第12回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門及びアメリカのThe Philip K Dick Science Fiction Film Festivalに正式上映され、日本芸術センター主催の第10回映像グランプリでは優秀映画賞を受賞した、吉田龍一主演映画『メカニカル・テレパシー』が、10月9日より公開される。このほど、本作の予告編と新場面写真がお披露目となり、併せて、キャストの申芳夫と伊吹葵よりコメントが寄せられた。
本作は、「もしも心を可視化できたら?」という着想から始まり、SF的要素と恋愛感情を掛け合わせ、観客の認識を静かに揺らす、不思議な“心”の恋愛映画。
ある大学の研究室で、「心を可視化する機械」の開発が行われていたが、実験中に事故が起こり、開発者の三島草一(申芳夫)が意識不明のまま目覚めなくなる。共同研究者で草一の妻の碧(白河奈々未)は開発を続け、草一の心の可視化を試みていた。成果を出さない開発を疎ましく思う大学側は、機械の調査という名目で、真崎トオル(吉田龍一)を研究室に送り込む。可視化された草一を目の当たりにする真崎。果たして、真崎が目にした人物は、可視化された草一の心なのか、碧の願望が可視化されたのか?徐々に碧に惹かれていく真崎は、本当に重要なことは何なのかということに気づいていく。
■申芳夫(草一役) コメント
物覚えの悪い僕が本作品の記憶として残しているものを集めてみると、自分にとってごく個人的に身体に残る感覚のようで、整理された言葉にするのは難しいです。例えば、五十嵐監督の誠実に作品にむかう顔。脚本の練り直しのために毎夜パソコンに座る姿と横に置かれたビタミン剤。それに呼応するかのように撮影部さんや制作部さんが夢中になってひりひりと仕事を積み重ねていく時の背中。俳優さんたちのふとした時に聞かせてくれた、静かだけど意志のある声、こちらも嬉しくなるような弾む声、楽しさの中に優しさをはらんだ声。僕はただ、映画という作品作りに向き合えることに子供みたいに幸せを感じていました。そういった諸々の「多様な層」が、少しでも作品に反映されて届けばと祈るような気持ちです。草一という役をいただいた時「人のありようの変化を描くのが劇映画のひとつの要素とするなら、彼はそこから少し外れた立場なのかも」と、考えてしまった気がします。草一は色んな意味で、囚われている、留まり漂っている、それは誰でもあって誰でもない。でも、改めて考えてみると人は皆そういった部分があるのかもしれません。家族の前の「わたし」、恋人の前の「わたし」、友人の前の「わたし」、独りの時の「わたし」は、果たして地続きの同一人物といえるのでしょうか。「わたし」の目に映る「大事なあの人」も、どんなにわかり合っているつもりでもやはり「わたし」ではなく「他者」なのです。さらに、どうやら「わたしの中」にも「他者」が存在しているのが人間なのかもしれません。そうなると何が本当で何が本当ではないのでしょう。そもそも僕たちは色んな事柄に「本当だ。本当ではない」と、簡単な断言をしてしまっていいのでしょうか。草一は、どう考えているのか。その心の機微は登場人物たちの声の肌理(きめ)に出ているのかもしれません。もしよろしければスクリーンの前でお会いできたら幸いです。
■伊吹葵(アスミ役) コメント
この作品は私にとって初めての映画出演作品です。2017年の大阪アジアン映画祭で初めて上映された時、沢山の方が上映後すぐに感想を言ってくださった事がとても印象に残っています。アスミは大人しい性格で波風を立てるようなことはあまりしませんが、実は鋭敏で強い意思を持っている女性だと思っています。真崎先生が研究室に来たことをきっかけに“人の心”についての捉え方が変わっていくのですが、私自身、アスミの言葉に何度もはっとさせられました。もしも人の心が見えたら…誰もが一度は想像した事があると思います。この作品を見て皆さんが何を感じるのかとても楽しみです。
『メカニカル・テレパシー』
10月9日(金)より、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:五十嵐皓子
出演:吉田龍一 白河奈々未 申芳夫 伊吹葵 青山雪菜 石田清志郎 時光陸 松井綾香 長尾理世 竹中博文
声の出演:古内啓子
配給:アルミード
【ストーリー】 ある大学の研究室で、「心を可視化する機械」の開発が行われていたが、実験中に事故が起こり、開発者の三島草一(申芳夫)が意識不明のまま目覚めなくなる。共同研究者で草一の妻の碧(白河奈々未)は開発を続け、草一の心の可視化を試みていた。成果を出さない開発を疎ましく思う大学側は、機械の調査という名目で、真崎トオル(吉田龍一)を研究室に送り込む。可視化された草一を目の当たりにする真崎。果たして、真崎が目にした人物は、可視化された草一の心なのか、碧の願望が可視化されたのか?徐々に碧に惹かれていく真崎は、本当に重要なことは何なのかということに気づいていく。
© Akiko Igarashi