【全起こし】永瀬正敏、岩田剛典、森山未來が再会したい大切な人を告白!映画『Vision』上映会付き完成披露イベントレポート 全文掲載

MC:森山さんは、河瀬組に入って何か特別なこととか、印象に残っていることはありますか?

森山:三日間の撮影で、台本が前半後半あって、後半だけ渡されて(笑)。その時には僕の役名もなく、とりあえず吉野に来いみたいな感じになって、話し合って「岳でいくか」みたいなノリで名前も決まって(笑)。その攻め具合が最初の印象で好きだったのと、吉野の山も影響していると思うんですけど、森の密度が高い気がしたんですよね。他で見ている山と比べて。猟師でもあったし、山守も兼任している役柄ではあったので、山のことも教えてもらって、吉野の樹林は木が多く密度が高いと教えてもらったんですけども、それだけじゃない妖気じゃないけど、何かがにじみ出ている感じがあって。そのエネルギーに圧倒されて、そこに没入していく感覚と、河瀬さんの現場を巻き込んでいく、呪術師のようなニュアンスが良かったですね。たった三日間だったんですけど、催眠術にかけられたような(笑)。帰りの奈良の方から大阪に戻っていく道すがらで、「俺は幻覚を見ていたんじゃないか?」と思うような、そんな気分にさせられていましたね。不思議体験でした(笑)。

河瀬:未來くんが吉野に入ってきてくれて、そこに入り込むまでの時間がすごく短くて、山に入った日は雨で「傘いる?」って気を使って言ったら、「もういらない」と言って皆んなで傘も持たずに雨の山の中に入っていって、このまま迷い込んじゃうんじゃないかという霧の中を入っていったというのも、すごくいい体験だったかな。今、目の前にあるものに、ちゃんと反応していないと、どっかに連れて行かれるからというような。そんな感じでしたよね。

森山:でも、その時はただ見に行こうという時間だったはずなのに、もう撮ってましたよね?

河瀬:おかげさまで、撮らせていただきました(笑)。

MC:ありがとうございます(笑)。奈良県の吉野町で撮影されましたけど、歴史的な発見がニュースであったということで。奈良時代のものとみられる大型の建物の跡で、東大寺の大仏を建立した聖武天皇や女性の持統天皇が度々訪れたと伝えられている吉野離宮の中心的な建物、正殿の跡ではないかとみられているそうです。これが撮影地の近くだったということで、これも不思議な組み合わせですよね。

河瀬:アクセスしちゃったんでしょうね。そこに(笑)。

永瀬:呪術師ですから。

河瀬:二千年前の人たちが、何かを言ってきてくれているなみたいな。そんな感じがする体験がいっぱいあって、メインビジュアルにもなってますが、踊ってるような木があるんですけど、そこに皆んなが寄ってきてますよね。吸い寄せられるように来て、映画を撮ったところから離宮の発掘調査が始まったんだって。昭和の初期ぐらいからやってたのに、今見つかった。なんで今年なんだということもあるし。私たちが撮っていたその場所は、離宮が移される飛鳥から吉野へ行く途中の道なんです。細峠という集落があるんですけど、そこを中心に撮っていて、そこの石碑のところにも「むらあと」と刻まれている。気配が濃い場所で、そこに皆んなが引き寄せられていくので…。アクセスしました(笑)。

MC:縁を感じるお話ですが、本作『Vision』なんですけど、河瀬監督の今後のビジョンはどう考えていますか?

河瀬:この字は私が書きました。上手でしょ。なんか降りてくるんですけどね。タイトルも含めて。自分たちの眼差しの向こうとか、未来とか、その扉とか、そういうことってどういう形をしているか分からないんですけど、そういうものを持って一歩を踏み出そうと。だから何かは見つかる。でもそこは自分の中にきっとあるという。そんな感じがしています。