白石和彌監督、次回作は『ゴジラ』!?『サニー /32』白石監督 × 脚本家・髙橋泉 トークイベント レポート

キャプテンを務めるNGT48、並びにAKB48グループからの卒業を春に控えた北原里英が女優業を本格始動する映画『サニー/32』が、2月17日より全国ロードショーとなる。1月19日、公開を記念して、メガホンを取った白石和彌監督と、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』『凶悪』、そして本作で3度目のタッグを組んだ脚本家の髙橋泉、加えて本作を傑作と評し、「今年一番レベル!」と絶賛する映画ジャーナリスト宇野維正が登壇し、トークイベントが開催された。

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上映終了後、興奮冷めやがらぬ場内に盛大な拍手で迎えられた白石監督と髙橋、MCの宇野の3人。本作の企画スタートについて白石監督は、AKB48グループのプロデューサーである秋元康から「北原里英を主演に映画を撮って欲しい」というオファーを日活のプロデューサーを通じて受けたところから始まったと明かす。一方で、髙橋と共に、小学校6年生の女児が同級生を殺害し、世間に大きな衝撃を与えた「ネバダ事件」をベースにした作品を構想していた白石監督は「師匠である若松孝二監督が作っていた60~70年代のアングラな映画にAKB48の現役アイドルを使ったら面白いことになるのではと思った」と振り返ると、作品について「アングラでありながら、過去に起こった実事件からSNSやネットメディアの在り方など極めて現代的な要素まで詰め込んでもエンタメ作品として一切破綻していなかった」と宇野。続けて、「色々な要素が入った作品は破綻しがちなことが多いが?」との問いに髙橋は「ひとつのテーマ以外のことを膨らませると主題がぼやけることが多いのですが、そこは白石監督への信頼があるので全ての要素のボリュームを上げきった」の返答に宇野は感服した様子。

『凶悪』以降、日本映画界を代表する俳優として確固たる地位を築いたピエール瀧とリリー・フランキーの2人について話が及ぶと、「あの二人をある種のコンビ関係で映画に登場させられるのは僕らの特権」と胸を張り、髙橋も静かに頷くと、「このコンビ的な関係性で登場させるパターンはもう何回かイケる」とすっかり味をしめた様子の白石監督の発言に場内からは笑いが。一方、本作は昨今のネットメディアを反映した作品でもあり、特定のネットメディアを意識した演出について、北原里英が出演するライブでの演出を観たことがキッカケだったことも語られた。

また、現在の日本映画界について宇野から問われると白石監督は「日本映画は今、冬の時代。これだけ(多くの作品を)撮ってもカツカツ。なにより若い人材が入ってこなくなっているので、その点を変えて行く取り組みはしなければいけないのではないか。実際、監督や脚本家には印税が入らないですから」と神妙に語る場面も。それに対して、宇野が髙橋にも意見を求めると「全然、儲かっていますよ(笑)」の一言に会場中が笑い包まれた。

観客からの質問コーナーでは、白石組常連で高校の後輩でもある音尾琢真が、本作の役柄がなぜ22歳の設定なのかについて聞かれた場面では、なかなかスケジュールが合わない中で「役に関係なく先輩の映画には出させて!」の猛アピールに、「スケジュールがなかなか合わない中、22歳の役で良ければ」と出演が決まった経緯が語られ、「まぁ、映画ですし」との白石節に笑ってしまう質問者であった。

今後の展望に髙橋は「女子高生がキャーキャー言いながら、『サニ―/32』みたいな映画を観れるような世界にしたい、この作品を観て何か感じてくれれば」と語れば、白石監督は「映画の作り方は若松監督に叩き込まれましたが、常にハリウッド映画を意識している。実際、マーベル映画大好きですし」と前置きしながら、「今は、監督として恵まれているので勝負したい。日本の映画で育っているので時代劇だったり、それこそ『ゴジラ』を撮ってみたい!」と野望を口にした。そして、本作について「今作は“祈り”が一つのテーマ。これまで道を外れた大人の話が多かったが、今回は救える作品になっています」と新境地となった本作をアピールし、盛り上がりを見せたトークイベントは終了した。

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『サニー/32』
2月9日(金) 新潟県長岡市で先行公開
2月17日(土) 全国公開
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
出演:北原里英 ピエール瀧 門脇麦 リリー・フランキー 駿河太郎 音尾琢真 山崎銀之丞 カトウシンスケ 奥村佳恵 大津尋葵 加部亜門 松永拓野 蔵下穂波 蒼波純
配給:日活

【ストーリー】 冬の新潟の或る町。仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理(北原里英)は24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。やったのは二人組で、柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)という男。雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁。柏原は「ずっと会いたかったよ、サニー……」と、そう赤理のことを呼んだ。“サニー”とは、世間を騒がせた「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称。そのいたいけなルックスゆえに「犯罪史上、最もかわいい殺人犯」とネットなどで神格化、狂信的な信者を生み出すことに。この“サニー事件”から14年目の夜、二人の男によって拉致監禁された赤理。赤理は正気を失っていきながらも、陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みるが、それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった―。

Ⓒ2018『サニー/32』製作委員会