【ロマンポルノ】『ANTIPORNO』園子温監督「オファーされた際に一度断った」

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園子温監督が、28年ぶりに復活するロマンポルノに挑んだ最新作『ANTIPORNO』がプロジェクト第4弾として、1月28日(土)に新宿武蔵野館にて公開。同日に初日舞台挨拶が行われ、出演キャストの冨手麻妙、筒井真理子、園子温監督が登壇した。

本作は、2016年で製作開始から45周年を迎えた、日活ロマンポルノリブートプロジェクトの一環で製作された作品で、園子温監督のほか、塩田明彦監督、白石和彌監督、中田秀夫監督、行定勲監督ら第一線で活躍する監督陣が、完全オリジナルの新作を28年ぶりに撮りおろすことでも注目され、第1弾『ジムノペディに乱れる』、第2弾『風に濡れた女』、第3弾『牝猫たち』が公開しており、雪だるま式に客足が増え好調な動員となっている。

冨手は「(今日の舞台挨拶をむかえ)緊張しすぎて私が演じた京子みたいに、吐きそうでした」と緊張気味で挨拶。筒井は「本日は数ある作品の中でこの作品を選んで頂きありがとうございます」とコメントし、満席の客席のなかで舞台挨拶がスタート。園監督は本作について「久しぶりに自分を出し切れた作品」と言うもの、じつはオファーされた際に一度断ったというエピソードを語った。「日活ロマンポルノはよく見ていましたが、当時は成人映画館に行く意味があったんです。現代でポルノ自体に意味がないと思ったので、“アンチ”ポルノだったらできると言ったら、それがきっかけになって企画がうごきました。(ロマンポルノのルールはあったが)ルールも気にならないぐらい、自由に作品が作れたのでとても楽しかったです」と語った。

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“鬼才”と呼ばれる園子温監督の作品で念願の主演を射止めた冨手は「監督が思う以上のものを出さなければいけないプレッシャーで、毎日緊張していました。でも完成した作品を見て監督が『この作品は愛の結晶』 と言ってくれてすごくうれしかったんです。私も監督の愛がこもった作品になったと思っていたので。こういうこと言うとネットに『園子温のおんな!』とか書かれちゃうかもしれないけど、そんな浅いところではなくもっと深いところで感動しました。おばあちゃんになっても監督の映画に出ていたいです」と感動を露わに。

筒井は「園監督にぜひ出演してほしいと言われて、脚本を読んだんです。本編のラストに素晴らしいセリフがあって、このセリフを引き受けないと役者としてだめだと思ったので参加させて頂きました。以前に共演したことのある白川和子さんに電話して、今回のプロジェクトに出演するお話しをしたらすごく喜んでくれました」と喜びを語った。

ムチ打ちや、ビンタといったハードなシーンの多い本作、一番きつかったシーンを聞かれ、冨手さんは「絵具が天井から降ってくるシーンがあって、それが大変でした。かなりの高さから絵具を落とすので痛いんですよね。そんななか監督が、『くるくる回って大声で笑え!』とか言うんです。体中の穴と言う穴から絵具が入ってきてしまって、撮影後1週間ぐらいは鼻水とか涙がカラフルになりました」と壮絶な撮影エピソードを披露。絵具シーンはもちろんのこと、ビビッドな色合いの撮影セットにも監督のこだわりが大きく出た本作に関して筒井は「園監督の頭の中を歩いているような作品ということもあって、どれだけ監督の思い描くものを演じられるか不安でした。でもセットが素晴らしくて、セットに入った瞬間一気に役には入れ込めました」と語った。

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また、本作のタイトル『ANTIPORNO』にかけて「今一番アンチしたいものは?」という質問に、筒井は「私はアンチ<多様性を認めない>です。多様性のある様々な文化や思想を受け入れていきたい」とコメント。最後に園監督が「僕はアンチ<タバコ>です。今まで150回ぐらい禁煙をして、すべて約束を破ってきました。おととい禁煙外来に行って、また禁煙の約束をしてきたのでここで禁煙宣言します」と映画とはまったく関係ない宣言をして、笑いを誘った。

最後に本作について監督から「今回の『ANTIPORNO』のように自由な作品を監督することができてとてもうれしく思います。こういう作品をお客さんが選んでくれたら、日本映画に多様性のある作品がもっと出てくるので、もっと日本映画界が面白くなるはずです」とコメントし、冨手さんは「この作品は女優人生のスタートラインに立てた作品です。女性の裸が消費されている世の中で、園監督が私の裸を消費されない作品にしてくれました」とコメントし舞台挨拶は終了した。

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