田中泯「観てる人と私の間にダンスが生まれるのが理想」犬童一心監督が田中の踊りと生き様を追った『名付けようのない踊り』予告編

『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』『のぼうの城』などで知られる犬童一心監督が、世界的なダンサーとして活躍する田中泯の踊りと生き様を追った映画『名付けようのない踊り』の公開日が2022年1月28日に決定し、予告編がお披露目となった。併せて、各界著名人より、田中泯と本作についてのコメントが寄せられた。

1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現、そのダンスの公演歴は現在までに3000回を超える田中泯。映画『たそがれ清兵衛』から始まった映像作品への出演も、ハリウッドからアジアまで広がっている。そんな独自の存在であり続ける田中泯のダンスを、『メゾン・ド・ヒミコ』への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影した。同じ踊りはなく、どのジャンルにも属さない田中泯のダンスを、息がかかるほど間近に感じながら、見るものの五感を研ぎ澄ます。

予告編は、女優・田中裕子のナレーションのもと、田中泯がオイルを全身に纏いながら踊るシーンから始まり、サンタクルス、東京、パリ、福島など、各地で踊る田中泯に身を委ね、“田中泯の踊りと旅にでる高揚感”に浸る事ができる。数々の踊りの“はざま”には、43年前のパリ秋芸術祭で衝撃の海外デビューを果たした当時の写真や、世界をどよめかせた裸体での踊り、そして山村浩二のアニメーションで描かれた子供時代の記憶が現れ、誰も形容することのできない田中泯の辿ってきた道を振り返る。ぶれない生き方が徐々に紐解かれてくその瞬間、アルシオーネの「愛のサンバは永遠に」の音楽にのせて浮かび上がる「踊る身体は野良仕事で作る」の文字。野菜の香りをかぎながら農作業をする“田中泯”が顔を覗かせ、踊っている時とはまた別の表情を垣間見ることが出来る。映像最後には、本作を一足先に鑑賞した役所広司の「圧倒的な存在感の秘密が、この映画を観て少しだけ見えたような気がする。」というコメントが力強い視線と共に映し出される。“田中泯”の踊りと生き様は、どんな時代にあっても好きな事を極め、心のままに生きることの素晴らしさを気付かせてくれる。

▼著名人 コメント

■大泉洋(俳優)
泯さんという人はなんでしょうねー。もう、本質だけの人、物事の本質しかない人みたいなイメージでしょうか。薄暗い光の中、なんの音もなく、酷くゆっくりと、たまに激しく踊る泯さんを見て、何故か目が冴え、頭がすっきりする感覚になるのは、それが人間の本質を見せているからなのかなと思うのです。泯さんが会ってくれてるという事は、自分もそこそこ真面目に生きれているのかな?と思わせてくれる、そんなありがたい人です。

■岡山天音(俳優)
泯さんとご一緒したのはドラマの現場で、たったの数時間だけでした。ですが直に対面する「田中泯」という存在そのものに、心を射抜かれてしまいました。「生きる事はまだまだ面白くなる」と、この映画に映る泯さんに教えてもらった気がします。

■オダギリジョー(俳優)
泯さんに会うたびに、勝手に喝を入れてもらっている。「ぼんやり生きてないか?」「自分の身体や感覚を甘やかしていないか?」泯さんは決してそんな事は言わないが、心の中で勝手に怒られている。いや、怒られるだけじゃない。人間は生きるだけで芸術なんだと思わせてくれる。

■崎山蒼志(シンガー・ソングライター)
印象的な言葉が何度もありました。その場その場と、田中泯さんの「場踊り」の映像に息をのみます。時に体が炙り返すような、感覚的に私自身も蘇るような気持ちでした。繰り返しみたい映画です。

■笑福亭鶴瓶(落語家)
映画『たそがれ清兵衛』を見て“この人だれ?”と思ったほど印象的でそれからずっと気になってて直接お会いしたのは映画『アルキメデスの大戦』の本読みの時です。とにかくしゃべりやすくてすぐに電話番号も交換させてもらって、仲良くなりましたね。バラエティにほとんど出られないので、観ているこっち(側)が真っ白の状態で観れてどんな役もハマっているというか、しっくりくるんですよね。特に映画『いのちの停車場』の父親役と映画『HOKUSAI』の葛飾北斎は直接電話で話したくらい素晴らしかったです。こんなに真っ白の状態で観れる俳優はめずらしいですね。ほんと刺激を受けています。

■永山瑛太(俳優)
泯さんとおでん屋さんにいきました。日本酒を二人で美味しく頂きながら泯さんのお話を聞いていました。宇宙、星、光、土、生きる。呼吸、苦しみ、怒り、生きる。踊り、踊らない、静と死、生きる。泯さんとおでんと日本酒。時間は止まっていました。

■橋爪功(俳優)
泯さんから時折、野菜達が届く。就中、じゃがいもが凄い!我が家では「みんじゃが」と呼んで、敬意を表して当分の間、家の玄関に居て貰うことにしている。

■長谷川祐子(キュレーター/金沢21世紀美術館 館長)
映像で田中泯さんのさまざまな場での踊りの展開をみて、「場踊り」の意味が少しだけわかったような気がした。おそらく彼は何の予見もなくその場に立って踊り始める、場所が彼に「動きという生命」をあたえる。その生命は田中泯というヒトには属さない。「生命」はその場の空気の中に生まれて、そこにいるあらゆるもの、観客、ネコ、蚊や木々や鉄くずの気配を吸い込み、それらに自らの呼気を吹き込み、生命を共振させて、そして終わる。現れては消える生命は名前をもたないゆえに、その場を共有したものの記憶に生き続ける。

■原田マハ(作家)
その踊りは、どうしようもない焦りであり、やり場のない怒りであり、途方もない悟りであり、とめどない祈りであり、そして、結局、名付けようのない踊りである。

■美波(女優)
田中泯さんの表現を通し、私はずっと探し求めていた世界を垣間見た。演じるのではなく存在すること。物質そのものに入り込み、同化していくことなのだと。土に帰る必要がある現代、この映画はそのガイドになっている。

■宮沢りえ(女優)
泯さんから、踊ってごらんというお言葉を間に受けてしまった私はplan-Bで泯さんの目の前で、体現することになった。泯さんの眼差しとコトバで、みるみるうちに心の色んなものが剥ぎ取られて、繕うものを失って怖くなった私は、わんわん泣いてしまった。その時、「さぁ、ここからだ」と泯さんが嬉しそうな顔をした気がして、自分の中に、本当の気というマグマが湧いてくるのを感じた。この映画を観てあのplan-Bでの無我夢中の濃くて深い深い時間が浮かび上がりました。

■役所広司(俳優)
田中泯さんの圧倒的な存在感の秘密が、この映画を観て少しだけ見えたような気がする。一瞬も目が離せない踊り、彼の中で何が起こり、何が見えているのか?ゆるぎない集中力と隙の無い美しい肉体は本物の芸術品!映画に収録されている泯さんが育てたジャガイモ、味の方はどうなんだろう?

■山田洋次(映画監督)
田中泯。彼の表現と姿。その生き方すべてがアートなのだ。映画『たそがれ清兵衛』での出会いの時から、ぼくはそう思っている。

『名付けようのない踊り』
2022年1月28日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマほか全国公開
監督・脚本・エグゼクティブプロデューサー:犬童一心
アニメーション:山村浩二
音楽:上野耕路
出演:田中泯 石原淋 中村達也 大友良英 ライコー・フェリックス 松岡正剛
配給:ハピネットファントム・スタジオ

【作品概要】 1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現し、そのダンス歴は現在までに3000回を超える田中泯。映画『たそがれ清兵衛』から始まった映像作品への出演も、ハリウッドからアジアまで広がっている。40歳の時、田中泯は“畑仕事によって自らの身体を作り、その身体で踊る”ことを決めた。そして74歳、ポルトガルはサンタクルスの街角で踊り、「幸せだ」と語る姿は、どんな時代にあっても好きな事を極め、心のままに生きる素晴らしさを気付かせてくれる。そんな独自の存在であり続ける田中泯のダンスを、『メゾン・ド・ヒミコ』への出演をきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、山梨、福島などを巡りながら撮影。また、『頭山』でアカデミー賞短編アニメーション部門に日本人で初めてノミネートされた山村浩二によるアニメーションによって、田中泯のこども時代が情感豊かに点描され、ぶれない生き方が紐解かれていく。

© 2021「名付けようのない踊り」製作委員会