32歳で命を絶った“非正規歌人”萩原慎一郎による歌集を、水川あさみ主演、浅香航大、寄川歌太共演で映画化する『滑走路』が、11月に公開される。このほど、本作の予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。
本作は、自らの経験をテーマに短歌を発表し続けた萩原慎一郎の初の歌集にして遺作となった「滑走路」をモチーフにオリジナルストーリーとして脚本化。30代後半に差し掛かり将来への不安を抱える切り絵作家の翠、非正規雇用問題に向き合いつつ自らも過重労働に苛まれる厚生労働省の若手官僚・鷹野、幼馴染をかばったことでいじめの標的にされてしまう中学2年生の学級委員長。3つの物語が絡まり合い、現代を生きる若い世代が、不安や葛藤を抱えながらも希望を求めてもがき生きる姿を鮮烈に描き出す。
厚生労働省で非正規雇用問題に取り組む若手官僚の鷹野(浅香航大)は、激務に追われる中、仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。30代後半に差し掛かり、将来的なキャリアと社会不安に悩まされていた切り絵作家の翠(水川あさみ)は、子どもを欲する自身の想いを自覚しつつも、高校の美術教師である夫との関係に違和感を感じていた。幼馴染を助けたことをきっかけに自分がいじめの標的になってしまった中学2年生の学級委員長(寄川歌太)。攻撃が苛烈さを増す中、シングルマザーの母に心配をかけまいと、一人で問題を抱え込んでいた…。
予告編では、まったくバラバラな3人の人生が、一人の人物の死をめぐり交錯していくさまが収められる。様々な障壁と対峙し、行き場のない“心の叫び”を抱えるそれぞれの登場人物たちだが、「あの日、あなたの言葉が生きる翼をくれた」というナレーションが示唆するように、一筋の光を予感させるラストになっている。そして、最後に映し出されるのは「きみのため用意されたる滑走路 きみは翼を手にすればいい」という、原作歌集におさめられた一首。タイトルの由来を想起させるこの歌は、ポスタービジュアルに配された青空を翔ける1機の飛行機とも呼応し、「魂の叫び」と「希望」を感じさせる。また、Sano ibukiが本作のために書き下ろした主題歌「紙飛行機」も初披露される。映画と歌集の雰囲気に優しく寄り添う歌詞とメロディが胸を打つ本楽曲が、エモーショナルな映像をより盛り上げる。
併せて、原作の「歌集 滑走路」の文庫版と、映画を元に書き下ろされた小説版が、9月24日より発売されることが決定した。文庫版には、NHK「クローズアップ現代+」で「歌集 滑走路」を激賞した、お笑い芸人・小説家の又吉直樹による解説も新たに収録。小説版の著者は、連続ドラマ化された「今からあなたを脅迫します」シリーズでも知られる新鋭作家の藤石波矢。映画のストーリーをもとに、オリジナル要素も加え仕上げた、原作の歌集に収録された数々の歌へのオマージュも要所に感じられる小説となっている。
『滑走路』
11月 全国ロードショー
監督:大庭功睦
原作:萩原慎一郎「歌集 滑走路」
脚本:桑村さや香
出演:水川あさみ 浅香航大 寄川歌太 木下渓 池田優斗 吉村界人 染谷将太 水橋研二 坂井真紀
配給:KADOKAWA
【ストーリー】 厚生労働省で働く若手官僚の鷹野(浅香航大)は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ追及を受けた鷹野は、そのリストの中から自分と同じ25歳で自死した青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始めるが…。
©2020「滑走路」製作委員会