MC:貴重なお話ありがとうございます。そして吉永さん、松坂さん、広瀬さん、西田さんに伺いたいんですけれども、世界がこうしてコロナウイルスと戦う中で、医療をテーマにした作品と携わられて、ご自身の医療ですとか命に対しての考えというのは変わったのかなと想像するんですが、お客様にどのようなメッセージをお伝えしたいですか? 吉永さん。
吉永:先ほど南先生が「生ききる」とをおっしゃったんですけれども、とても心に留めておかなければいけない言葉だと思いますし、1日1日を精一杯に生きるっていうことが明日につながるし、それが最後までできれば自分は幸せだったと思えるんじゃないかなって。でもなかなかそういうふうにできる方は少ないかもしれないけれども、みんな努力して大変な時代ですけれども、生きましょうと言いたいですね。
MC:ありがとうございます。松坂さんはいかがでしょうか?
松坂:身体を治すだけが全てではない、もちろんそれもあるんですけれども、その人その人、その家族その家族、それぞれの幸せのカタチがあって、過ごし方があって、日々があって、そういう小さな日々の積み重ねによって人生の命のしまい方に繋がっていくんだなっていうことを、本当に強く感じましたね。僕自身も、自分の命のしまい方を改めて考えさせられるようなことがありました。
MC:“命のしまい方”というのがとても印象的な言葉ですよね…。
吉永:早すぎますよね? そんなことをおっしゃるのは(笑)。
西田:早いですよ。そういう発言は70を超えた人間が言うんですよ。俺たちが言うこと無くなっちゃうじゃない。
泉谷:そうそう違うだろ! お前、言い過ぎだよ!
松坂:はい…、もっと謳歌したいです(苦笑)。もっと、一日一日、充実できるように生きたいと思います…(苦笑)。
西田:生ききってください!
松坂:生ききります、はい…(苦笑)。
MC:ありがとうございます(笑)。広瀬さん、いかがでしょうか?
広瀬:そうですね、今回病院ではなく、お宅に訪問して治療していくっていう世界を、なんとなく聞いたことはあったりはしたんですけど、寄り添い方だったりとか、こんなにも違う世界なんだっていうのが、今回すごく役作りをしていく上で、麻世ちゃんの優しさであったり性格から出る寄り添い方っていうんですかね? なるほどと思った部分もあったんですけど、さっき松坂さんがおっしゃった、家族の幸せな形をつくるっていうのは、なんか味方でいてくれる人はいるんだなっていうのが、いのちをしまうときに味方がいてくれる、近くに人がいてくれると思える環境があるっていうのは、すごくいいなぁと思いました。
MC:ありがとうございました。西田さんはいかがでしょうか?
西田:齢70を超えた人間の発言をこれから述べたいと思います。本当に生ききる、そして見事に自分の死をちゃんと自然死の中で迎えることができる方は、本当に幸せだと思います。今、世界ではミャンマーにしたって自分の同胞から鉄砲で撃たれて亡くなる方もいるし、過去の戦争においては原爆で亡くなった方もいらっしゃいます。消されちゃった感じの亡くなり方ですよね。それから、この間の震災では津波に飲まれてしまった命たち。そういった命たちに比べたら、本当に本当に自然死を迎えることができるということは幸せなことだという風に考えて、私もその幸せな死に方をなんとか模索して、その幸せな死に方を自分の中でどう受け入れられることができるのかというと、生ききるということだと思うんですね。自分に与えられたことを一生懸命やっていく、それしか手はなさそうだと思っています。そういった意味では“死ぬ”ということを、僕も日常的に考える年齢になりましたので、どう命をたたむか、そのことを毎日毎日考えているというか、夜寝る前には必ず1回は「明日死んでたらどうしようかな?」って考えます。そんな人生も、なんか幸せだなというふうに思います。よろしくどうぞ。
MC:ありがとうございました。残念ながらお時間の方が近づいてまいりました。最後に出演者を代表して吉永さん、そしてスタッフを代表しまして成島監督よりメッセージをいただきたいと思います。吉永さん、よろしくお願いいたします。
吉永:今日は本当にありがとうございます。そして今ここでちょっとお礼を申し上げたいと思うのは、今回この映画を制作するにあたって医療関係の皆様に大変暖かいサポート、また教えていただいたり、それから映画を観ていろいろ感想お寄せいただいたりしたことです。こんな大変な時期に、この映画を観てくださって、そして私たちに力を与えてくださったことを感謝しております。またこの映画に関して、マスコミの皆さまがとても暖かい記事を書いてくださって、それも大変うれしいことです。また、今日映画を観てくださっている皆様、心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。
MC:ありがとうございます。成島監督、お願いいたします。
成島:全国で観て下さった皆様へ、本日は本当にありがとうございました。コロナ渦の中で、この素敵なメンバーで我々心をひとつにして不安の中で撮り切って、そして今日、初日を迎えることができました。最後に、今ご覧になって字幕のスタッフのところでトップに出てきたの岡田裕介さん、この映画の総指揮をしてくださって去年の11月この映画の完成直前に残念ながら亡くなってしまいました。本当に原作の発掘から脚本作り、現場キャスティングの話、吉永さんと一緒に二人三脚でやってきて、最後は映画を観てもらえなくて残念でしたけど、多分今日皆さんと一緒に劇場で笑って観てくださっていると信じています。そして岡田さんも命を削ったこの映画が、我々も本当に一生懸命やりました。今日皆さん、心のどこかで伝わっていただければ、どうかこの映画を広めていただければ、こんなに嬉しいことはありません。本日はどうもありがとうございました。
▲一時降壇していた みなみらんぼうも、最後は元気な姿を見せた。軽い貧血だったという。
『いのちの停車場』
5月21日 全国公開
監督:成島出
原作:南杏子「いのちの停車場」
脚本:平松恵美子
出演:吉永小百合 松坂桃李 広瀬すず 南野陽子 柳葉敏郎 小池栄子 みなみらんぼう 泉谷しげる 石田ゆり子 田中泯 西田敏行
配給:東映
【ストーリー】 都内の救命救急センターで働いていた主人公・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件をきっかけに故郷の金沢へ戻り、在宅専門医として「まほろば診療所」で働き始める。院⻑の仙川徹(⻄田敏行)、亡くなった姉の子・翼を育てながら働く看護師の星野麻世(広瀬すず)、東京から咲和子を追いかけてやってきた医大卒業生の野呂聖二(松坂桃李)も加わり、いつしか「まほろば」は咲和子にとってかけがえのない家族のような存在に。穏やかな時間を過ごすため、自分らしく生きるため、様々な理由から在宅医療を選択した患者やその家族と向き合ううち、咲和子は“命の終わり”に心地よく寄り添う医療とは何か、深く考えるようになる。
©2021「いのちの停車場」製作委員会