東日本大震災から10年後の福島が舞台の、社会への痛烈な怒りと切なる祈りの物語『こんな事があった』9月公開

『追悼のざわめき』『どこに行くの?』の松井良彦監督の18年ぶりの最新作で、前田旺志郎、窪塚愛流、井浦新らが共演する『こんな事があった』が、9月13日より公開されることが決定した。併せて、ティザービジュアルが披露された。

2021年、夏の福島。17歳のアキラは、母親を原発事故の被曝で亡くし、父親は除染作業員として働きに出て、家族はバラバラに。拠りどころを失ったアキラを心配する友人の真一も、孤独を抱えていた。ある日、アキラはサーフショップを営む小池夫婦と店員のユウジに出会い、閉ざしていた心を徐々に開いていく。しかし、癒えることのない傷痕が、彼らを静かに蝕んでいく。

舞台は、東日本大震災から10年後の福島県。震災と原発事故をきっかけに離散した家族と、青春を奪われた青年たちを描く。監督は、79年のデビューから監督作は5本と寡作ながらも、代表作『追悼のざわめき』など今も日本のみならず世界中の映画ファンから支持されている松井良彦。モスクワ国際映画祭に出品された前作『どこに行くの?』から18年ぶりの待望の最新作となる。構想から13年、震災や原発事故の記憶が薄れゆく現代に、痛烈な怒りと切なる祈りを込め、観るものの心を揺さぶる魂の映画を完成させた。

主人公のアキラを演じるのは、是枝裕和監督『奇跡』で映画デビューにして主演を飾り、映画やドラマ、舞台を中心に着々とキャリアを積む前田旺志郎。真一役には、篠原哲雄監督『ハピネス』で映画初主演を果たし、映画やドラマ、CMなど活躍の場を広げる窪塚愛流。真一の父親・篤人役には、今の日本映像界で欠かすことのできない俳優、井浦新。窪塚と井浦は、ドラマ「あのときキスしておけば」、映画『麻希のいる世界』に続く親子役での3度目の共演となる。

ティザービジュアルは、撮影地でもある福島の風景写真を使用したもの。津波の塩害による枯れ木が並び、左側にはブルーシートに覆われた放射能汚染土や瓦礫、右側には震災と放射能被曝によって廃校となった小学校が映し出されている。タイトル『こんな事があった』に対して「何があったのか」と考えさせられる示唆に富んだビジュアルになっている。

▼キャスト&スタッフ コメント

■前田旺志郎(アキラ役)
公開される事大変嬉しく思います。この作品のお話をいただき、撮影に入る前に福島の方に訪れました。そこで現地の方のお話を聞かせていただいたり、バリケードで入れない場所や、建物がそのまま残っているゴーストタウン等をこの目で見て衝撃を受けました。正直なところ今の福島がどのような状態になっているのか僕自身知りませんでした。同じ日本で生まれ育った人達が今もまだ震災、原発の被害に苦しんでいる事実に我々日本人は目を向けていかなければなりません。到底、当事者の方達に及びませんが、僕はこの作品を通してその痛みを、どこにぶつけたら良いかわからない怒りを少し体感しました。僕と同じように、この映画を通して多くの人が被災者の方々の現状を知り関心を持つきっかけになってくれたらと思います。

■窪塚愛流(真一役)
震災や原発事故があって、当時の事は自分でもとてもよく覚えていて、悲しい出来事だったり、憎しみの感情を呼び起こすことだけど、松井監督は、そういう事だけではなく、あの出来事を、これだけは知っておいてほしいという意味で、映画を通して僕に教えてくれました。忘れないように、これだけは忘れてはいけないこと、心に留めておくことだと思います。

■井浦新(篤人役)
松井良彦監督をご存知でしょうか? 40代以上の映画好きには、え!あの映画の監督?!となる方もいると思います。海外の映画祭で上映禁止となった1988年公開作品『追悼のざわめき』は、今でも衝撃作として色褪せず熱狂的な支持を受けています。にもかかわらず、松井監督は極めて作品数が少なく、2007年公開の前作『どこに行くの?』は19年ぶりの監督作で、今作『こんな事があった』は18年ぶりの新作になるのです。数の多寡は重要ではないけれど、それだけひとつの作品に時間と想いと情熱と愛を注いでいて濃密で深い。そして松井監督は、お世辞や嘘を言わない真っ直ぐでとても不器用な方。だからこそ信頼ができて、とことんついてゆき全身で監督の世界観に浸りながら学び感じ演じたいと思わせてくれる。私はこの作品で松井組に参加できて、とても幸せです。

■松井良彦(監督・脚本)
2025年9月13日(土)。私の監督作品、映画『こんな事があった』が公開されます。この映画に関わってくださったスタッフやキャスト、並びに協力をしてくださった方々に、心から感謝をいたします。「ありがとうございます。おおきに!です」その方々のご尽力というのは並々ならぬものがあり、作品への想いはもちろんですが、これまでに培ってこられた技術や才能を、惜しむことなく注ぎ込んでくださった。その賜物がこの映画『こんな事があった』なのです。他方、私には、今もずっと思いつづけていることがあります。それは、今現在も福島だけでなく日本自体が、原子力緊急事態宣言のもとにあるということです。つまり、まだ何も終わっていないのです。にもかかわらず、ほとんどの日本人の記憶の中で原発事故は、希薄なものとなっています。これはとても危ないことであり、決してそうであってはならないことなのです。そんな今、この現状だからこそ、一人でも多くの皆さんに本作を観て、考えていただきたいと思います。それがこの映画の存在価値であり、存在意義でもあるからです。もし会場等で皆さんとお会いした際には、お話しできれば、幸いです。

『こんな事があった』
2025年9月13日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開予定
監督・企画・製作・脚本:松井良彦
出演:前田旺志郎 窪塚愛流 柏原収史 八杉泰雅 金定和沙 里内伽奈 大島葉子 山本宗介 波岡一喜 近藤芳正 井浦新
配給:イーチタイム

©松井良彦/ Yoshihiko Matsui