加賀まりこ「“生まれてきてくれてありがとう”の想いを全編に散りばめて」重要シーンの制作秘話!『梅切らぬバカ』

加賀まりこが54年ぶりに主演し、塚地武雅と親子役で初共演を果たした『梅切らぬバカ』が、11月12日より公開される。このほど、加賀まりこが提案したとある重要なシーンについての制作秘話が明かされ、併せて、新場面写真がお披露目となった。

『浅田家!』の中野量太監督、『水曜日が消えた』の吉野耕平監督などを輩出し、これまで日本映画の若手映画作家を育ててきた「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の長編映画として選出・製作された本作。監督・脚本は過去に短編『第三の肌』でも「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に選出された映画作家・和島香太郎。ドキュメンタリー映画にも関わり、障害者の住まいの問題に接してきた。本作では、老いた母親と自閉症の息子が地域コミュニティとの交流を通じ、自立の道を模索する様を描く。障害者への偏見や無意識の差別などの問題を真正面から描きつつも、母と子の揺るぎない絆と、共生への希望、日常の尊さといった温もりを感じさせる稀有な作品となった。

本作は脚本の執筆段階から加賀まりこが深く関わり、和島香太郎監督とともに作り上げてきた。その監督とのやり取りの中で生まれたある重要なシーンについて、監督と加賀が撮影後に本音を明かした。劇中で珠子(加賀まりこ)が、息子・忠男(塚地武雅)を抱きしめて「ありがとう」と言うシーンがあるが、実はこのシーンは当初シナリオにはなかった。加賀は「脚本に関して、監督にただひとつ“生まれてきてくれて、ありがとう”の想いを、全編に散りばめてほしいとお願いしたんです。それで実際に“ありがとう”というセリフも加えてもらいました」と話す。一方、監督は「加賀さんに息子に“ありがとう”と伝えたいと言われて、はじめは珠子がそんなことを言うだろうかと半信半疑で迷っていました。しかし、実際に女手一つで自閉症の息子さんを育ててきた方にシナリオを読んで頂き感想をお伺いしたら、一言でいいから“ありがとう”という言葉があるといいなと加賀さんと同じことをおっしゃいました。加賀さんは自分よりもずっと深く、母親としての立場や思いを考えてくださっていたと思いました」と振り返る。加賀はこのシーンに特別な思い入れがあったようで、「もっと他の言い方ができたかなって考えたり、何か心残りがあったのか、撮影後にも繰り返し夢の中で演じていました。それだけ大切な台詞だったんだなと思います」と明かした。

場面写真は、忠男への想いが溢れた珠子の表情が胸に迫る。

『梅切らぬバカ』
11月12日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開
監督・脚本:和島香太郎
出演:加賀まりこ 塚地武雅 渡辺いっけい 森口瑤子 斎藤汰鷹 林家正蔵 高島礼子
配給:ハピネットファントム・スタジオ

【ストーリー】 山田珠子(加賀まりこ)は、息子・忠男(塚地武雅)と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが…。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト