かどうかを聞きたかった。
近藤:あ、本多さんが。そうですね、先輩やったんで本多さんが。結構頼ってる部分もあったっていうか。実際現場でも「あ、こういう感じになんねや」っていう瞬間は多々ありました。
石井:じゃあ奇跡は起こせないってこと?
近藤:いや起こしてましたよ。
石井:例えば?
近藤:弁当食べるところで涙を流してくれたっていう。
石井:あー。
本多:流しましたよね? 奇跡を起こせる俳優っていうのはどういう?
石井:いるんですよ!
本多:どういうことですか? 聞きたい。
石井:要するに演出家としてこれを求めてるっていうのがあるでしょ? でもそれ基準じゃん。平均点。その上を凌駕してくる。一瞬で凌駕してくる人っていう人がいるわけですよ。ある種誤解なんですよ。こうやってほしいって伝えたにもかかわらず誤解で返してくるんだけど、でも、こちとら、何カ月も準備していろいろ調べたりしてるけど、でもそれを一瞬で、一発で凌駕してくるのが俳優なんですよ。そういう意味では本多君はどうなんですか?
近藤:これで大丈夫ですか?みたいな感じで、本多さんは毎回聞いてくれてたんで。
本多:奇跡起こしたで良かったよ、今のは。
近藤:起こしました、起こしました。
本多:ごめんなさい、すみません。本当のところは?
近藤:僕の中では本多さんがすごい毎回演技っていうか、僕が求めてこういうふうにしてくださいって言ったら100%を出してくれてたんで。
石井:いや120じゃないとダメなんだよ。
本多:じゃ起こせてないっていう話を遠回しにしゃべってくれたってことですよね、今(笑)。
近藤:いやいやいや。
石井:傷つけないように。
本多:いちばん傷つくパターンですよね(笑)。
石井:持ち帰るパターンだよね。
本多:そっかー。いやなるほどなー。
石井:そういうところあるんですよ、俳優は。
本多:えー。
石井:置きにいくじゃん。芝居を。
本多:いや、置きにはいってないですよ。
石井:One of Themだから。AKB48。
本多:いや、AKB48が置きにいってるかは知らないけど(笑)、でもそれは120を目指していきますよ。
石井:でも置きにいくじゃん。絶対。
本多:置きにっていうか、監督と同じ方向性に行こうとはしますよ。(石井は携帯を見ている)いや、僕が話してるときに何で携帯見るんですか!
石井:これ、今。
本多:あ、読んでるんですね。
石井:「おかっぱというポリシーはうざい」って書いてある(笑)。
本多:いや別にポリシーじゃない(笑)。
(ひと:みちゃんから「頑張って!」)
本多:頑張ります。
石井:で、おかっぱでずっと何年ぐらいやってるんですか?
本多:え、おかっぱで? 20年ぐらいやってますよ。
石井:それがやっぱりうざくて、それがプライドでしょ?
本多:いや違うんですよ全然! 今回もオーディションのときに七三とかやってたからそういうのでやるんかなと私的には思ってましたし。
石井:あぁじゃあ近藤監督の。
近藤:七三があんまりはまらなかったんですよ。おかっぱの方が面白かったですねやっぱり。
本多:僕のプライドが出てたかもしれないですね、それは。
石井:でも髪を最後なくしたでしょ? それは本当にいいと思ったし、要するに演出家としては、このおかっぱで20年やってる人をどう切り崩すかっていうことをまず考えなきゃいけなくて。でしょ? で、最後ハゲにするっていうのは決めてたわけでしょ? それはやっぱり演出なんだと思うんですよね。
本多:素材をどう使うかみたいな感じですかね。
近藤:ほんまはやっぱ、ガチ撮りしたかったんですけどね。そこは僕、できなかったですね。
石井:剃るってこと?
本多:全然剃るつもりでしたよ。
石井:うわ、でたー。
本多:いやいや本当に。
近藤:そこはちょっとできなかったんで、ちょっと。
本多:全然。
石井:いや、でもそれ言ったところで本多君はたぶんしなかったと思うな。
本多:いや、しましたよ。
近藤:特殊メイクでできるって話だったんで。
石井:そうだけど、本多君がおかっぱを卒業するっていうときが、本多君の第2ラウンドっていうか。
本多:あー。どういう髪型したらいいですかね?
石井:僕、美容師じゃないんで。
本多:そうですね。それはちょっと美容師に聞きますわ。
近藤:本多さんどうでした撮影は?
本多:撮影楽しかったですよ、すごい。
近藤:最年長でしたけど。
本多:最年長で。今までそういうことなかったんでね。
近藤:僕と同い年ぐらいのスタッフとやってたんで。本多さんが引っ張っていってくれてる感じがしました。リーダーシップとってね。
石井:座長だもんね。
本多:座長はね、近藤さんが。
石井:座長は俳優でしょ。
本多:あ、座長は俳優なんですね。あ、そういうもんなんですね。そっか。今、分かりました。でも監督が引っ張っていくんでしょ?
石井:もちろん現場はね。だけど座長も違うベクトルっていうか違うやり方で引っ張っていくっていうものだと思うんで。どう思いましたか? 本多君っていう俳優は。
近藤:もともとのイメージは、ポップっていうか、明るく、誰からも気に入られるみたいなのがあったんですけど、その間逆に挑戦したかったっていうのは。
石井:どういうあれで? ポップで誰からも好かれる、でもそうじゃないっていうところで勝負したいって思ったの?
近藤:そうですね。
石井:それはどうして?
近藤:何て言うんですかね。たぶん実際、映画の世界の中におったら好きになれへんやろうけど、客観的に映画のキャラクターとして見たときに、寄り添いたくなるようなイメージで。
石井:それは本多君のパブリックイメージとは違うってことだよね。
近藤:はい、もともとあったイメージは違って、この映画でそういうところを見せたいなって。
本多:どうですか? 見ていただいて。
石井:才能ありますよ。
本多:どういうところに。
石井:幅が広い。
本多:それは演出の幅が広いとか。
石井:うん。大体、近視眼的になるわけですよ。若い監督って。
本多:近視眼的ってどういうことですか?
石井:漢字から想像してください。
本多:漢字は分かるんですけど(笑)、映画において近視眼的っていうのは。
石井:つまり狭い世界をぐっと見るっていう。
本多:あー。
石井:近藤監督は、もう少し巨視的っていうか客観的に物語とか映画全体を見ようとしてるまなざしを感じるわけですよね。それは若い20代の監督でできる人ってなかなかいないんで、すごいなって思います。
本多:全体をちゃんと見てるっていう。
石井:で、余裕があるんですよね。宇宙人の表現とかさ、ああいうところにこだわってしまうわけですよ、20代の監督は。でもそれをまぁいいんじゃないっていう余裕で描写するわけですよ。それはすごくいいなって思いました。
本多:若さがあったらそうならなさそうなことを、そういうふうな感じに。
石井:そうそう。だから20代ってものすごい近視眼的にもなるし、視野が狭くなるんだけど、潔癖だっていう良さもあるわけ。俺はこんなことしかしないとか、こういうことしかできないっていう潔癖性みたいな魅力はある。でも近藤監督は、もう少し引いた目線で映画っていうものを捉えようとしているっていうのがすごく好感を持てたし、嫌味が本当になかった。
近藤:嬉しいですね。自分もそういう意識はあんまりなかったんですけど、言われて、あったんかなって。
石井:いやだから天然でやっていいんだよ。20代のときはね。でももうちょっと大人になるとある種論理的っていうか客観的にやらないといけない部分があるでしょ。でも無邪気にやっているにもかかわらずそれができてるっていうことが、たぶんセンスだし、才能なんじゃないかなって。
本多:じゃもう今は、(石井監督は)30代前半だと無邪気のままではいられないですよね。そういう時期がくるっていうことですよね、おのずと近藤さんにも。
石井:くる! そのときに今の20代で何を貯めているか、勉強して何を培っているかっていうことが30過ぎたら試されるから、そのときまで天然でいようと思うと結構難しいでしょ、やり方として。
本多:なんか、すっごい見てきますけど(笑)
近藤:石井さんから見て、本多さんってどういう俳優ですか?
石井:変わろうとしないっていうことの誠実さがあるでしょ、ずっとおかっぱだし。でも、もう38歳だっけ? だったらもうそろそろ変わってもいいんじゃない?って思う。
本多:あー。
近藤:これがもしかしたら本多さんの転機に。
石井:なる?
本多:今日がなるかも。
石井:今日じゃなくて、この映画に出たことで。
本多:あ、それは、ハイ。
石井:どう転機になるんですか?
本多:う、すみません、適当に言いましたけど、でも、さっき出た話じゃないけど、最年長であるとか主演みたいのは初めてやったんで、そのときの責任の負い方みたいなのは。
石井:覚悟は。
本多:覚悟はすごいあったし、奇跡を起こす起こさないは置いておいて、僕、監督と16歳ぐらい違うんですよね、15コぐらいか。
近藤:そうですね、今、24歳です。
本多:なので、全然見てきたものとか育ってきた環境がいっさい違うし、近藤さんの脚本とか、やり方で自分としてはあれ?って思うこともあるけれども、それは自分の価値観だけであるので全部近藤さんのに乗っかって、そこに上乗せできるように取り組もうと思いながらやってたんですけど。そういう意味では今までとはちょっと違うやり方やったかもわからないですね。(不満そうな石井に)ちょっとお気に召さなかったですか(笑)?
石井:それで何を得られたんですか?
本多:何を得られた?
石井:それをやって、何を得られたんですか?
本多:得られたもんは分からないですね。でもそれは、作品をやって何かを得たっていうのは、あんまり。。
石井:感じない? 近藤監督はどうですか?
近藤:本多さんの変化ですか?
石井:いやいや、今回、映画をやって。
近藤:今回で自分のやりたいことをまとまって出したというか、できたんで、これを継続していかないとなっていう気持ちというか、これでまぁいいと言ってもらえたところを残しつつ、ステップアップしていこうっていう気持ちですね。
石井:しっかりしてるね。
本多:そうですね。僕もやっぱり出し切ったんで、次またインプットして新たな自分を、、
石井:なぞっただけじゃん(笑)。
近藤:そろそろお時間となりました。
(写真撮影タイム)
ひと:みちゃん:それではこのお時間を利用させていただきまして、お耳の方だけ拝借致します。『食べられる男』でイッセイ役を担当いたしましたひと:みちゃんです。今日はありがとうございました。ほかにもぜひご賞味していただきいものがありまして、『食べられる男』の公式パンフレットが出来上がりまして、よくP星人について聞かれるんですけど、P星人の設定資料集がついてたりですね。
近藤:P星人が50m何秒で走るかとか、P星人が何食べるかとかそういうP星人の細かい設定が書かれてます。あと年代の設定とか、何が起こってどういうふうにP星人が地球を侵略していったかも書かれてるんで。
ひと:みちゃん:あと台本も入ってます。カットされた名シーンだとか、本多さんの名シーンとかもまた読み返すことができますので。あと、ひと:みちゃんが作詞作曲した「どんどんぶらぶら」の歌詞もこちらに載っていますので、思い出していただけたらなと。あとですね、5月5日までヨーロッパ企画と下北沢映画祭の「トリウッド大作戦」というのをやっております。
そして、もう1回見ていただいたという方には、わびさびくんフィギュアが否が応でもプレゼントされますんで、ぜひこれをゲットしていただきたいなと思います。あと、ひと:みちゃんのCDも2,000円で好評発売中ですんで、よろしくお願い致します。今なら「どんどんぶらぶら」のカラオケと「どんどんぶらぶら」のCDも付けて2,000円となっておりますが、3回見たよっていう方には差し上げますので、ぜひリピートして何度も見ていただけたらなと思います。あとポスターが500円で、売っております。すべての物に出演者のサインをスタッフのサインもつけまして、ポスターは500円、そしてパンフレットは700円で売っております。あとで本多さんのサイン会もありますんで、どうぞよろしくお願いします。
近藤:パンフレットとかポスターを買っていただいたら、ロビーの方でサインもします。何か質問とかありましたら何でも答えますんでよろしくお願いします!
ひと:みちゃん:こちらからは以上です。
近藤:本日はどうもありがとうございました。ゲストは石井裕也監督でした!
▼ひと:みちゃんが物販の宣伝している最中も、なぜか本多をめちゃめちゃ見ている石井監督。
明日以降も豪華ゲストを招いての連日トークイベントを開催! 残り5日、迷っている暇はない!
※本多力、近藤啓介監督は連日登壇
■5月1日(月)若手監督座談会(小林勇貴、竹内里紗、中村祐太郎)
■5月2日(火)かもめんたる(お笑い芸人)
■5月3日(水・祝)横浜聡子(映画監督)
■5月4日(木・祝)ひと:みちゃんナイト(ゲスト:呂布カルマ)
■5月5日(金・祝)上田誠(ヨーロッパ企画)、永野宗典(ヨーロッパ企画)
『食べられる男』
2017年4月29日~5月5日 新宿 K’s cinemaにて 連日21時 1週間限定レイトショー
監督:近藤啓介 出演:本多力 時光陸 吉本想一朗 ひと:みちゃん 中野陽日 石川ともみ 川口新五 杉山まひろ 申芳夫
公式HP:http://www.europe-kikaku.com/taberareruotoko/
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