【全文掲載】山﨑賢人「人たらし、ダメな部分がある」行定勲監督から見透かされ「そう…ですねえ…」

MC:又吉さんはどこが共感しましたか?

又吉:いっぱいあるんですけど、永田と沙希が二人で部屋に居るシーンはどれも好きなんですけど、沙希が壁にもたれてパンを食べてるシーンがあるじゃないですか? あれがやばいですね。あの空気感と、二人の関係性と距離とが、沙希の感情も出てるし、永田はいつもどおりやろうとしているけど、ちょっと戸惑っているし、あのシーンは大好きですね。

MC:原作でも実際、パンをかじってるシーンはありましたよね。

又吉:ありました?

行定:あったし、僕は原作原理主義なんで、完全に同じにしたいんですよね。でも、あのシーンのどこに座るかって、あの頃になると、松岡茉優に俺は指示しないことを決めていて。最初は言ってたんだけど、ことごとく違うことを松岡が仕掛けてくるんですよ。それが面白いわけですよ。俺が毎回、敗北しているわけですよ。

松岡:勝ってない勝ってない(笑)。

行定:それで、あの頃になってくると「どこに座りたい?」と言ったと思って、「なるべく離れたところに」とボソっと言って、あそこに座ったんですよ。僕はもうちょっと近くてもいいだろうと思ったんですけど、「そうか、これが女の気持ちなんだな」と思って。で、なんにも分かってない永田が対峙してるんだけど、あの距離は狭い8畳間なんですけど、8畳間がほとんど主役みたいなもんだから、絶妙だったなと本当に思います。

又吉:しかも沙希は距離をとるんですけど、それでもたぶん近いんですよ。沙希は苦しいから、永田を追い込みたくないからパンを食ってもう一個の流れを作ってるんですよ。それがパンというのが(笑)。

MC:行定監督はどのあたりが?

行定:僕は部屋を撮るのが好きなんですよね。今回はものすごく部屋が重要で、この劇場は又吉さんがあの部屋の同棲生活がひとつの人生の断片だから劇場だということが明らかなんだけど、部屋にいるシーンは俺も好きで、一番こだわったのは僕の創造を超えて良い顔している山﨑が、風呂上がりに、なしをむいてくれるんですね。なしが大好物なわけですよ。「なしどうぞ、お疲れ様」って渡されたら、いい顔で「お〜」って食うんですよ(笑)、一口。それでお金の話をされるんですね。生活費の話をされたら、食ったなしを戻すっていうね(笑)。あのときの、「お〜」って言った山﨑の嬉しそうになしを食べる顔が、次の瞬間、憎たらしくなるんですよ。あの顔がねえ、あれは演出じゃあ絶対に難しいです。あれは山﨑が常にそういうところ持ってるんですよね。ちょっと人たらしな、ダメな部分があるんでしょうね。無自覚にね。あれ無自覚でしょ?

山﨑:そう…ですねえ…。演じようとは、してなかったですね。

行定:だよね。なるべく演じないようにするのが、永田のテーマだったので。

MC:大きなスクリーンでその細かな動きを見ていただきたいなと思いますけど。本作は生涯忘れられない恋を描いた作品という事ですので、皆様にとって生涯忘れられない○○というのを一人ずつ伺いたいのですが、山﨑さん、生涯忘れないものはなにかありますか?

山﨑:昔、家族で大島に行って釣りをして、民宿のおじさんが焼いてくれた魚の味は忘れられない。美味しかったです。自分で釣ったのって、こんなうまいんだなーと思って。次はちょっと捌きたいなあと思いました。中学ぐらいのときですね。

又吉:その味を超える魚はまだ?

山﨑:そうですね、なかなか。自分で釣って、そのまますぐに出てきたっていう感動と、塩味だったんですけど。

又吉:僕らがそれを食べようと思っても食べられないですもんね。どこでも食べられない魚ですからね。

MC:松岡さんは、生涯忘れられないものは?

松岡:私はですね、この台本を読んだときも言いたいセリフがあったんですけど、ずっと前に、14、15歳の頃に、オーディションのときに読んだ台本で、その子は悲しいことがあって、泣きながらうどんを食べるシーンがあったんですよ。で、皆さんも一回ははあるんじゃないかなと思うんですけど、泣きながらご飯食べるとちょっと味って変わりますよね? ちょっと変というか、温かい味というか、読んでたときに、オーディションなんですけどね、そのうどんの味が浮かんだんですよ。泣いているときのうどんの味ってこれだって思って、そのシーンは絶対やりたいと思って、オーディションに挑んだんですけども、落っこちてしまって…。一生演じることができない役になってしまったんですね。でも、今でも今回で言うと「なしがあるところが一番安全です」っていうセリフがどうしても言いたかったんですが、それを読んだときも「うどんのシーン、やりたかったなあ」と思い出すくら、ちょっと忘れられない台本というか、ト書きでしたね。

又吉:そのうどんも、誰も食べることができないですね。

松岡:食べ物の話にちゃった(笑)。そのうどんは、食べた子はいるんですけどね(笑)。

又吉:味したっていうのが、すごいね。

松岡:こうやってやりたいセリフを言えて、本当に幸せです。ありがとうございます、監督。

MC:食べ物が続いておりますが、寛一郎さんは?

寛一郎:素晴らしいですね、今の回答は。

松岡:ありがとう(笑)。

寛一郎:全然思いつかなかったんですけど…。生涯と言われると重く捉えるじゃないですか? 全然軽い話なんですけど、友達の家に行ったんですよ。で、その友達にはお兄ちゃんがいて、その当時25歳ぐらいだったんですけど、結構太ってたんですね。あんまり清潔感がある人ではなかったんですけど、指の匂いを嗅がされて、すごく臭かったんですよ。なんの匂いか分らなくて、「なんの匂い?」って言ったら、「ヘソの匂い」って言われて。ほんとに、松岡さんの話の後にすごく言いづらかったんですけど、本当に申し訳ないと…(笑)。

又吉:でも、そのへその匂いも誰も嗅ぐことができないですからね(笑)。

松岡:(笑)。それは酸っぱいんですか? ツンとする匂い?

寛一郎:汚いですけど、ゲ○みたいな匂いがして、どこの匂いか分らなかったですね。失礼しました…。

又吉:でも子供の頃いましたよね、そういう匂いを嗅がせる人(笑)。

MC:匂い、ときて、又吉さんは?

又吉:そうでうすね、今回の「劇場」は二作目だったんですけど、一作目の「火花」を書いたときに、初めて中国でも出版されることになって、上海に行ったんですよ。なんか小規模な集まりなのかなと思ったら、すごい報道陣の方が来てくださって、熱心に読んで下さっていて、質問とかもそういう本の内容のことを話せて、すごい嬉しかったんですね。で、翌日、通訳の方が「昨日、又吉さんが来たことが新聞に載ってますよ」って言って。僕が中国の新聞に載ってたんですよ。「なんて書いてあるんですか?」って聞いたら、「又吉さんの髪の毛はラーメンみたいだった」と(笑)。「なんでそんなこと書いてるんですか!?」って(笑)。なんでなんやろ?っていうのが忘れられないですね。

松岡:そんなに気になったんですかね? そんなにティーチインしたのに。でも、今日はラーメン率100%ですよ(笑)。

又吉:今日は皆さん、ウェーブがかかってる。ギリギリ食につなげることができましたね。

松岡:おおお! 誰もそのラーメンを食べることはできませんもんね(笑)。

又吉:頑張ったら食べれますけどね、僕の髪の毛は(笑)。

松岡:ちょっと遠慮したいです(笑)。