「自己実現を目的とした欺瞞であり、ただの暴力でしかないぞ!」失われつつある心『わたしの見ている世界が全て』2023年春公開

『家族の風景』の佐近圭太郎監督が、森田想を主演に迎えて描く社会風刺エンタテインメント『わたしの見ている世界が全て』が、2023年春より公開されることが決定した。併せて特報映像がお披露目となり、佐近監督と森田よりコメントが寄せられた。

本作は、自分一人の力で生きてきたつもりの主人公・遥風が、母の死をきっかけに再会した兄弟との交流を通じて、大切なものに気づいていく物語。「個人の力で生きていくこと」がもてはやされる時代の中で、“失われつつある大事な心”を描いた社会風刺エンタテインメントとなっている。

主演を務めるのは、映画『アイスと雨音』(松井大悟監督/2018)、『タイトル拒絶』(山田佳奈監督/2020)、『朝が来る』(河瀨直美監督/2020)やNHK連続テレビ小説「エール」など数々の話題作に出演し、演技が高く評価されている森田想。森田の兄弟役に中村映里子、中崎敏、熊野善啓などの実力派俳優が揃い、複雑に揺れ動く感情を巧みに表現している。

監督は、TAMA NEW WAVE映画祭特別賞・主演男優賞などを受賞した池松壮亮主演の短編映画『家族の風景』や、小林直己(EXILE)主演短編ドラマ「アイの先にあるもの」を監督した新進気鋭の佐近圭太郎。『東京バタフライ』に続いての長編2作目となる本作だが、2022年に開催されたスペイン・マドリード国際映画祭外国映画部門にて主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、ヘアメイク賞の4つの賞にノミネートされ、主演の森田想が見事、主演女優賞を受賞する快挙を成し遂げた。そして、アメリカ南部最大級のアジア映画祭であるダラス・アジアン映画祭へも正式出品している。

また、一人でも多くの人に本作を届けたい、多くの土地で上映したいという願いを込めて、クラウドファンディングの実施がクラウドファンディングプラットフォーム「MotionGallery」にて、12月6日(火)11:00よりスタートすることも決定。エンドロールへのクレジット掲載、監督とプライベート試写会開催、関係者試写会打ち上げへの招待など、様々なリターン特典が用意されている。
詳細はMotionGalleryへ。

■森田想(熊野遥風役)コメント
本作にて熊野遥風役を演じました、森田想です。家族の話はとても繊細で、私はちょっぴり苦手です。向き合うには照れ臭く、むず痒くなったり、胸が締め付けられたり。一人でそれなりに生きているつもりでも、周りに居てくれる誰かに支えられ、自分だけを見つめている人生では気付けないことがあるのに。リハーサルや撮影を通して、くすくす心の奥でにやけてしまうほど魅力的で頼り甲斐のあるキャストの皆さんと過ごした家族としての日々、そんな皆をせっせと巻き込む遥風の猛進さは、演じていて清々しいほどでした。熊野家のそれぞれにある物語が私は大好きです。撮影期間の私がそうだったように、未熟な自分さえ受け入れ向き合う時間を、この映画を通して作って欲しい。そして差し出してくれる手を握り返せるように。監督やスタッフさんとも丁寧に作ったこの作品を、皆様のお力を借りて、一歩一歩遠くまで届けたいです。どうぞ宜しくお願いします。

■佐近圭太郎(監督)コメント
タイトルにも込めましたが、私は自分から見えている世界だけを信奉し、その他の世界への想像力がない人や、その振る舞いに対してずっと違和感を感じてきました。というより、今作の制作を通して、自分が心の奥底で抱いていた違和感に気づいた。というのが本音です。また、「何かを成し遂げるためには犠牲は必要だ」と時折耳にするフレーズがあります。これは自己犠牲の範疇ならば自由ですが、他者を巻き込んだ上で、これを前提化することは自己実現を目的とした欺瞞であり、ただの暴力でしかないぞ!という怒りに近い気持ちがふつふつと込み上げてきた結果、『わたしの見ている世界が全て』という物語が立ち上がりました。みんなが色んな思いや葛藤を抱えて日々を生きてるし、それは決して他者から簡単に見えるものではないという想いを込めた映画です。この想いを、東京のみならず、全国に暮らす人々と分かち合うことができたらこんなに嬉しいことはありません!より多くの方々に本作を届ける本プロジェクトへのご支援の輪を、皆様と共に広げさせていただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます!

『わたしの見ている世界が全て』
2023年春より公開
監督・編集:佐近圭太郎
脚本:末木はるみ 佐近圭太郎
出演:森田想 中村映里子 中崎敏 熊野善啓 松浦祐也 川瀬陽太 カトウシンスケ 小林リュージュ 堀春菜 三村和敬 新谷ゆづみ
制作・配給:Tokyo New Cinema

【ストーリー】遥風(はるか)は、家族と価値観が合わず、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれる。復讐心に燃える遥風は、自ら事業を立ち上げて見返そうとするが、資金の工面に苦戦。母の訃報をきかっけに実家に戻った遥風は、3兄妹に実家を売って現金化することを提案する。興味のない姉と、断固反対する兄と弟。野望に燃える遥風は、家族を実家から追い出すため、「家族自立化計画」を始める。

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