【全文掲載】加賀まりこ「次の作品は重要ですよ」、塚地武雅「『桜切るバカ』作るしかない」『梅切らぬバカ』監督にエール!

MC:加賀さんは、衣装にもこだわられたという話も聞きましたが。

加賀:はい、ヨレヨレのかっぽう着は、衣装さん用意してくださるとどうしても新しいものになりがちなので、用意していただいたかっぽう着とか手ぬぐいとかは、家へ持って帰って実際に使ってました。

和島:最初、加賀さんにかっぽう着のイメージがなくて。どうなんだろうと思って、衣装合わせの日に見させていただいたらすごく似合ってたので、それはとても安心しました(笑)。

加賀:プロだから~(笑)。

塚地:加賀さんはお綺麗ですし、貫禄もあって…、ちょっとそっち見れない感じですけど(笑)。あの、そんな加賀さんですけど、現場に入られるときはラフな格好で来られるんですが、とはいえオーラが溢れてるし、品も溢れてるんで加賀さんだと分かるんですけど、この役に入って本当にかっぽう着を着られて古民家の中にいたり庭先で本番が始まるのを待っている姿は、近所の人が見に来たんかなと思うぐらい馴染んじゃって。もう庶民的なお母さんって感じになってるのに驚きました。

加賀:プロ、プロ(笑)。

塚地:プロですね~(笑)。恐らく加賀さん、プロですよ(笑)。

MC:監督がこだわられた点というのはどんなところにありますか?

和島:本当にすべての部分で日常をとても大切にしていたので、偽りに見えないようにというのはもちろんあるんですけれども、やっぱりすべてのスタッフが珠子と忠さんの暮らしに寄り添ってくださって、小道具ひとつであったり、メインの古民家の中の作りであったり、梅の木であったりとか、全部そこに馴染んでいるように、どうすれば馴染むのかをすごく一人一人が想像力を働かせて寄り添ってくださっていて。忠さんが髪を切ってもらっているところで、ケープをつけてるんですけれども、あれが家の子供と全く一緒で、きっとすごく考えてあれを選んでくださったんだろうなあと思いました。一人一人のスタッフが本当に大切にしてくださっていて、自分は「はい、これで。はい、これで」と言っていただけで、本当にスタッフに救われているところがあります。

MC:加賀さん、撮影現場はどんな感じでいらっしゃいました?

加賀:たった2週間で撮らなきゃいけないという縛りもありましたし、それはきついスケジュールでしたけど、私たちが住んでいる空間、そして主役の梅の木が本当にいいんです。どういう形で出てくるか楽しみに観て下さい。私はできる限り自分が使って便利なステッキとか、爪切りとかメガネとか、いろんなものを持ち込んで、それなりに生活感を考えたんですけど、でもそれ以上に美術の人たちは素晴らしかったですね。

MC:塚地さん、梅の木が重要なものになっていると思いますが?

塚地:物語としても重要ですし、あそこに住んでいる上でのなんていうんでしょうね…、ネタバレになるんでやめておきましょうか(笑)。忠さんにとってもすごく大事な木になってますし、家庭内のシーンみたいなのが出てくるのですが、僕はルーティーンをこなして、そこに加賀さんが言葉をかけてくれたり寄り添ってくれたり、ミスをフォローしてくれたりというような1日の風景っていうのは、本当に何も示し合わせたわけではなく、僕はただただ起きて、何かをするのに全部加賀さんがフォローしてくれて、ただただ僕が暮らしてたシーンみたいになってるので、そのシーンを見ていただけたら、この2人の親子はこういう毎日を過ごしてきたんだなというふうにも思ってもらえる、特別でもない普通の1日みたいなのが重なっているという風に思えるんじゃないかなと思うので、本当にあの古民家は素敵なお家でした。

MC:加賀さんは、あの古民家のシーンで意識されたことはありましたか?

加賀:本当に狭い空間でしたので、ちょっと大きめの息子と上手にすれ違ったりするのがね(笑)。でも本当に打ち合わせ無しに上手くいきましたね。

塚地:加賀さんが全部してくれるから(笑)。

加賀:いやいや、でもリハーサルなしでスムースにいったので、自分たちのほうが驚きましたよ。

塚地:なんならNGかなって思うようなこともたくさんあるんですけど、それが日常として「絶対あるよね」って感じだったので、そこも観ていただけたら、本当にこの二人の日常なんだなって思えるんじゃないかなと思います。

MC:監督は、これから第2作、第3作とおありかと思うんですけど、加賀さんからは監督はどのように見えていらっしゃいます?

加賀:ネクストですよ(笑)。大事なのは次。これだけいろいろ皆さんに観ていただいたらね、みんな期待するから。次の作品は重要ですよ~。プレッシャーかけてるけど(笑)。

塚地:「桜切るバカ」作るしかないですよ(笑)。

和島:ありがとうございます(笑)。

MC:監督も加賀さんと塚地さんから学ぶこともあったとお聞きしましたが。

和島:そうですね。一番学んだのは基本の基本だと思うんですけれども、真正面から向き合うということですね。加賀さんが作品のためにものすごく正直な自分の気持ちをダイレクトに伝えてくださって。自分は真正面に向いて受け止めないといけないと。少しでも逃げたような向き合い方をすると、信頼関係が壊れてしまうということは、ずっと意識していて。加賀さんにはどう見えていたか分からないですけど、自分なりに精一杯加賀さんと向き合って、加賀さんの作品に対する愛情というものを映画の中に溶け込ませていくというか、それをとても大切にしました。塚地さんは、忠さんみたいなところがあって、全身で現場の空気を感じ取っている方ですね。見えないところにいる方の心の動きとかも感じ取っているところがあるんですね。自分はモニターばっかりに集中して周りが見えなくなる時があるんですけれども、そういう時に客観的になって周りを見て、監督として現場を指揮していくのがとても大切なことであるということを塚地さんのお仕事を通して学びました。