世界16の国と地域で大ヒットとなったタイ発のクライム・エンターテイメント映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が9月22日より公開される。このほど、7月26日に渋谷・ユーロライブにてトークイベント付き特別試写会が行われ、本作を手掛けたナタウット・プーンピリヤ監督と、昨年『おじいちゃん、死んじゃったって。』で長編映画監督デビューを果たした森ガキ侑大監督が登壇した。
▲森ガキ侑大監督(左)とナタウット・プーンピリヤ監督(右)
本作は、一人の天才少女を中心とした高校生の“犯罪チーム”が、知恵と度胸だけを武器に世界を股にかけたプロジェクトに挑むクライム・エンターテイメント。今回のプーンピリヤ監督と森ガキ監督の対談は、二人とも同世代で映画監督として活躍するかたわら、数々の有名企業のCMを手掛ける敏腕演出家として活躍しているという共通点があることから実現した。
はじめに、なぜ“カンニング”をテーマにしたのかという質問に、プーンピリヤ監督は「タイ社会ではよく知られている教育問題だけれど、今まで誰もこのテーマで映画を撮ろうとしなかった。だからこそ、この社会的な問題を完全なエンタメ作品として撮りたかったのです」と述懐。森ガキ監督は感想を求められ、「どこのシーンをとってもスタイリッシュな映像美が本当に素晴らしかった!またオリジナルの脚本に社会的な要素も取り込みつつ、ここまでエンタメ作品としておもしろく昇華されていることは本当にすごい。こんな作品を日本でも作りたい!と思って、ちょっと嫉妬しました(笑)」と羨ましさを滲みませながらも大絶賛。さらに「カンニングという1つのテーマで2時間ちょっとの時間、ハラハラドキドキさせっぱなしにする演出と脚本は素晴らしいし、登場する高校生たちがモブキャラ含めて全員、魅力的なキャラクターに仕上がっていた事にも感心した。“カンニング”という悪いことをしているのに憎めなくて、全員を愛おしく思ってしまうのも不思議な魅力」と語った。
続けて、森ガキ監督からの「脚本にはどのくらいの時間をかけたんですか?」との問いかけにプーンピリヤ監督は、「脚本を考える人間は自分以外に2人いたので3人でケンカにケンカを重ねながら(笑)、1年半かけて練り上げました」と茶目っ気たっぷりに返答し、キャラクターに関しては「見ているうちに応援したくなって、ずっと見ていたいと思わせるキャラクターにするようにしました」と当時を振り返った。
また、これまでのタイ映画に対するイメージからは想像もつかないエンターテインメント作品となっていることから、プーンピリヤ監督がこれまでどんな映画に影響を受けてきたかに話が及ぶと、「子どもの頃住んでいた祖母の家がレンタルビデオ屋だったことから、ハリウッド作品をはじめとして色んなジャンルの映画をたくさん見てきた。その中で一番パワーをもらって心を動かされた作品が、マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』でした。こんな作品を撮れる映画監督になりたい!と子供の時から思っていたのです」と明かした。この回答を聞いて、MCは「この『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』にもその影響はあると、やっぱりわかりますね!時間を感じさせない演出は同質のものと感じる」と納得していた。
さらに、二人の監督の共通点である、CM演出と映画監督という2つのフィールドで活躍していることにも話が及ぶと、プーンピリヤ監督は「タイと日本のCM界の状況はかなり似ていると思いますが、タイのほうが少しラッキーなのかなと感じます。タイのCMは少し形式が長くて最大10分の作品が撮れるチャンスがあるから、新人監督にとってその経験が後の映画作りにも活かせる状況にあります」と語った。上映後には、プーンピリヤ監督が再度登壇してティーチインが行われ、興奮冷めやらぬ観客からのたくさんの質問に真摯に受け答えた、熱い夜となった。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
9月22日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督:ナタウット・プーンピリヤ
脚本:ナタウット・プーンピリヤ タニーダ・ハンタウィーワッタナー ワスドーン・ピヤロンナ
出演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン チャーノン・サンティナトーンクン イッサヤー・ホースワン ティーラドン・スパパンピンヨー タネート・ワラークンヌクロ
配給:ザジフィルムズ、マクザム
【ストーリー】 小学生の頃からずっと成績はオールA、さらに中学時代は首席と天才的な頭脳を持つ女子高生リン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)。裕福とは言えない父子家庭で育った彼女は、その明晰な頭脳を見込まれ、晴れて進学校に特待奨学生として転入を果たす。新しい学校で最初に友人となったグレースを、リンはテストの最中に“ある方法”で救った。その噂を聞きつけたグレースの彼氏・パットは、リンに“ビジネス”をもちかけるのだった。それは、より高度な方法でカンニングを行い、答えと引き換えに代金をもらう―というもの。“リン先生”の元には瞬く間に学生たちが殺到した。リンが編み出したのは、“ピアノレッスン”方式。指の動きを暗号化して多くの生徒を高得点に導いたリンは、クラスメートから賞賛され、報酬も貯まっていく。しかし、学校が誇るもう一人の天才・生真面目なバンクとの出会いが、波乱の種に。そのビジネスの集大成として、アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試「STIC」を舞台に、最後の、最大のトリックを仕掛けようとするリンたちは、バンクを仲間に引き入れようとするが…。
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