MC:まずはの田中さん、中谷さんにお伺いしたいんですけれども、日本では実現したことがない日本初の総理の夫、そして女性総理大臣を演じられました。オファーを受けた時は率直にどんなお気持ちでしたか?
田中:中谷さんと夫婦役ということで、緊張しました。あの…ハラハラしてましたよ。
中谷:どういう意味ですか?
田中:えっ? いや、あの~、いや、悪い意味じゃないんですけど。全然そんなことはないんですけど、怒られると思ってました…。
中谷:ほらあ、悪い意味じゃないですか(笑)!?
田中:はい(笑)。でも最初は総理の夫って聞いてもピンと来なくて、なんとなく分かったふりしていたんですけれども、台本を読んで初めてちゃんと理解したというか、奥様が日本初の総理大臣になったことによって、それで総理の夫になる「っていうか、俺のこと?」みたいな感じでした。
MC:中谷さんは、オファーを受けた時はどのようなお気持ちでしたか?
中谷:お話を最初にいただいた当初は、「日本で女性の総理大臣なんて絶対無理でしょう」っていう、ちょっと意地悪な気持ちで原作と脚本を読ませていただきました。でも凛子が、働く女性が子どもを産み、育てやすい社会を作るという素敵な理念を持っていて、それは女性でしたらきっと誰もが願っていることですよね。一人の女性としてとても共感して演じさせていただきまして。現場はとても温かい場所でしたね。居心地のいい現場で、そして田中圭さんが役柄ではとても脇が甘いんですね。ご本人の脇が甘いわけではないんですよね(笑)? ということではないんですけれども、現場ではとても頼もしくて、まるで優秀な助監督さんのように、私は歩き始めるタイミングとかすぐ忘れてしまうんですけれども、耳元でこっそり「よーいスタートから、3秒経ってからです」と教えてくださって、いつも助監督さん代わりというか、頼りにしてました。
田中:助監督さんが「スタートから3秒で行ってください」って言って、中谷さんが「分かりました」と。でも「用意スタート」で歩いて行くんですよ(笑)。「違うの、違うのよ」みたいな(笑)。「中谷さん、『分かりました』って言ってから2秒後のことですよ」みたいな(笑)。そういうのが何度かあったので、「よし。ここは俺が」っていう、そんな感じでございます。
MC:具体的にどのようなことをされて役を作っていかれたんですか?
田中:僕はもう具体的なことは何もしてないので、中谷さんに。すごい具体的ですから。
中谷:監督とお話しして、河合監督のこだわりでもあり、私自身の思いでもあったのは、「きっとヒステリックに主義主張をしかめっ面をして叫ぶだけでは、今の日本で総理大臣は無理だよね」っていうことを監督がおっしゃって、私もそれに賛同して、世界中の女性リーダーたちを見て、そうした方々が怒りをぐっとこらえて、いつも微笑みを絶やさなかったり、穏やかな口調で話しをする姿を参考にさせていただきました。あとは日和くんが隣にいてくださったので、日和くんの優しさに包まれて演じていれば凛子になるなっていう感じでしたね。
MC:田中さんは完全に巻き込まれ型の夫でしたけれども、そのあたりは意識をされていたんですか?
田中:何もしない主人公ってあんまりいなくて、僕は台本を読んだときに、それがすごく嬉しかったんですよ。主人公像として巻き込まれていくだけの本当に何もしない奴っていうのが、何か言葉はすごく悪く聞こえるんですけど。僕、未だに1個だけ後悔していることがあって、監督覚えてるかなあ…、できれば忘れてほしいなと思っているんですけど、衣装合わせの時に監督から「本を読んで、どうでした?」って聞かれて、僕はすごくやりがいがあってというか、嬉しさがあってなんですけど、つい監督に「いや、ほんと何もしない主人公で嬉しいっす!」って言っちゃったんですよね。それが、なんかすごくやる気ない風に捉えられているんじゃないかなとか、一瞬ちょっと変な空気になって。覚えてます、監督?
河合:はい、もちろんです。覚えてます(笑)。
田中:どう思いました? 「コイツ、やる気ねえな」って思いました?
河合:いやいや、そんな風に思わなかったです(笑)。
田中:何もしない主人公って言っちゃって、でも実際いざ現場に入ると、皆さんの面白い芝居を受けて、なるべく日和100%で返そうと思ってはいるんですけど、やっぱり芝居が面白いとつい俳優・田中圭を出したくなっちゃうんですよ。何もしないと何もしないで、不安になるわけですよ。これでいいのかなとか、お芝居できてるのかなぁって。すごい不安になるから、「そう来るなら、俺もやっちゃうよ」みたいな、技術合戦みたいなことを頭にちらつかせてしまって。その時は、「お前は1回寝てろ」と言って田中圭を封じ込めて、全編日和でニュートラルに入れるように心がけておりました。
MC:河合監督は、この夫婦像というのはパーフェクトでしたか?
河合:原作を読ませていただいて、この夫婦を誰にやっていただけるのかっていうのがあったんで、本当にお二人で良かったなと思っています。決まってからは、脚本とかもアテ書きというか、お二人のことをイメージして作っていったんで、すごく楽でしたね。脚本作りが。