ソ連全体主義社会のその後を描く『DAU. ナターシャ』の第2弾『DAU. Degeneration(原題)』今夏公開!

映画史上初の試みともいえる異次元レベルの構想と高い芸術性が評価され、第70回ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した映画『DAU. ナターシャ』。その第2弾でソ連全体主義社会のその後の世界を描く『DAU. Degeneration(原題)』が今夏公開されることが決定した。

ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは、処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴びると、「史上最も狂った映画撮影」と呼ばれた「DAU」プロジェクトに着手。それは、いまや忘れられつつあるソヴィエト連邦の記憶を呼び起こすために、ソ連全体主義の社会を完全に再現するという前代未聞の試みだった。ウクライナの大都市で、かつてはソ連の重要な知性・創造性の中心地でもあったハリコフに欧州史上最大の1万2千平米もの秘密研究所のセットを作り、実にオーディション人数約40万人、衣装4万着、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40ヶ月、撮影ピリオドごとに異なる時間軸、35mmフィルム撮影のフッテージ700時間という莫大な費用と15年以上もの歳月をかけて「DAU」の世界が作り上げられた。

この途方もないプロジェクトの劇場映画第1弾として完成した『DAU. ナターシャ』がコンペティション部門で上映された第70回ベルリン映画祭の別部門で上映されたのが、本作『DAU. Degeneration』。なんと6時間にも及ぶ大長編であり、『DAU. ナターシャ』が描き出したスターリン体制下の1952年から10年以上が経過した1966年から1968年が舞台となる。

タイトルの“Degeneration(荒廃)”が示すように、キューバ危機の後、フルシチョフ時代を経て、この時期はスターリンが築き上げた強固な全体主義社会の理想は崩れはじめ、人々は西欧文化にも親しむようになっている。

前作ではカフェのウェイトレスであるナターシャの視点で閉鎖的かつ断片的に描かれた秘密研究所だが、本作では一転、カメラは研究所内部に入り込み、人間たちの生活をつぶさに映し出していく。そこでは、年老いた天才科学者レン・ダウの下、科学者たちが“超人”を作る奇妙な実験を繰り返していた…。前作の主人公ナターシャに壮絶な拷問を行ったKGB捜査官のウラジーミル・アジッポが、本作では少将へと出世を果たし、メインキャストに。研究所所長のアレクセイ・ブリノフやナターシャのカフェの同僚だったオーリャも登場するが、彼女は逮捕され収容所に入ったナターシャの代わりに店を取りしきる立場となっている。また国内外の著名なアーティストや研究者たちが参加していることでも知られる本プロジェクトだが、本作にはユーゴスラビア出身のパフォーマンス・アーティストであるマリーナ・アブラモヴィッチも参加している。

『DAU. Degeneration(原題)』
2021年夏、シアター・イメージフォーラム他にて限定公開
監督・脚本:イリヤ・フルジャノフスキー イリヤ・ペルミャコフ
出演:ウラジーミル・アジッポ ドミトリー・カレージン オリガ・シカバルニャ アレクセイ・ブリノフ
配給:トランスフォーマー

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