生田斗真「あの子達とはしゃべっちゃダメ」脚本を読ませない特殊な演出に「心苦しかった…」

1990年文學界新人賞受賞、103回芥川賞候補となり注目を浴びた、河林満による名篇を、映画監督・白石和彌が企画プロデュースし、髙橋正弥監督、生田斗真主演で映画化する『渇水』が、6月2日に公開される。このほど、5月11日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて完成披露舞台挨拶が行われ、キャストの生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、尾野真千子、山﨑七海、柚穂、そして監督の髙橋正弥、企画プロデュースの白石和彌が登壇した。

生田演じる水道局に勤める岩切俊作の業務は、水道料金滞納家庭や店舗を回り、料金徴収と、水道を停止すること(=停水執行)。役を演じる上で意識したことを聞かれた生田は、「特殊な撮影方法で、2人の女性陣(山﨑七海と柚穂)には脚本が渡って無くて。監督が口立てでセリフを与えて、その場でお芝居をしてもらうスタイルだった。だから2人は、ある日突然、僕と磯村勇斗が家の前にやってきて、『水道停めます』と言われて、『どういうこと?』みたいな状況だった」という。「すごくリアルな生々しいお芝居が求められていたので、僕自身も彼女たちのシーンが浮かないように、全体的に生っぽいお芝居を求められた」と撮影を振り返った。

山﨑と柚穂は脚本を知らない上に、大人のキャストチームには、「2人と近しくなりすぎないように」という、厳しいお達しが出ていたという。これについて生田は、「長い撮影期間、いろんなお話をしたいんですけど、監督とかプロデューサーが、『あの子達とはしゃべっちゃダメ』って、罪なことを言うんですよ(笑)。でも、彼女たちは何も知らないから、無邪気に『学校でこんなことがあった』とか、『宿題があって…』って言ってくる。だけど、『喋っちゃダメ』って言われてるから、『そう、なんだ…』って。すごい罪なことをしているような、申し訳ないなっていう気持ちがあった」と罪悪感に襲われたことを明かした。しかし「裏を返すと、我々水道局員が執行停止をする痛みとも似たような気持ちだった」と、役作りには生かせたようだったが、「心苦しかった…。もっとお話したかったです」と本音を漏らしていた。

『渇水』
2023年6月2日(金)より、全国公開
監督:髙橋正弥
原作:河林満「渇水」
脚本:及川章太郎
企画プロデュース:白石和彌
主題歌:向井秀徳「渇水」
出演:生田斗真 門脇麦 磯村勇斗 山﨑七海 柚穂 宮藤官九郎 宮世琉弥 吉澤健 池田成志 篠原篤 柴田理恵 森下能幸 田中要次 大鶴義丹 尾野真千子
配給:KADOKAWA

【ストーリー】 日照り続きの夏、市内には給水制限が発令されていた。市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)の業務は、水道料金滞納家庭や店舗を回り、料金徴収と、水道を停止すること(=停水執行)。貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々であった。俊作には妻と子供がいるが別居中で、そんな生活も長く続き、心の渇きが強くなっていた。ある日、停水執行中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会う。自分の子供と重ね合わせてしまう俊作。彼は自分の心の渇きを潤すように、その姉妹に救いの手を差し伸べる…。

©『渇水』製作委員会