大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称する映画監督リム・カーワイの最新作で、自身初のドキュメンタリー映画『ディス・マジック・モーメント』が、11月25日より公開されることが決定した。併せて、ポスタービジュアルが披露された。
2022年、コロナ禍のミニシアターを行脚したロードムービー映画『あなたの微笑み』の公開を前に、舞台となったミニシアターに次々と困難が降りかかっていった…。ついにリム監督の本拠地大阪のテアトル梅田が9月に閉館が決まり、居ても立っても居られなくなったリム監督。ついに自らインタビュアーとなって、ミニシアターを駆け巡ることとなる。
日本は、世界でも有数の“独立系ミニシアター大国”。家族経営、クリーニング店兼映画館、市民がつくる映画館、文化財として観光名所になった映画館…。一概に“ミニシアター”と言っても、その成り立ちや経営は多種多様。共通するのは“映画が好き”“映画館が好き”という思いだった。ミニシアターを訪ね、劇場を支える人たちの思いに耳を傾け、見えてきたものとは…。
ポスタービジュアルは、御成座の映写室、客席に佇むリム・カーワイ監督、そしてリム監督が映画監督を目指すきっかけのひとつになったシネ・ヌーヴォのスクリーンが印象的だ。映画には、解体が決まった沖縄に現存する最古の映画館、首里劇場の解体前の最後の姿や、再開が決まった小倉昭和館の再建前の跡地など、貴重な映像も収められている。
■リム・カーワイ(監督) コメント
私はマレーシア出身、大阪を拠点に活動している映画監督です。1994年、大阪大学に留学してはじめて訪れた映画館であるテアトル梅田が、2022年9月に閉館しました。テアトル梅田はメジャー映画ではなく、世界各国のアートハウスの映画を積極的に上映するミニシアターでした。日本にはこうしたミニシアターが数多くあり、私は日本のミニシアターで浴びるように映画を観ました。大学4年生の時にシネ・ヌーヴォで原一男監督のワークショップ「シネマ塾」に参加し、映画監督を目指しました。ミニシアターが、私の映画監督人生をはじめるきっかけをくれたのです。11作目となる『This Magic Moment』は、全国のミニシアター22館を巡った、自身初のドキュメンタリー作品です。前作『あなたの微笑み』(22)では、売れない自主映画監督“世界の渡辺”が全国のミニシアターを巡りました。今度は私が全国22館のミニシアターを巡り、スクリーンに映し出される“魔法の瞬間”に魅せられた人たちの声を集めてみました。
■深田晃司(映画監督) コメント
まるでスクリーンの神様が映画館に生きる人々を見守っているかのような不思議な時間だった。映画ファンのひとりとして貴重な記録を残したリムさんの新たな旅路に感謝します。この映画を決してノスタルジーにしてはならない、と強く思いました。
■志尾睦子(シネマテークたかさき総支配人) コメント
『ディス・マジック・モーメント』には、映画館のいまここが映っている。私もだけれど、他の劇場の方々の顔が見えて、その劇場の空気が映っている。観ていると、この作品でカメラを向けられていない劇場仲間たちの姿まで、浮かび上がって来た。
『ディス・マジック・モーメント』
2023年11月25日(土)よりイメージフォーラム他全国順次公開
監督・プロデューサー・脚本・編集・ナレーション:リム・カーワイ
配給:cinema drifters
【本作に登場するミニシアター22館】
大阪府【テアトル梅田】関西の映画文化を牽引した、ミニシアター。32年の歴史に幕を下ろした。
沖縄県【よしもと南の島パニパニシネマ】日本最南端、宮古島唯一の映画館。
沖縄県【首里劇場】映画『あなたの微笑み』に登場した沖縄に現存する最古の映画館。2022年、惜しまれつつ72年の歴史に幕を閉じた。
沖縄県【シアタードーナツ・オキナワ】名物は毎朝手作りするドーナツ!シネコンでも、単館でもない、第三の映画館“コミュニティシアター”
福岡県【小倉昭和館】北九州唯一の単館系映画館。旦過地区の火事で全焼するも、2023年12月の再建・再開を目指している。
大分県【別府ブルーバード劇場】世界最年長の名物館長・照さんが切り盛りする、昭和レトロな映画館。
宮崎県【宮崎キネマ館】特定非営利活動法人が運営する映画館として、2001年に日本で最初に誕生した映画館。
鹿児島【ガーデンズシネマ】鹿児島にある、作られた当時、日本で一番小さい映画館。
佐賀県【THEATER ENYA】大林宣彦監督『花筐』のロケ地・唐津の商店街に22年ぶりに復活した映画館。
兵庫県【豊岡劇場】映画『あなたの微笑み』にも登場した、レトロな映画館。幾多の休館を乗り越え、2023年3月に再開した。
群馬県【シネマテークたかさき】高崎映画祭のスタッフが中心となり市民出資を募って設立したミニシアター。
新潟県【高田世界館】国の登録有形文化財や近代化産業遺産にも指定される、日本最古級の映画館。
長野県【上田映劇】100年以上の歴史を誇る、老舗の劇場。
愛知県【シネマスコーレ】若松孝二監督が初代オーナーだった、名古屋の名物ミニシアター。
福井県【福井メトロ劇場】今年開館70周年になる、福井県内唯一のミニシアター。
石川県【シネモンド】フランス語で「世界の映画」を意味する石川県唯一のミニシアター。1998年開館。
富山県【ほとり座】2020年に開館した、カフェやライブホールも併設するミニシアター。
新潟県【シネ・ウインド】「新潟・市民映画館鑑賞会」という会員制度を持つ、市民参加型映画館。
秋田県【御成座】廃墟となった映画館に移住した一家が、ロビーをリビングにして生活をしながら運営する唯一無二のミニシアター。
青森県【シネマディクト】落語会「シネマディクト寄席」も開催する、本州最北端の個性派ミニシアター。
北海道【大黒座】クリーニング店も営む、北海道で現存する最も古い映画館。
大阪府【シネ・ヌーヴォ】リム・カーワイ監督が、映画監督を目指すきっかけとなった大阪のミニシアター。
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