MC：まさかのケント・デリカットだという（笑）。

林：なんて呼びあうかみたいな話になったときに、そう言われまして。小学校で野球をやっていた頃にそう呼ばれていたことがあって、冗談なのかなと最初思っていたら、その後ずっとそう呼ばれ続けて。なんの引っかかりもなく呼んで来るんですよ。台本の話しをしてる時も、「ここはケント・デリカットが…」って（笑）。まるで、その名前になったかのような（笑）。だから、冗談じゃなかったんだなあっていう。全部正直な方なんだなって（笑）。はい。

MC：距離がグッと縮まったってことでしょうね（笑）。監督はお二人と話し合う時間を設けたり、アイデアを二人に求めたりしたっていうのも聞いたんですけど。

柿本：普段やってる映像は、短いのが多いんですけど、映画は100分から2時間で、同じ映像でも使う筋肉が全然違うというか。同じ陸上競技だとしても100メートル走とマラソンぐらい違うかなって。100mばっかりずーっと走ってて、いきなりマラソンのような映画の現場に入ったんで、初日でこれは違うものだなって思って。全く別物だと思ったので、結構面食らったというか。例えば映画の撮影なんで頭からシーンを順撮りしていくわけでもなく、いろんなところに飛んで戻って飛んで戻ってっていうのをやるので、自分の現場のキャリアとしての経験が足りない部分があるのが完全に分かっちゃって。もう2人を先生みたいにして、「マラソンの走り方を教えて下さい」っていうか（笑）。本当に現場でいろんなことを教えてもらって、勉強になったというか。2人がいなかったら多分結構ハチャメチャな感じになってたなと。そこのペース配分をすごく考えて、ちゃんとやってくれて。本当に感謝しています。

MC：お二人はそれぞれ何かご自分のアイディアが生かされてるシーンっていうのがあるわけですよね？

林：この物語ってすごく心の変化を繊細に描いた作品だと思っていて、そことは別で頭の中にある虫の成長過程だったりという、撮影の順番が行ったり来たりして、お互いに共有しておかなければいけない認識が出てきて、そこを常に確認しあいながら、毎シーン大切に撮っていったかなと。セリフも一番にラブストーリーらしいというか、小説的な現実離れした描写とかもあったりとかするんですけど、描かれている人物が今を生きる人が共感するコンプレックスだったりそういったものを抱えている人物だったので、「まず最低限そこのリアリティだったり説得力をもってやっていきたい」っていう話はみんなでさせていただいて。例えば「セリフはこういう風に言ったらどうだろう」とか、「ここはそぎ落としていいんじゃないか」という話し合いはしていた記憶があります。

MC：小松さんはどうですか？

小松：演出で思い出に残っているのが、佐薙が…そうか、まだ観てないのか。すいません（笑）。服をバッと脱ぐところがあるんですけど、ボタンを外すのは繊細だし、戸惑いみたいな部分もあると思うんですよ。でも監督は、「急いで、急いで」みたいな感じだったのか、「ブチブチっ！ってシャツを破るのはどうか？」と言って、みんな「いやいや、それは違う。それは筋肉マッチョな人がやることだから」って否定して（笑）。「もっとラブな方だから」という話をしながら撮影してたんですけど、CGもそこには映ってないので想像の中でやるしかないっていう難しさもありながら、でも監督と話し合って「じゃあ、こういう風にとりあえずやってみます」みたいな感じでしたね。

MC：お二人とも今回の役はすごく特殊というか、極度の潔癖症と視線恐怖症だからこそ細かい演技をしてるなと思ったんですけど、特に何か意識していたところってありますか。

林：映像でも描かれるっている部分もあるんですけど、どういった生い立ちで、どれぐらいの期間を過ごしてきたかを考えたときに、人とずっと接触して来なかった人間同士が、出会ってどれぐらいの距離の詰め方というか、何を感じるのかに気をつけたて演じました。

MC：林さんに至っては、マスクだったり手袋だったり帽子だったり、身体が窮屈なくらいの歩き方もしてましたね。小松さんはどうですか？

小松：視線恐怖症の表現の仕方が難しくて、冒頭のセリフでもあるんですけど、「同じ匂いを感じた」っていうセリフがあるんですけど、高坂に対して。もちろん最初は目は見られないけど、でもこの人だったら大丈夫かもみたいな部分をヒントにしながらやっていって。でも他人とは縮こまってしまう部分だったりとか、そのバランス？ あとヘッドホンもつけているので、それが佐薙にとっての鎧となるものでもあって、それのさばき方みたいなのとか、いろいろ考えることはあって。そこも相談しながら自分で見せたいこともやりながらではあったんですけど、難しい役でした。

MC：さて、ここでお二人に同じ質問をしてみたいと思います。本作のタイトル『恋する寄生虫』にかけて、林さん、小松さんが今ハマっているもの、ズバリ「恋する○○」がありましたら教えていただきたいです。

林：僕は「恋するストレッチ」ですね。今、舞台をやっていて、結構階段の上り下りがある舞台で、30歳にして初めて膝に痛みが来たんですよね。それで共演させていただいている演劇界の神様と言われる浅野和之さんに“神様のストレッチ”を教わりまして、それをやると痛みがなくなって体の調子もすこぶる良くなりまして。あまりストレッチをやって来なかったので。これはいいぞと思って、家に帰ってからもずっと、寝る前とかもやるようになってしまって、そしたら今度は逆に伸ばしすぎて痛くなって（笑）。なので、まあ、今ストレッチにハマってますかね。