佐津川愛美「あたしが皆をダメにする」義父に接近し家族崩壊へ!母の狂気に戦慄!『蜜月』予告編&新場面写真

『捨てがたき人々』など、これまで社会の片隅で生きる男たちを描き定評のある榊英雄監督が、港岳彦によるオリジナル脚本を佐津川愛美主演で映画化した問題作『蜜月』の公開日が2022年3月25日に決定し、予告編と新場面写真がお披露目となった。併せて、脚本・港岳彦、音楽・和(IZUMI)、撮影・早坂伸よりコメントも寄せられた。

本作は、母親との抑圧された暮しの中で歪められた少女の幼く危うい性を描き、生ぬるい家族愛映画とは完全に一線を画したオリジナル作品。PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ヤングケアラーなどこれまで家族の問題として隠されてきた問題を、社会問題としてとらえ、家族の絆、つながりの大切さを真摯に描き出す。

予告編は、のどかな田舎にある、陶芸家の美月の夫・哲郎(永瀬正敏)の工房にいる32歳の美月(佐津川愛美)の元に、義弟・伊織(濱田龍臣)が母の死を告げに来る場面から始まる。ここから映像は、美月が高校生の頃、義父(板尾創路)と義弟と暮らし始めた頃に戻り、一見、安堵を感じるような普通の家族の食事シーンに。その後、美月と夫を見る母・五十鈴(筒井真理子)のただならぬ視線が、何かが起きていること物語り始める。「二人で逃げよう」と言う美月は、誰と何から逃げたいのか?この家族の笑顔が真実なのか?苦悩の表情が真実なのか?映像最後の包み込むようなあたたかさにあふれた哲郎の台詞「帰ろう」の一言に、か細い希望が感じられる。キャッチコピー「きみの心をひとりぼっちにしておけない」は、夫・哲郎から美月にかけられた言葉であり、台本にはない。撮影中、ふと永瀬が心に浮かんだ言葉を、監督に話したことからうまれた台詞であり、観客の心に、深く響いてくる。

新場面写真には、一家団欒、はしゃぐ母・五十鈴と父・靖男、しらける美月とその様子を気にする伊織、焼き物工房で過去におびえる美月を抱く哲郎の姿や、靖男が「家族はいいなって思ってほしいし、おれも思いたい」と口にし、美月がふいに弱さを滲ませた表情になるシーン、美月に伊織がどれだけ義母の介護で苦労したかを語る伊織の恋人・香澄(森田想)、満開の桜の下、退院した母・五十鈴について歩く美月の姿が収められる。

▼スタッフ コメント

■港岳彦(脚本)
『蜜月』は、正しくあろうと願いながらあやまちを犯してしまう人びと、つまり加害者たちの物語です。罪を犯すのは(この劇の作者を含め)いつだって男。それなのに佐津川愛美さんが身代わりとなって、重い十字架を背負います。ラスト10分、キリストを殺したものの気持ちを味わいながら、佐津川さんの演技にただ泣きました。

■和(IZUMI/音楽)
わたしは美月が嫌いだった。思いのままに、周りの人を虜にしていく美月。こんな女がいるから、他の女が迷惑する。全く知らない人のSNSに、匿名で罵倒する人間みたいな心理状態になった。思考じゃなくて感覚で生きている羨ましさ。深層心理にある寂しさを鷲掴みして、その手で誰かを抱きしめていく。あなたはどうなの?迫ってくる問いかけの波に飲まれそうになりながら、いつのまにか美月のことが忘れられなくなっていた。そんな彼女のストーリーに併走する音楽は、彼女の中に流れてるであろう、ひたすら無機質な音を追いかけてみた。そして本当の愛を受け入れた時に、彼女の音は変わるのではないか。あなたの中にいる「美月」と、この映画でどんな風に出会うのか、楽しみにしています。

■早坂伸(撮影)
この作品の撮影はシンプルさを心がけました。余計なカメラワークを一切廃し、フィックスメインで佐津川愛美さんをはじめ、演者の芝居に没頭させることを主眼にしました。狂気シーンの長回しは、自分が今まで撮影してきたなかでも最も震え立ちました。港岳彦氏の脚本世界とそれを見事に体現している役者さんたち。撮影者としてはこの上ない至福の時間でした。

『蜜月』
2022年3月25日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開
監督:榊英雄
脚本:港岳彦
出演:佐津川愛美 筒井真理子 板尾創路 濱田龍臣 森田想 永瀬正敏
配給:アークエンタテインメント

【ストーリー】 山奥の古民家。優しい陶芸家の夫と穏やかに暮らす美月(佐津川愛美)。弟が15年ぶりに現れ、母の死を告げる。封印していた家族の過去があふれ出す。愛する夫との暮らしを守るために美月は過去の黒歴史と対決する…。母親は、ある“事件”がきっかけで離婚し心にトラウマを抱える。美月は子どもながらに不安定な母を支え、母子で必死に生きてきた。母が新たな伴侶を得て、4人家族となったとき、美月は、やっと温かな居場所ができることを期待した、美しい17歳に成長していた。だが、その「女という性」に対し、母はかつての事件のトラウマから、嫌悪・嫉妬し、激しく抑圧する。美月は母への反抗心から、義父に接近する。ささやかな反抗心だったが、次第に深みにはまっていく。再び“事件”が起こり、家族が崩壊していく…。15年ぶりに故郷の実家へ戻る美月。義弟から15年間にわたる過酷な義母の介護も知らされ、その代償の重さに押しつぶされそうになる。目を背けてはいけない。夫に封印した「秘密」を告白する。その切なすぎる真実に涙する…。

©2022「蜜月」製作委員会