ミラノ国際映画祭にて最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀男優賞をダブル受賞した、児童虐待をテーマとした上西雄大監督・主演の映画『ひとくず』が、3月14日より公開される。このほど、本作の予告編と場面写真がお披露目となり、併せて、キャストの小南希良梨、古川藍、徳竹未夏よりコメントが寄せられた。
子供時代に母親の男から虐待されて育ち、夢も希望もなく暮らす男が空き巣に入った家で出会ったのは、同じく母親の男から虐待され、育児放棄されている小学生の女の子だった。初めて守るべきものができた男は、少女の母親も、親の愛を受けずに育ったと気づき…。
■小南希良梨(育児放棄される子ども・鞠役) コメント
鞠ちゃんという女の子は、いつも家の中で一人でいてさみしい思いをしている役なので、どんな気持ちで過ごしてたのかなと考えました。あとはその気持ちを表情で現せられるように心がけました。撮影現場では藍さんと出番がない時は色んなお話しをして楽しかったですし、上西監督は『ひとくず』のお話の中でも鞠に優しくしてくれる役ですが、撮影以外でも優しくて、たくさん話しかけてくれたり面白い事を言ったりしてくれて、撮影に行くのが楽しかったです。
■古川藍(鞠を育児放棄する母親・凜役) コメント
育児放棄をする気持ち、我が子への愛情表現の仕方がわからない、駄目な男の側じゃないと不安になる…自分自身とかけ離れた凛を表現するのはとても難しかったです。凛の生きてきた世界を表せば表す程、ふと、こんな人が本当にいるのだろうか…と首を傾げる事が多かったです。難しい心の動きを表現する事を意識し、撮影に臨んでいました。初共演だった鞠役の小南希良梨ちゃんは、お芝居する事が楽しいと言っていて、その真っ直ぐな気持ちをそばで見ていて私もとても刺激を受けました。そして、主演、脚本、監督の上西さんにはこの『ひとくず』で凛役をさせて頂けた事をとても感謝しています。上西さんとは今までにも何作も共に映画を制作してきましたが、常に役者目線で難しい表現もわかりやすく伝えて下さり、カネマサと凛の芝居も丁寧に撮影してくださってリラックスした状態で挑む事が出来ました。上西さんがいなければ、『ひとくず』も生まれていないし、恵まれた環境でお芝居をする事が出来て幸せです。この作品は虐待という重たいテーマを取り扱っていますが、辛く悲しいだけじゃなく、『ひとくず』の世界の中で生きる人の様々なドラマを描いているので、クスっと笑える場面もありますし、親子の愛を感じる場面もあり、温かい気持ちになって頂けたら…またこの作品を観て今増えている虐待に少しでも何かを感じてもらえたら…と願っております。
■徳竹未夏(恋人が息子に暴力を振るうことを黙認する主人公、金田の母親・佳代役) コメント
カネマサを作り上げる基盤の一つになった母、金田佳代。只の酷い母親ということだけではなく、彼女もまた、無意識下で葛藤の様なものを持っていることが表現できるよう気をつけました。何度か出てくるタバコを吸うシーンは、普段タバコを吸わないので、鏡の前で違和感がなくなるまで、気持ちを乗せてタバコを吸う仕草を、練習しました。高校生になった匡郎(まさお)に殺人させてしまった時は、無意識下の葛藤に立ち向かえた所だと思います。だから、匡郎にとって、母親と感じられる一面になったのではないでしょうか。映画製作時、10ANTSメンバーは、役者とスタッフを兼任して制作をします。劇中に出てくる鞠と凛の部屋は、私の住まいなのですが、冒頭のゴミ屋敷を準備しているスタッフ(私を含め)に、鞠の生活を考えた上で、どんな風にゴミが散乱していくのかを考えて導線を作るよう指示がありました。今考えると、その行程は役者ならではな気もします。10ANTSは、監督が俳優であるお陰で、役者が演じやすい進め方になっているのではないかと感じます。お芝居に重点を置いているからこそ、観ている人をどんどん作品に引き込んで行くのだと思います。『ひとくず』という作品を通して児童虐待に関心を持っていただき、少しでも、救われる命のあることを祈っております。
『ひとくず』
3月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大
出演:上西雄大 小南希良梨 古川藍 徳竹未夏 城明男 税所篤彦 川合敏之 椿鮒子 空田浩志 中里ひろみ 谷しげる 星川桂 美咲 西川莉子 中谷昌代 上村ゆきえ 工藤俊作 堀田眞三 飯島大介 田中要次 木下ほうか
配給:渋谷プロダクション
【ストーリー】 生まれてからずっと虐待される日々が続く少女・鞠(小南希良梨)。食べる物もなく、電気もガスも止められている家に置き去りにされた鞠のもとへ、犯罪を重ねる破綻者の男・金田(上西雄大)が空き巣に入る。幼い頃に虐待を受けていた金田は、鞠の姿に、自分を重ね、社会からは外れた方法で彼女を救おうと動き出す。そして、鞠の母である凜(古川藍)の恋人から鞠が虐待を受けていることを知る。虐待されつつも母親を愛する鞠。鞠が虐待されていると確信した担任教諭は、児童相談所職員を連れてやって来るが、鞠は母の元を離れようとせず、保護する事ができずにいた。金田は鞠を救うため虐待をする凜の恋人を殺してしまう。凜を力ずくで、母親にさせようとする金田。しかし、凜もまた、虐待の過去を持ち、子供の愛し方が分からないでいた。そんな3人が不器用ながらも共に暮らし、“家族”の温かさを感じ本物の“家族”へと近付いていくが…。
©上西雄大