「魚屋さんは魚を売っているだけじゃない」魚市場を巡るありのままの記憶と記録『浦安魚市場のこと』予告編

映像作家・歌川達人が、消えゆく“まち”のシンボルと、そこに生きる人々を追った初の長編ドキュメンタリー『浦安魚市場のこと』が12月17日より公開される。このほど、予告編がお披露目となり、著名人より応援コメントが寄せられた。

魚屋の活きのよい掛け声。貝を剥き続ける年老いた女性。年末のお客たちとお店の賑わい。古くから漁師町だった浦安には魚市場があった。工場汚染水の影響で漁業権を放棄し埋立地となった浦安にとって、魚市場が漁村だった町のシンボルでもある。そんな魚市場には、昼は町の魚屋、夜はロックバンド「漁港」のボーカルとして活動する森田釣竿がいた。時代の流れと共に変わっていく魚の流通と消費の形。脈々とつながってきた暮らしを謳歌する浦安の人々。しかし、その瞬間は、緩やかに、そして突然訪れる…。

予告編は、鮭を鮮やかにさばく魚屋の手つきとともに「魚屋さんは魚を売っているだけじゃない。私たちは物だけを買っているわけじゃない」という映画監督、纐纈あやの言葉が映し出され、2019年に閉場を迎えた浦安魚市場の最後の日の活気あふれる様子と名残惜しそうな人々の姿が目に入ってくる。後半には映画に登場する魚屋店主でロックバンド漁港のボーカルを務める森田釣竿の歌声が流れる中、魚市場を巡るありのままの記憶と記録が映し出されていく。しみじみとしながらも人々の逞しさや力強さを感じることのできる予告編となっている。

▼著名人 応援コメント

■栗原友(料理家・築地クリトモ商店)コメント
無くなってから気づく大切さ。大切なものを守るためにやらなければならないこと、やるべきことはその時にならないとわからないものです。日本の魚食需要が回復しつつある今だからこそ、できることはまだまだたくさんあると改めて考えさせられました。

■白央篤司(フードライター)コメント
見終えて「ああ、もう市場はないのだ」とたまらなく寂しかった。行っておきたかったと悔やまれてならなかった。見納めだ、と目頭をおさえた「泉銀」のおかあさんの声に胸を打たれる。森田釣竿さんはじめ、地元有志の方々の熱い思いが心に残る。愛惜という尊くうつくしい気持ちに満ちあふれた98分だった。

■武田砂鉄(ライター)コメント
これまで淡々と繰り返されてきた毎日が、途絶えると知った途端に愛おしくなる。そういう経験を、私たちは何度も何度も繰り返してしまう。この儚さの中に見える力強さを、どうしたら忘れずにいられるのだろう。

■ダースレイダー(ラッパー)コメント
掛け声が飛び交い、身体が波打ち、魚が飛び跳ね、リズミカルに包丁が動き、金銭が飛び交い、笑い声が起きる。魚市場にはエネルギーがドクンドクン脈打っている。このエネルギーが途絶えたら人は衰退するしかないのではないか? シャッターが降りる前に、魚を食え!

■浜岡賢次(漫画『浦安鉄筋家族』シリーズ作者)コメント
浦安魚市場はたまに鰻などを買いに行っていました。本作の人情味あふれる場面を見てもっと行っとけば良かったと思いました。今度移転して続けてる泉銀さんや他のお店屋さんに行ってみます!

■森直人(映画評論家)コメント
森田釣竿のチャーミングな個性とカリスマ性に引っ張られるうち、いつしか涙。これは日本の水産業の危機的側面や、固有の魚食文化、グローバリズムとローカリズムといった主題を抉りつつ、何より「場」の大切さについて考えさせられる一本である。

『浦安魚市場のこと』
2022年12月17日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開
監督・撮影・録音・編集・製作:歌川達人
配給:Song River Production