イタリアの名匠が70年にわたるキャリアを経て到達した傑作!『遺灰は語る』予告編

カンヌ映画祭パルムドールやベルリン映画祭金熊賞に輝くイタリアの名匠タヴィアーニ兄弟の弟パオロ・タヴィアーニが、兄ヴィットリオの死後初めて一人で監督し、昨年のベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した『遺灰は語る』が、6月23日より公開される。このほど、予告編がお披露目となった。

映画が描くのは、あるノーベル文学賞作家の“遺灰”の旅。1934年にノーベル文学賞を受賞した文豪ルイジ・ピランデッロ、彼は死に際し、「自身の灰は故郷シチリアに」と遺言を残す。しかし、時の独裁者ムッソリーニは作家の遺灰を、その名誉を利用するためにローマに留めおいた。戦後、ようやく彼の遺灰が入った壺が、ローマからシチリアへと帰還することに。シチリア島の特使がその重要な務めを命じられるのだが、アメリカ軍の飛行機に搭乗拒否されたり、壷がどこかへ消えたり、次から次へとトラブルに見舞われる…。果たして、遺灰は無事にシチリアに届けられるのだろうか?タヴィアーニらしい熱情とユーモア、美しいモノクロ映像と鮮烈なカラー映像を織り交ぜて描かれた波乱万丈の“遺灰”の旅は、イタリアの近現代史をも語る。そして、映画の最後にはエピローグとして、ピランデッロの遺作『釘』を映像化した短編が登場、90歳を超えたタヴィアーニが運命を見つめて深い感動を残す。昨年のベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した名匠久しぶりの新作となっている。

日本でも大ヒットした名作『グッドモーニング・バビロン!』(1987)などで世界の映画ファンに愛されるイタリアのタヴィアーニ兄弟。カンヌ映画祭パルムドールに輝いた『父/パードレ・パドローネ』(1977)、『カオス・シチリア物語』(1984)、ベルリン映画祭金熊賞の『塀の中のジュリアス・シーザー』(2012)数々の傑作を発表してきた。2018年に兄ヴィットリオが88歳で死後、現在91歳の弟パオロが初めて一人で監督したのが本作となる。

予告編では、“遺灰”を運ぶ任命を受けたシチリア島特使の旅を中心に、人々が“遺灰”をめぐって右往左往する様子がユーモアを交え、美しいモノクロ映像で描かれる。『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)でアカデミー賞®作曲賞を受賞した名作曲家ニコラ・ピオヴァーニが手がける音楽の美しさも必聴。最後は、エピローグとなるピランデッロの遺作短編「釘」のカットも登場し、イギリスの映画雑誌「Screen Daily」による「ベルイマン、黒澤、ヴァルダ、オリヴェイラ…。その殿堂に仲間入りする重要な作品」というコメントで締めくくられる。

晩年だからこその自由な筆致で描きつつ、さらりと人間の運命を深く見つめる眼差し…巨匠晩年の名作に共通する素晴らしさは全ての映画ファンへの贈り物。イタリアの名匠が70年にわたるキャリアを経て到達した傑作に注目したい。

『遺灰は語る』
2023年6月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ
出演:ファブリツィオ・フェラカ ーネ マッテオ・ピッティルーティ ロベルト・ヘルリツカ(声)
配給:ムヴィオラ

【ストーリー】 “遺灰”は、無事に故郷へ辿り着けるのか?ノーベル文学賞作家の遺灰をローマからシチリアへ運ぶ、トラブルだらけの⻑い旅。イタリアの巨匠タヴィアーニ兄弟の弟、パオロ・タヴィアーニが、兄亡き後初めて発表。ユーモアと悲劇、時代と人生、愛と別れを90分に凝縮した傑作。

© Umberto Montiroli