刑務所の中での愛、別れを経て、主人公は何を求めるのか?『大いなる自由』予告編&ティザービジュアル

2021年カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞、2022年アカデミー賞 国際長編映画賞オーストリア代表作品『大いなる自由』が7月7日より公開される。このほど、予告編とティザービジュアルがお披露目となった。

Bunkamuraル・シネマの編成担当が「見過ごされてはならない映画」だとして、自社買付・初の全国配給を決めた本作は、第二次大戦後ドイツで男性同性愛※を禁ずる「刑法175条」のもと、「愛する自由」を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描いた、静かな衝撃作。
※刑法175条は男性のみを対象としており、女性同性愛については違法と明記されていなかった。

ティザービジュアルでは、自身の性的指向により何度も投獄された主人公ハンスが、独房の小窓から手を伸ばすシーンを配置。チラシの裏面には、当初はハンスを嫌悪しながらも次第に心をほどいていく長期刑受刑者のヴィクトールが通路からそのハンスを覗き込むシーンが配され、二つのシーンとチラシの表裏の関係が、刑務所の通路と扉そのものを思わせるデザインとなっている。デザインを担当したのは、ゲルハルト・リヒターやマーク・マンダース、川内倫子、牛腸茂雄など錚々たるアーティストの展覧会や作品集に関わってきたデザイナー、須山悠里。洋画のデザインを手がけるのは今回が初となる。  実物のポスター/チラシには直径2mmの小さな穴が開いている仕様(穴の位置は、ハンスが伸ばした手の指の下あたり) 。「劇中で印象的な“部屋の小さな窓” “本に穿った穴” “ミシンの針”に象徴される、微かに、あるのかどうかも分からないような自由へのアナロジーとして穴を開けたかった」とはこのアイデアを発案した須山氏の談。自由に向かって手を伸ばすかのようなハンスのまっすぐな目線が印象的なビジュアルとなった。

予告編は、主人公ハンスと、かつての恋人オスカーの幸せそうな8mmフィルムの映像と、公衆トイレで175条違反者摘発のために隠し撮られた監視カメラ映像の対比でスタートする。執行猶予なしの24カ月の実刑を受けたハンス。長期刑受刑者のヴィクトールと「まだここに?」「おまえは?まだ変態か?」と軽口を叩き合うことから、初めての投獄ではないことがわかる。何度懲罰房に送られようとも愛を諦めず、新たな関係を築こうとするハンスに「どうなるか忘れたのか」と語りかけるヴィクトール。刑務所の中での愛、そして別れを経て、ハンスは何を求めるのか?

ナチスの強制収容所から刑務所に送られた1945年、恋人オスカーと共に投獄された1957年、そして刑法改正が報じられた1968年。3つの時代を見事に演じ分けるのは、ドイツ映画界を代表する名匠クリスティアン・ペッツォルト監督作『未来を乗り換えた男』や、ドイツ映画賞主演男優賞に輝いた『希望の灯り』などで大きな印象を残した次世代スターで、ダンサー・振付師でもあるフランツ・ロゴフスキ。20余年にもわたり「愛する自由」を求め続けた男ハンスを少ない言葉と雄弁な身体で表現。本作の見どころの一つである、演技派ゲオルク・フリードリヒが演じるヴィクトールとの絶妙な距離感や、強制収容所で腕に彫られた番号を新たな刺青で上書きする印象的なシーンなど、海外メディアで「言葉はいらない。この二人がいればいい」 と称賛された、名付けようのない唯一無二の関係性も垣間見える。

また、第34回ヨーロッパ映画賞で撮影賞&作曲賞受賞をダブル受賞した本作。『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督が初期代表作でタッグを組んだ撮影監督クリステル・フルニエによる、「レンブラントの絵画のよう」と評された美しい陰影や、北欧のフューチャー・ジャズを牽引するトランペッター、ニルス・ペッター・モルヴェルによる、予告冒頭に流れるトランペットの音色にも注目したい。

『大いなる自由』
2023年7月7日(金)より、 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
監督・脚本:セバスティアン・マイゼ
共同脚本:トーマス・ライダー
出演:フランツ・ロゴフスキ ゲオルク・フリードリヒ トーマス・プレン アントン・フォン・ルケ
配給:Bunkamura

【ストーリー】 この手に自由を、消せない愛を。第二次世界大戦後のドイツ、男性同性愛を禁じた刑法175条の下、ハンスは自身の性的指向を理由に繰り返し投獄される。同房の殺人犯ヴィクトールは「175条違反者」である彼を嫌悪し遠ざけようとするが、腕に彫られた番号から、ハンスがナチスの強制収容所から直接刑務所に送られたことを知る。己を曲げず何度も懲罰房に入れられる「頑固者」ハンスと、長期の服役によって刑務所内での振る舞いを熟知しているヴィクトール。反発から始まった二人の関係は、長い年月を経て互いを尊重する絆へと変わっていく 。

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