【全文掲載】加賀まりこ「分厚かったねえ。驚きました!」塚地武雅の“奥行き”は計算外だった!?

MC:加賀さん、あの言葉は、個人的も良かったと思いますが。

加賀:あって良かったですよね(笑)。頑固な監督が、やっと納得してくださったのが、台本いただいてからだいぶ経ってからでしたけどね。どなたかと会ったんですよね? 自閉症のお子さんを持つ親御さんにお会いしたら、私と同じことを言ってたのよね?

和島:「このシナリオには『ありがとう』という言葉がないんですね」と言われて、加賀さんがそうおっしゃってることはお伝えしてなかったんですけど、加賀さんと同じことを言われて、そこが欠けているところなのかなと気付かされて。加賀さんには「やっと納得したんだね」と言われました(笑)。

塚地:加賀さんに言われた段階では納得してなかったんですね(笑)。

加賀:私が言ってると、自己満足で言ってるみたいに聞こえるんじゃないかと心配だったのよね。それも分かるんだけど、やっぱり会って良かったですね。

MC:映画を観た方のコメントで、「加賀さんと塚地さんが本当の親子に見える」という声がたくさんあったのですが、加賀さんはもともと塚地さんのファンだったとか?

加賀:大ファンです。温かいところと、素の塚地さんの写真を見たことがあるんですけど、すごいおしゃれで。お笑いの方は、ファッションセンスが良いのよね。お芝居も上手いですもん。「間宮兄弟」も好きでしたし。

MC:塚地さんは、加賀さんと共演されていかがでしたか?

塚地:ご本人は嫌がりますけど、大女優でいらっしゃって、なおかつバラエティ番組に出ている時の加賀さんは歯に衣着せぬ物言いみたいな。だから怖かったですよ、お会いするまでは。でも、初めて顔合わせをしたときに、グループホームを訪問させていただいて、僕にできるのだろうかと悩んでいる時でもあったんですが、悩みを一切見せないように明るくしていたら、加賀さんから「悩んでるわね」ってすぐ見透かされて(笑)。うわ!ってなって、そこから「そうなんです。僕で大丈夫なのかなって思って…」みたいに、すぐ言えるようになったので、本当に頼れる先輩でありながらも、僕の中ではお母さんのような感覚になれたのは、会った初日でしたね。家の中のシーンでは、忠さんはルーティンをこなすんですけど、リハーサルでこうやろう、ああやろうは全く無くて、僕が起きてるところに加賀さんが言葉をかける、手助けをしてくれるから、僕はただただ暮らしてるだけだったという(笑)。道中で加賀さんがいろんあことをしてくれて、それが親子に見える感じだったし、口の周りに食べ物が付いちゃうシーンも計算でもないし、それを拭く加賀さんみたいに日常のやり取りが出来たのが大きくて、それで親子になれたんじゃないかなと思いますね。

MC:監督はいかがですか?

和島:あの場面はスムーズに進みましたし、基本的に2人のシーンは日常を切り取っているので、2人が自然に演じてくださっていますので、それをそのまま撮影しております。

MC:加賀さんは、本作をご覧になられて、どんなお気持ちでしたか?

加賀:私はとにかく、息子の忠さんのことを、ご覧になった方が好きになってほしいと、ずっとお腹の底で考えていて。それだけで、存在しようとして、余計なことや芝居を考えずに画面の中に居ようと思ってましたので、それが伝われば一番嬉しいです。

MC:ありがとうございました。ここでお時間です。最後に一言ずつご挨拶をお願いします。監督からお願いします。

和島:普段、自閉症の方と関わることができない方とか、現実の問題を知ること無く、直視できずに生活していらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思います。この映画を通して、こういった問題や、ありきたりな日常を大切にしている人達の事情を知って、それを現実に持ち帰って自分の眼差しの変化を大切にしていただきたいです。監視するんじゃくて、少しでも見守りの眼差しに変わったらいいなという思いで作りました。よろしくお願いします。

塚地:この間、取材をしてくださったライターの女性が、実際に自閉症のお子さんを持つ方で、「子供と一緒にこれを観た」という話で、普段は映画を観ても、集中して観ることはないそうなんですけど、この作品だけは「忠さんを食い入るように観ていて、友達を見つけたみたいで楽しそうだった」っていう話を、笑いながらしてくださったんですよ。なんか、それやな!って思ったというか。そういう方々の共有する場所に映画館がなればいいなと。映画を観た後に、ちょっと肩の力を抜いてまた明日から頑張ろうと思ってもらえれば嬉しいですし、近隣で自閉症の方を見かけた時に、優しくなれる映画だと思うので、ありがたいことに劇場の数の増えていますので、多くの方々に観てもらえたら幸いだなと思っております。

加賀:この映画を観た方が、町中で自閉症の方に出会ったときに、手を差し伸べてくださらなくてもいいんですけど、微笑んでくれたらいいなって、それだけを願っております。

『梅切らぬバカ』
11月12日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開
監督・脚本:和島香太郎
出演:加賀まりこ 塚地武雅 渡辺いっけい 森口瑤子 斎藤汰鷹 林家正蔵 高島礼子
配給:ハピネットファントム・スタジオ

【ストーリー】 山田珠子(加賀まりこ)は、息子・忠男(塚地武雅)と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが…。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

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