『ジョゼと虎と魚たち』、『メゾン・ド・ヒミコ』、NHK朝の連続テレビ小説「カーネーション」などの脚本を手掛けた脚本家・渡辺あやと、NHKドラマ「ワンダーウォール」で主演した若手俳優・須藤蓮が企画し、須藤が監督・主演も務めるオリジナル作品『逆光』が、7月17日より尾道にて先行公開、以後全国順次公開されることが決定した。併せて、場面写真がお披露目となった。
本作は、1970年代、真夏の尾道を舞台に、二人の青年の情愛を描く官能ラブストーリー。
企画を手掛けた渡辺あやと須藤蓮は、渡辺が脚本を担当した「ワンダーウォール」で知り合い、この作品で尾道を訪れたことがきっかけになり着想され、渡辺がオリジナル脚本を書き下ろし、須藤が自ら監督を手掛ける完全な自主企画映画として制作された。
故郷・尾道に帰省してきた主人公・晃を演じるのは、監督も務める須藤蓮。そして晃が憧れる大学の先輩・吉岡には、「ワンダーウォール」、『花束みたいな恋をした』などに出演した新進気鋭の俳優・中崎敏が扮する。共演する女優陣として、舞台や映画『リバーズ・エッジ』などで堅実なバイプレイヤーとして活躍する富山えり子と、オーディションで見出され今回が初の本格的な演技となる木越明が、映画界の新たな逸材として瑞々しい魅力を放つ。
音楽を手掛けるのは、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」や映画『花束みたいな恋をした』など数々の映画音楽を担当する大友良英。さらに、渡辺とともに須藤蓮の才能に惚れ込んだ『浅田家!』、『ナラタージュ』といった良質な話題作を次々と手掛ける小川真司が、エグゼクティブプロデューサーとして参加する。
▼スタッフ&キャスト コメント
■須藤蓮(監督・晃役)
この度、初めて映画を撮りました。企画の立ち上げからお金の計算まで、全て自分達でやるんだ!と意気込んで始めたものの、まさに「言うは易し、行うは難し」、その大変さは想像をはるかに上回るものでした。正直なめてました。一方で、ただただ自分の感覚と仲間たちの才能を信じながら突き進んできたこの数ヶ月、鬱屈していたエネルギーがぐるぐると循環し、満身創痍になりつつも物を作る喜びを噛み締めた時間は、まさに青春そのものでした。僕は自他共に認めるお喋り男なのですが、いざ作品について説明を求められると急に一つとして言葉が出てこなくなることに、自分でびっくりしています。なぜ、このあらすじなのか、時代設定なのか、カメラワークなのか、そもそもなぜ尾道で撮ったのか。どんな質問にも「どうしてもそうしたかったから」としか答えようがなく、それはちょうど恋心を説明できないようなものなのかもしれないと思っています。言葉にならない僕の宝物、『逆光』をぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。
■中崎敏(吉岡役)
この作品のイン前、監督須藤蓮は「衣装、ロケ地、撮り方全部 最高のものを用意してあるので絶対に魅力的に撮ります」と力強く言ってくれました。その真っ直ぐな目と愚直なまでの行動力は疑念を生む一切の隙を許さず、自分のみならず周りを惹きつけて更にポテンシャルを高めました。その言葉通り、細部までこだわり抜いた絵作りは画面に映る全てのものに光を当てその物の持つ生来の輝きを何倍にも膨らませます。大人になるにつれて陰の部分に物事の本質を見るようになりがちでしたが、それは光の当たる部分に魅せられているという大前提があってこそというのを思い出させてくれました。須藤蓮の初監督作品、五感をフルに使ってお楽しみください。
■渡辺あや(脚本・企画)
一度でいいから、どこからの依頼でもなくなんの企画会議も通さず、ただ純粋に「作りたい」という理由で作品を作ってみたいものだと思いながら、そんな自由は叶わぬ夢だと長らく諦めていました。ところが去年、突如「よし、そういうのを作るぞ」と思いたったのは、やはり緊急事態宣言下という、あらゆる仕事が吹っ飛び、日常がすべて崩壊したような時間の中で、それはかつてなく切実な、作家としての生存本能のような衝動だったと思います。そうして須藤蓮監督とお互いの持続化給付金を持ちよって、若い役者やスタッフたちに声をかけ、ただ「自分たちが作りたいものを作る」ことを唯一のルールとして、この世に生まれてきたのがこの『逆光』です。闇の中にみずから土を持ち上げて芽吹く緑が時々底知れぬ力を見せてくれるように、本作もその完成に至るまでの過程の中で、びっくりするような希望の景色を私にたくさん見せてくれました。本作のそんな生命力が、これから誰かの心に「生きたまま届く」ことを夢みて、ワクワクしております。
『逆光』
7月17日(土)より、尾道にて先行公開、以後全国順次公開
監督・企画・出演:須藤蓮
脚本・企画:渡辺あや
音楽:大友良英
出演:中崎敏 富山えり子 木越明 SO-RI 三村和敬 河本清順 松寺千恵美 吉田寮有志
配給:FOL
【ストーリー】 1970年代、真夏の尾道。22歳の晃(須藤蓮)は大学の先輩である吉岡(中崎敏)を連れて帰郷する。晃は好意を抱く吉岡のために実家を提供し、夏休みを共に過ごそうと提案をしたのだった。先輩を退屈させないために晃は女の子を誘って遊びに出かけることを思いつく。幼馴染の文江に誰か暇な女子を見つけてくれと依頼して、少し変わった性格のみーこが加わり、4人でつるむようになる。やがて吉岡は、みーこへの眼差しを熱くしていき、晃を悩ませるようになるが…。
©2021『逆光』FILM