ジム・ジャームッシュらとともに米インディーズ界の雄として一世を風靡した、アレクサンダー・ロックウェル監督最新作『Sweet Thing(原題)』が、邦題『スウィート・シング』として10月29日より公開されることが決定した。併せて、海外版ポスタービジュアル2種がお披露目となった。
本作は、親に頼ることができず、自分たちで成⻑していかなくてはならない15歳の少女と11歳の少年の物語。子育てができない親たちという現代社会の問題を描きながらも、16ミリフィルムで撮影された美しいモノクロとパートカラーの映像は詩的で美しく、ロブ・ライナー監督作『スタンド・バイ・ミー』も彷彿とさせる子どもたちの冒険は幸福に溢れる。
スティーヴ・ブシェミ、シーモア・カッセル主演の『イン・ザ・スープ』や、クエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲスらと共同監督した『フォー・ルームス』などで知られ、ジム・ジャームッシュと並んで米インディーズ映画のアイコンであるアレクサンダー・ロックウェル。彼の日本での最後の劇場公開作は、1995年の『フォー・ルームス』。その後もスティーヴ・ブシェミ、ジェニファー・ビールス共演作『13 rooms』や日本では配信のみの『ピート・スモールズは死んだ!』など人気作はあったもののなぜか日本公開されず、ロックウェル自身がニューヨーク大学で教鞭をとっているせいで寡作になり、本作は25年ぶりの日本劇場公開作である。
主役を演じるのは、監督の実の子どもたち。姉ビリー役を娘のラナ・ロックウェル。弟ニコ役を息子のニコ・ロックウェル。実際のパートナーであるカリン・パーソンズが母親イヴを、『イン・ザ・スープ』からの盟友で、近年は『ミナリ』への出演などで活躍中のウィル・パットンが父親アダムを演じる。また、全編を彩る音楽も、本作の魅力の一つ。ヴァン・モリソンの「Sweet Thing」や、テレンス・マリック監督作『地獄の逃避行』のサウンドトラックの引用など、ロックウェルの音楽センスが光る。
本作は、2020年2月ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門にてワールドプレミア上映され、最優秀作品賞を受賞。2020年東京国際映画祭でも『愛しい存在』というタイトルで上映された。
『スウィート・シング』
10月29日(金)より、ヒューマントラスト渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
監督・脚本:アレクサンダー・ロックウェル
配給:ムヴィオラ
【ストーリー】 マサチューセッツ州・ニューベッドフォード。普段は優しいが酒のトラブルが尽きない父アダム(ウィル・パットン)と暮らす、少女ビリー(ラナ・ロックウェル)と弟ニコ(ニコ・ロックウェル)。ある日、父アダムが強制的な入院措置となり、身寄りのないビリーとニコは、家を出て行った母親イヴ(カリン・パーソンズ)のもとへ行くのだが…。子どもたちの、悲しいけれどどこか希望に満ちた、ひとときの冒険が始まる。