瀬々敬久監督が『ヘヴンズ ストーリー』(2010)から8年振りに放つアナーキー青春群像劇『菊とギロチン』が、7月7日より公開される。このほど、実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」のメンバーを演じた若手男優たちの写真がお披露目となり、併せてキャストよりコメントが寄せられた。
本作は、大正末期の関東大震災直後の日本を舞台に、かつて日本全国で「女相撲」が興行されていた史実に基づき、時代が急速に不寛容な社会へと向かう中で、女相撲の一座と実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たちの出会いを描くオリジナルストーリー。主要キャストとして、木竜麻生、東出昌大、寛一郎、韓英恵が出演し、そのほか、渋川清彦、山中崇、井浦新、宇野祥平、川瀬陽太ら個性派俳優が集結した。
本作で注目されているのが、リーダー・中濱鐡役の東出昌大、その盟友・古田大次郎役の寛一郎とともに登場する「ギロチン社」のメンバー8人を演じる若手男優たち。メンバーには、2014年の舞台「ワーニャおじさん」でワーニャを演じ、大森立嗣監督作『日日是好日』(10月13日公開)が控える荒巻全紀。『恋人たち』に出演し、昨年『三つの光』で主演を務めた池田良。『枝葉のこと』『犬猿』などに出演した“今最も若手監督に愛される俳優”と呼ばれる木村知貴。瀬々監督の『64-ロクヨン-』『なりゆきな魂、』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『友罪』などに出演した飯田芳。デビュー作『恋の罪』からドラマ「植物男子ベランダー」の花屋の店員役も注目される小林竜樹。初主演映画『蜃気楼の舟』で海外の映画祭でも高く評価された小水たいが。白石和彌監督が若松プロを描く、門脇麦と井浦新主演の『止められるか、俺たちを』に出演した伊島空。そして、オムニバス映画『スクラップスクラッパー』の第1話「美人局、さゆり。」の主役が評判を呼んだ東龍之介が出演する。
また、クラウドファンディング「やるなら今しかない!7月7日公開 瀬々敬久監督入魂の『菊とギロチン』上映支援プロジェクト」が7月6日まで実施中。(詳細 motion-gallery.net/projects/kiku-guillo)
キャスト コメント
■荒巻全紀(倉地啓司役)
かれらもおれも、喧嘩にはよおく負けた。力もなけりゃ金もねえからな!でも生きた!高品質なエサだらけの、家畜が生き延びるためには最適なこの時代じゃあ搾乳機が取り付いてることにも気づけね。え、それはもう殺されてんのと同じだ!生きろ!
■池田良(河合康左右役)
ギロチン社の奴らとつるんでいる事が心から楽しかった。自分は、集団の中で居場所なく生きてきたので、仲間と一緒に、革命とか、映画とか、やるってのは幸せなんだと作品に教えて貰った。ギロチンの部分が、スピンオフして、あのヒリつく日々が戻ってきたらいい。
■木村知貴(仲喜一役)
仲良しこよしの集まりなんかじゃなく、腹に一物抱えた野郎共が社会に抗った。何をやってもうまくいかず、肝心な時にヘマをやらかすギロチン社。でもコイツらは動いた。動いたんだ!やり方はどうあれ行動に移したんだ!それに引き換えお前はどうだ?と彼らが問う。やってやろーじゃねーか!
■飯田芳(小川義雄役)
『菊とギロチン』、皆様どうかご覧いただきたいと思っています。東出昌大さん演じる中濱鐡が、彼は歴史上の人物で大正時代の詩人です。きっと私がその頃生きていたら間違いなく中濱に傾倒しきっていたんだと思うんですが、とにかく彼の詩は「強く生きなさい」ってひたすらに語っているんです。その詩を東出さんがもちろん劇中でも強く、ナレーションで語っています。その時に写っているのは、女相撲の方々です。強く生きている方々です。立ち向かっている人たちです。瀬々監督が活写した方々です。この方々も事実に基づく人物たちです。決して豊かな生活をしていた方々ではありません。もうずっと前から瀬々監督はこのモチーフを描きたいと著書でも語っています。念願の映画です。私も参加させていただき光栄です。ずっと小川義雄を演じた経歴を神棚にまつり、これからも頑張ろうと思っています。
■小林竜樹(田中勇之進役)
十代、二十代の若者が各々の描く“理想の国家”を創るため、全力で駆け抜けた。と、だけ言えば聞こえも良いが、金もない、さほど理論もない。ゆえに計画性も杜撰である。自堕落な生活を繰り返し、只々、ひとつ屋根の下で暮らす事が、家族のように暮らす事が、幸せだった。そこにいれば、息ができた。彼らは間違いなく、生きていたのだ!時代に翻弄され続けるギロチン社に、現代の我々を重ねずに見逃すことが出来るだろうか。
■小水たいが(小西次郎役)
「強いとか弱いとか、賢いとか馬鹿とか、金持ちだ貧乏だ…知るか!と、もがいてあがいて叫ぶんだと戦うんだとそれを生きるっていうんだぞと」との彼らの問いかけに俺は言う。「馬鹿野郎!おれも生きてる!生きている!」
■伊島空(内田源太郎役)
この作品に関わって色んな事を知り、どこからともなく「ふざけんな!」という感情がこみ上げるようになった。大正の若者がギロチン社と出会って変わったように、この映画は今を生きる自分に変化を与えた。とにかく僕は、この時代を本気で生きてやろうと思った。
■東龍之介(茂野栄吉役)
自分はいつから勢いだけで生きなくなったのか。自分はいつから下を向いて歩くようになったのか。彼らギロチン社を見てると情けない程カッコ悪く情けない程に愛くるしい奴等だなぁと。言いたくないですけど。要は、生きてやろーじゃねーか。何度転んでも這い上がって理想求めて何がいけねえ!このクソ世の中が。そんな気持ちです。もうちょっとだけ尖って生きてみようと思います。勇気をくれて有難う。
『菊とギロチン』
監督・脚本:瀬々敬久
脚本:相澤虎之助
ナレーション:永瀬正敏
出演:木竜麻生 東出昌大 寛一郎 韓英恵 渋川清彦 山中崇 井浦新 大西信満 嘉門洋子 大西礼芳 山田真歩 嶋田久作 菅田俊 宇野祥平 嶺豪一 篠原篤 川瀬陽太
配給:トランスフォーマー
【ストーリー】 大正末期、関東大震災直後の日本には、不穏な空気が漂っていた。軍部が権力を強めるなか、これまでの自由で華やかな雰囲気は徐々に失われ、人々は貧困と出口の見えない閉塞感にあえいでいた。ある日、東京近郊に女相撲一座「玉岩興行」がやって来る。力自慢の女力士たちの他にも、元遊女の十勝川(韓英恵)や、家出娘など、ワケあり娘ばかりが集まったこの一座には、新人力士の花菊(木竜麻生)の姿もあった。彼女は貧しい農家の嫁であったが、夫の暴力に耐えかねて家出し、女相撲に加わっていたのだ。「強くなりたい。自分の力で生きてみたい」と願う花菊は、周囲の人々から奇異の目で見られながらも、厳しい練習を重ねていく。いよいよ興行の日。会場には、妙な若者たちの顔ぶれがあった。彼らは「格差のない平等な社会」を標榜するアナキスト・グループ「ギロチン社」の面々で、アナキズム運動を牽引した思想家の大杉栄が殺されたことに憤慨し、復讐を画策すべく、この土地に流れ着いていた。「ギロチン社」中心メンバーの中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)は、女力士たちの戦いぶりに魅せられて、彼女たちと行動を共にするようになる。「差別のない世界で自由に生きたい」―その純粋な願いは、性別や年齢を越えて、彼らを強く結びつけていく。次第に中濱と十勝川、古田と花菊は惹かれあっていくが、厳しい現実が容赦なく彼らの前に立ちはだかる。
©2018 「菊とギロチン」合同製作舎