筒井康隆の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が映画化し、12年ぶりに長塚京三が主演した映画『敵』が、2025年1月17日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルが披露された。
本作の主演には、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。“理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。
原作の筒井康隆は、文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた自身が描く老人文学の決定版である「敵」の映画化にあたり、「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました」と自身の新境地を見せる。
予告編では、妻に先立たれて20年間、ひとり余生を過ごす儀助の様子が映し出される。自ら米を研ぎ、魚を焼き、食事する。掃除をして買い出しに行き、自由で堅実な生活を送りながら「残高に見合わない長生きは悲惨だから」と話し、自ら定めたXデー(来たるべき日)に向けて淡々と人生を生きる。そんな儀助のもとに、ある日突然、“敵”が訪れる。不穏な音楽と共に映し出される、儀助の周囲の人々や亡くなったはずの妻・信子、そして皆が口々に言う “敵”。逃げ惑う儀助、そして繰り広げられる激しい銃撃戦。果たして、穏やかな日常や現実を脅かす“敵”とは。
長塚京三演じる元大学教授の儀助が、整然とした家の中で佇んでいる、モノクロのポスタービジュアル。真剣な表情と恍惚とした表情をみせる儀助の姿が重なっており、「私 そんな先生が みたかったんです」というコピーが添えられている。劇中では、亡くなった妻・信子(黒沢あすか)や大学の教え子の鷹司靖子(瀧内公美)、バーで出会う謎めいた大学生・菅井歩美(河合優実)が登場するが、果たしてこのコピーは誰による言葉なのか、またその意味とは。
『敵』
2025年1月17日(金) テアトル新宿ほか全国公開
監督・脚本:吉田大八
原作:筒井康隆「敵」
出演:長塚京三 瀧内公美 河合優実 黒沢あすか 中島歩 カトウシンスケ 髙畑遊 二瓶鮫一 髙橋洋 唯野未歩子 戸田昌宏 松永大輔 松尾諭 松尾貴史
配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ
【ストーリー】 渡辺儀助、77歳。大学教授の職を辞して10年。妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、多くの友人たちとは疎遠になったが、気の置けない僅かな友人と酒を飲み交わし、時には教え子を招いてディナーを振る舞う。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、書斎のiMacの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA