【全文掲載】妻夫木聡「なかなか癖の強い…、うさん臭さと言うか…」“嫌な野郎”になりきった共演者との距離感を明かす

MC:ありがとうございます。さて、今回は皆さんにお題を出させていただきます。ある男は別人として生きていたわけなんですが、そこでこんな質問です。もし別人になれるとしたら誰になりたいですか?石川監督からお願いします。

石川:トップバッターなかなかきついですよね(笑)。今回音楽を台湾のミュージシャンの人たちにやってもらっていたんですけれども、そのやり取りを見ながら、自分も楽器ができたらよかったのになあって。作曲家みたいなものになってみたいなと、なれないっていう前提で一番憧れる存在ですね。

MC:石川監督の作品はいつも音楽がすごく寄り添っているというか、やはりこだわりがあるんですよね。

石川:そうですね。やっぱり自分でできないからこそ、向き合ってる作曲家の人からどういうものが出てくるかっていうのは、すごくいつも楽しくて、今まで仕事させてもらってきた方々、皆さん本当に素晴らしい方ばかりだったなと。

MC:平野さんはいかがでしょうか?

平野:僕は格闘技を見るのが好きで、ボクシングも好きなんで、今回の映画もボクシングが重要な意味を持ってるんですけど、入場シーンと勝った瞬間にお客さんに向かって雄叫びを上げる瞬間だけをやってみたいんですよね。途中は、ちょっと大変なんで、あんまり経験したくないですけど、すごい緊迫感の中で入場してきて、みんなに見つめられているところと、ちょっと飛ばして、勝って喜んでいるところ、みんなに歓声を浴びてコーナーに立っているところだけをやってみたいですね(笑)。だいたい家で地味に小説を書いてますから、今日のスポットライトでも、めったに浴びないような明るさでちょっとクラクラしてるんですけど(笑)。それを格闘技のリングでやってみたいなと。試合はしたくないんですけど(笑)、前後だけやってみたいです。

MC:柄本さんはいかがですか?

柄本:その時の気分ですけどね。あの人の目線で世界を見られたらって思うみたいなことですかね。うーん、相米慎二かな?今の気分です(笑)。ある時は違う人を言うと思いますけど、はい。

MC:眞島さんはいかがでしょうか?

眞島:僕も気分ではあるんですけど、18歳で上京してきて、その当時、僕は公務員になりたかったんですよ。なので、こういう芝居とか役者の人生じゃなくて、普通に公務員になってたらどうなってたんだろうなっていう、自分の違う道っていうか、そういうのを覗いてみたいなって気持ちはありますね。

MC:まだ公務員の役っていうのは…?

眞島:公務員とかは結構ありますね(笑)。

MC:窪田はさんどうですか?

窪田:妻夫木さん。

妻夫木:ええ~!?

窪田:え?いや、本当に、撮影のシーンはあまりなかったんですけど、共通の趣味でボクシングとか一緒にやらせてもらったりして、一緒に釜山やベネチアに行かせてもらって。学びをやめない人というか、あと、すごく周りに人がいる人っていう印象があって。妻夫木さんの韓国の親友の俳優であるハ・ジョンウさんと一緒に御飯をさせてもらった時に、気軽に呼んでいただいて、僕はすごく嬉しくて。妻夫木さんには壁みたいなものが一切なくて。僕にとって大先輩なんだけど、垣根とか境界線っていうものが本当にない人で、すごくリスペクトが高いです。ボクシングも、僕はほかの人とかと一緒にできないけど、進んでいろんな人とトライしてやられるんですよ。僕はその精神力が全くないから。この間もプロの方と軽くスパーリングしたってさっき聞いて。どういう精神力なんだろう!?っていうか、すごいなって。そのトライする気持ちっていうか。進み続ける人生の歩み方をすごいリスペクトしてますので、妻夫木さんです。

MC:妻夫木さん、どんな精神力って言ってましたけど(笑)。

妻夫木:わかんないです(笑)。好きなことやってるだけなんですけどね。僕自身、ボクシングもこの映画がきっかけで始めたんですけど、僕と柄本佑でよく一緒にやってるんですけど、佑と僕だけボクシングに関する役が決まってなくて。だけど一番練習している僕たちは、一体何を目指してるんだっていう(笑)。『なんでこんな頑張ってるんだろうね』なんて言いながら(笑)。楽しんでやってるんですけどね。待ってます(笑)。

平野:また書きます(笑)。

妻夫木:(笑)。

MC:安藤さんはどうですか?

安藤:すごい、まとまったところ本当に申し訳ないんですけど、私はターザン。高いところにぶら下がって壁から壁に行きたくて、ずっとできると私は思い込んでて、今も。見てると、「こう行ったら、ああ行って、こう行ける」っていう動線をすぐ作っちゃうんですよ。だから、今すぐにでもそういう能力を身に付けて、飛びたいです(笑)。ワイヤーアクションじゃなくて、私の力でいける気がして。私はターザンを見つけると、必ず動画を撮って、ここのターザンはこうだったっていうのを作ってるんですけど(笑)。あのう、なんかすいません(笑)。なりたいですね。

MC:ありがとうございます(笑)。妻夫木さんはいかがですか?

妻夫木:僕も気分なのかもわからないんですけど、いないからこそ思うのかもしれないんだけど、『ブロークバック・マウンテン』という映画が好きで、ヒース・レジャーっていう役者さんがとっても好きだったんですよ。彼になりたいなって思ったりします。そこに生きてるんですよね。演じるっていうことって何なのか、僕もよく分からないんですけど、彼はフィルムの中で実際生きてるんですよ。どんなことを考えてるんだろうって、のぞいてみたいなと思いますね。

窪田:素晴らしい役者さんですよね。

MC:ありがとうございます(笑)。それでは最後に、これからご覧になる方に向けてメッセージをお願いいたします。

石川:この映画はこれから皆さんにご覧いただくということで、日本では初めて公の場で上映することになります。すごく深くて重要なテーマも我々としては盛り込んだつもりなんですけれども、でもそれ以上にまず本当にすごく面白いお話で、楽しんでいただける作品にしたつもりです。まず純粋に映画として楽しんでいただいて、その後、感想を持ち帰っていただいて、一人でも多くの方にお伝えいただけたら嬉しいなあと思います。よろしくお願いします。

妻夫木:これほど観終わった後にいろんな感想を持たれる映画っていうのがなかなか珍しいんじゃないかなと正直思います。本当に人それぞれの結末があっていいと思うし、その結末っていうのはどんどん育っていってほしいなあって、今すごく思ってます。僕たちもベネチアと釜山を経て、いろんな人の感想を聞いた中で、僕たちが思い描いていた「ある男」っていうイメージだとか、形だとか匂いだとか、すごくまたいろんな思いが、イメージが広がって、こういうふうなこともあるのかな?何て逆に思わされてしまったりすることもあったりしました。なので、皆さんに観ていただいて、少しでもいいと思っていただいたら、いろいろ想像しながら、11月18日に公開となりますので、できる限り多くの人たちに勧めてもらえるとすごく嬉しいです。今日は本当にお越しいただきありがとうございました。最後まで楽しんでください。

『ある男』
2022年11月18日(金)より、全国ロードショー
監督:石川慶
原作:平野啓一郎「ある男」
脚本:向井康介
出演:妻夫木聡 安藤サクラ 窪田正孝 清野菜名 眞島秀和 小籔千豊 坂元愛登 山口美也子 きたろう カトウシンスケ 河合優実 でんでん 仲野太賀 真木よう子 柄本明
配給:松竹

【ストーリー】 弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者である里枝(安藤サクラ)から奇妙な相談を受ける。里枝の亡くなった夫、大祐(窪田正孝)の身元調査を頼みたいと言うのだ。里枝は離婚を経験後、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う大祐と再婚。新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日突然夫が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、大祐の法要の日、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が訪れ、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言い放つ。愛したはずの夫“大祐”は、まったくの別人だったのだ…。城戸は、“ある男”の正体を追う中で様々な人物と出会い、衝撃の事実に近づいていくと、いつしか城戸の中にも他人として生きた男への複雑な思いが生まれていく…。

©2022「ある男」製作委員会