ゲイであることで母に捨てられ、16歳でホームレスになった青年を描くヒューマンドラマ『THE INSPECTION』が、邦題を『インスペクション ここで生きる』として、8月4日より公開されることが決定した。併せて、予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。
『ムーンライト』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ほか、革新的な作品を次々と送り出してきた映画会社A24。業界屈指の目利きたちが次に見出したのは、ある新鋭監督の半生を描いた実話だった。イラク戦争が長期化する2005年・アメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年。しかし、彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。
海兵隊に在職中だった20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたエレガンス・ブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験に基づく実話である本作。社会からも除外され、“透明だと思っていた”自分を癒すために映画を撮ろうと決意した監督は、「この映画で主人公が感じる欲望、恐れ、そして最終的に抱く目標まで、すべて本物です」と語る。
主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで 2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評されるアニマル・コレクティヴが担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。
予告編では、ゲイであることで母親に捨てられ、ホームレスとして生きてきた主人公・フレンチが自身の出生証明書を貰おうと母親の家を訪れるシーンから始まる。母親は、「私が産んだ“息子”として戻らないなら、この証明書は無意味よ」と吐き捨て、息子との間に分厚い心の壁があることを感じさせる。そして出生証明書を持ったフレンチが向かったのは、海兵隊のブートキャンプだった。バスから降りた瞬間、教官たちから罵声を浴びせられ、洗礼と言わんばかりに「お前は同性愛者か?」と問われるが、全く表情を変えずにフレンチは「いいえ教官!」と大きな声で答えてみせる。まさに『inspection(インスペクション)』というタイトルの通り、セクシャリティの点検を受ける様子が衝撃的に切り取られている。
監督の実体験を描く本作の舞台は、イラク戦争が長期化していた2005年のアメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレスとして過ごし、社会から除外されてきたフレンチにとって、海兵隊は生きるために選んだ唯一の道だった。罵詈雑言とともに過酷な訓練が繰り返されるその場所で、ゲイであるフレンチは教官だけでなく、本来は切磋琢磨するはずの仲間たちからも激しい差別を受け続ける。「お前のような奴がなぜここに?」と教官から問われたフレンチは、刑務所に追いやられ、命を落としていったというかつての仲間たちを想う。「外の暮らしじゃいつか死ぬ」「でも軍服姿で死ねば」「こんな俺でも誰かの英雄になれる」。涙を流し心の奥底から絞り出した一言が、彼の人生の壮絶さを感じさせる。理不尽な日々の中で自らを奮い立たせ、その場所に立ち続けるフレンチ。“自分自身であること。それだけは、誰にも変えられない”。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、周囲にどのような変化をもたらすのか?ドラマを感じさせる力強さとともに、後半で流れる主題歌「THE HANDS」が爽やかに響くエモーショナルな予告編となっている。
ポスタービジュアルは、雑踏の中で強いまなざしをこちらに向けるフレンチの姿が印象的。「自分を諦めない―」というコピーと相まって力強い意思が伝わるデザインに仕上がっている。
『インスペクション ここで生きる』
2023年8月4日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開
監督・脚本:エレガンス・ブラットン
出演:ジェレミー・ポープ ガブリエル・ユニオン ラウル・カスティーヨ マコール・ロンバルディ アーロン・ドミンゲス ボキーム・ウッドバイン
配給:ハピネットファントム・スタジオ
【ストーリー】 僕が僕のままで在るために、自分の意志でここに居る。ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送っていた青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)。どこにも居場所を許されず、自らの存在意義を追い求める彼は、生きるためのたったひとつの選択肢と信じて海兵隊への入隊を志願する。だが、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭い、さらにゲイであることが周囲に知れ渡るや否や激しい差別にさらされてしまう……。理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらもその都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。
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