宮崎県⻄都市、奥日向にある銀鏡(しろみ)の里で、500年以上前から伝わる「星の神楽」を描いたドキュメンタリー『銀鏡 SHIROMI』が、2022年2月中旬に公開されることが決定した。
凍てつく冬の夜、太鼓と笛の音が山里から聞こえてくる。奥日向にある神楽の里、宮崎県西都市銀鏡(しろみ)。夜空に瞬く星のもと、500年以上前の古より伝わる「星の神楽」を舞う人々がいる。祈りは星々に住まう神々へと届けられ、宙からこぼれた物実(モノザネ)が、やがてこの地を恵みで満たす。このドキュメンタリー映画は、日本の古層に秘められた星への祈りと星のように生きる神楽の民の物語。四季をめぐり、神楽と共に生きる村人たちの「里の暮らし」をたどりながら、夜空に瞬く星々と土地に暮らす人々とのつながりを描く。
「かぐら」いう言葉は、「かみくら」が約まったものと言われ、「神蔵」や「神倉」、「神座」などと表することから、「神」という存在を招き入れ顕現を呼び起こす儀礼を指した。これに「神楽」という文字を当てるのは、日本神話で語られるアマテラスを岩戸から導き出したアメノウズメのように、その儀礼が手鈴などを使った賑やかな動きのある身体表現を用いて神を楽しませることに由来する。この神話からもわかるように神楽の目的と起源は、一年のうち最も日の短い冬至を境とした太陽の復活、そして生命力の再生を願うことにある。
銀鏡神楽(しろみかぐら)とは、銀鏡神社の例大祭に奉納される夜神楽のこと。その由来は500年以上前に遡るが、おそらく、いにしえより舞い継がれてきた神楽に、南北朝時代以降の熊野修験や、九州統一に力を注いでいた豪族の菊池の入山により、都や宮中で舞われていた舞を取り入れて発展してきたものと考えられる。
監督は、阪神淡路の震災を機に、狩猟採集や遊牧の暮らしに興味を持ち、モンゴルや北極圏など辺境への旅を始め、雑誌への写真と文の寄稿、テレビ番組の制作や公共施設での写真展やプログラム制作、国際文化交流プロジェクトのプロデュースなど活動が多岐にわたる赤阪友昭が務める。
■赤阪友昭(監督) コメント
映画『銀鏡 SHIROMI』には、二つの時間が流れている。ひとつは、銀鏡の自然に流れる悠久の時間。春の訪れを告げる山の花々、山肌を流れる清らかな水、森に住まう動物たち。山の恵みを感じながら、宙を見上げれば、夜空には星々が降りそそぎ、銀河の時間すら感じることができるだろう。そして、もうひとつは神楽の里に生きる人々の一年。限界集落の村で、柚子や唐辛子を生産し加工までを担う会社をつくることで雇用を生み出し、村に住み続けて神楽を守ろうとする銀鏡の人々がいる。彼らは20年以上にわたり、山村留学を通じて人を育て、学校を残してきてもいる。決して未来を諦めず、今という時間をひたむきに生きる彼らの暮らし、そこには自然に軸をおいた人々の謙虚で真摯な営みの時間が流れている。そんな銀鏡の里では、一年に一度、この二つの時間が邂逅するときが訪れる。それが星の神楽、「銀鏡神楽」だ。銀鏡神楽は、神々の舞を通して星への祈りを捧げる。あらゆる命の源は、星々の住まう宇宙にある。私たちの存在が、そもそも星のかけらからできているという本質を知っているかのように、銀鏡神楽は宇宙の摂理を内包している。そして、神楽の舞を捧げる銀鏡の人々は、それぞれが光り輝き、互いの関係性によって世界をつくろうと懸命に生きている。そんな彼らの生き方は、今の私たちではなく、未来の子供たちの世界がどうあってほしいのか、千年先の世界を想像して生きることの大切さを教えてくれる。
『銀鏡 SHIROMI』
2022年2月中旬 シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:赤阪友昭
撮影:古木洋平
録音:森英司
音楽:林正樹
歌:松田美緒
配給:映画「銀鏡 SHIROMI」製作委員会東京事務局
©映画「銀鏡 SHIROMI」製作委員会