都内の終末期医療専門病院に勤務し、命の終わりを真摯に見つめる現役医師でありながら、作家として「サイレント・ブレス」や、NHKにてテレビドラマ化され話題を呼んだ「ディア・ペイシェント」を世に送り出した南杏子による原作を、吉永小百合主演、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行共演で映画化する『いのちの停車場』が、5月21日より公開される。このほど、2月4日に丸の内TOEI1にて「UICC ワールドキャンサーデー2021 Light up the world I AM AND I WILL – 未来にひかりをつなぐ ライトアップ点灯式」が行われ、主演の吉永小百合、音楽家の坂本龍一(ビデオメッセージ出演)、UICC日本委員会委員長の野田哲生、UICC日本委員会幹事/国立がん研究センター理事長の中釜斉が登壇した。
ワールドキャンサーデーは、世界各国でがんに対する意識と教育を高め、この病気に対して行動を起こさせることを目的として様々な取り組みが行われる日。世界各地をライトアップするUICCのイベントである「Light Up the world」と連携して、UICC日本委員会では、全国16ヶ所のライトアップ会場にて、点灯合図にあわせてUICCのテーマカラーである「ブルー」「オレンジ」へと夜空をライトアップする。なお、この模様はYouTubeにてオンライン配信もされた。
点灯式は、UICC日本委員会委員長の野田哲生、UICC日本委員会幹事/国立がん研究センター理事長の中釜斉の挨拶から始まり、代表して野田が「今年は例年までとは異なり、全国16ヶ所で行われるライトアップの模様を中継するというイベントとなりました。コロナに関係なく、年間100万人もの方ががんと診断されています。がん克服に向け、皆さんの思いを一つにできればと思います」とコメントした。
次に、点灯式が行われる全国の会場のうち、大阪(万博記念公園 太陽の塔)、富山(世界遺産相倉合掌造り集落)、北海道(さっぽろテレビ塔)、京都会場(京都タワー)の担当者からのメッセージ動画が披露され、「誰一人取り残されないがん医療」を目指して作り上げた 12のテーマのワールドキャンサーデーセッションのうち、いくつかのテーマの座長からのコメントも紹介。中釜は「がんは早期発見で治療ができる病気でもあります。医療スタッフは患者さんが安心して治療を受けられるように準備をしておりますので、まずは国民のみなさまが安心して受診できるような環境を作っていければ」とまとめた。
そして、映画『いのちの停車場』で命と向き合う在宅医師・白石咲和子を演じた吉永小百合が登壇。がん患者の方々などの一人ひとりの人生に寄り添う医療の在り方を描くこの映画が、 UICCの「誰一人取り残されないがん医療」という理念に沿うとして、オファーを受けての出演となった。吉永は、”I AM AND I WIL”(私はいま そしてこれから私は)というUICCで3年間続いてきたキャンペーンのスローガンにちなみ、「いのちの大切さを、映画を通して伝えていきたいと思っています」と挨拶した。
ここで、いよいよ全国各地でのライトアップまでのカウントダウンが吉永、中釜、野田の合図で開始。18時になると同時に、各ライトアップ会場のイルミネーションが点灯した様子がスクリーンに映し出されると、吉永は「美しいライトアップで感動しております。乳がんのピンクリボンについては知っていましたが、2000年から行われているワールドキャンサーデーという日も忘れないようにできればと思います。私の家族や友人にもがんに苦しむ方々がいますので、良いサポーターになりたいと思っております」と感想を述べた。
続いて、もう一人のゲストである音楽家・坂本龍一からの動画メッセージが紹介された。がんサバイバーとしても知られる坂本は、映像内で「世界的なパンデミックの中、通常の医療を受けられず、不安な気持ちを抱えるキャンサーペイシェンツ(がん患者)の方々も多いと思います。キャンサーデーはそういった方々への気づきになればと願っています。がんとともに生きる人たちは、僕自身を含めたくさんいらっしゃるかと思いますが、特にがんを抱えている子供とその家族に対してのサポートへが広がることを祈っています。皆さん、応援宜しくお願いします」と語った。
坂本とは沖縄県での慈善コンサートなど、様々な活動を共に行って来た吉永。坂本からのメッセージ動画を受け、「2014年に坂本さんががんと闘っていると知りましたが、それから1年経ったあとは元気に一緒にお仕事をさせていただいて。そこから1年間お会いできていなかったところでご病気と知り、心配しております。しっかりと治療なさって、また元気で私たちの前に登場していただけたらと思います。みんな(坂本さんに)エールを送っておりますので、どうか早く元気になって欲しいと、切に思っております」と口にした。
122本目の出演作となる本作で、初めて医師役を演じたことに対して質問されると、「今回は志願してドクターの役を演じさせていただきました。小さい頃から体が弱くて、病院の先生にはずいぶんお世話になりました。演じてみると、今までの役の中で一番難しかったかもしれないなと思います。作品の中では、小児がんの方とのシーンもあり、寄り添う大切さ、というのをこの作品で改めて知りました」と撮影当時を振り返った。続けて、「それぞれの方がそれぞれの思いの中で生きていこうとしていると思います。ドクターの役を演じることで、(患者の方々に)どのように向き合うか、そして温かいサポートが大事だと改めて思いました」と本作を演じたとこによって「病」や「いのち」に対して心境の変化があったことを述べ、「コロナでなくても、病院に行けずに苦しんでいる方もいらっしゃると思います。また、専門が違ってもコロナに尽くす(医師の)先生や、看護師さんもお休みなく働かれていると聞きます。私たち一人ひとりが気をつけて日常を送ることが(コロナに関わる)皆さんをサポートすることになるのではと思います」と世界的なコロナ禍の中、がんだけでなく様々な病気と闘っている方やそのご家族、そして医療従事者の方へのエールを送った。
最後に、吉永は「今回、初めてこのイベントを知りましたが、坂本さんの映像も拝見させていただいて、みんなでしっかり手を携えて生きていきましょう、という気持ちになりました。いつまでもこの会を続けていただきたいと思います」と感想を述べ、野田も「コロナを受け入れながらがんを治療している施設の方も、吉永さんのコメントで元気付けられたかと思います。がん検診に行くことが、日本のがんの克服に繋がると思いますので、みなさまがん検診へのご参加をお願いします。皆んな元気で、来年もお会いしましょう」とコメントし、温かい雰囲気の中イベントは締め括られた。
『いのちの停車場』
5月21日(金) 全国公開
監督:成島出
原作:南杏子「いのちの停車場」
脚本:平松恵美子
出演:吉永小百合 松坂桃李 広瀬すず 南野陽子 柳葉敏郎 小池栄子 みなみらんぼう 泉谷しげる 石田ゆり子 田中泯 西田敏行
配給:東映
【ストーリー】 東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。これまでひたむきに仕事に取り組んできた咲和子にとっては人生の分岐点。父(田中泯)と暮らしながら「まほろば診療所」で在宅医師として再出発をする。院長の仙川徹(西田敏行)と訪問看護師の星野麻世(広瀬すず)、東京から咲和子を追いかけてきた野呂(松坂桃李)と共に、咲和子は様々な事情から在宅医療を選び、治療が困難な患者たちと出会い戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。
©2021「いのちの停車場」製作委員会