2019年、中国当局の締め付けで自由がそぎ落とされていく香港で、警察と衝突しながら抗議したデモの様子を描いたドキュメンタリー映画『時代革命』が、8月より公開されることが決定した。併せて、特報映像がお披露目となった。
2019年、香港で民主化を求める大規模デモが起きた。10代の少年、若者たち、飛び交う催涙弾、ゴム弾、火炎瓶……。本作は、この最前線を中心に、壮絶な運動の約180日間を多面的に描いていく。
デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が立法会に提出されたことだった。運動が盛り上がってゆく2019年6月ごろからの動きを追う。参加者たちは「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「普通選挙の導入」などを五大要求として掲げ、6月16日には、香港の人口の約3割を占める約200万人(主催側発表)に膨れ上がった。警察との衝突は徐々に激しさを増す。デモ参加者には10〜30代の男女が目立ち、70代の男性の姿もあり、青年が警官に突然銃撃されるショッキングな場面も映し出される。「ささやかな我が命を200万人に捧ぐ」という遺書を残し、自殺する者も出た。自由や民主主義は、損なわれる危機に直面して、得難く尊い価値を人々に自覚させるのかもしれない。「光復香港、時代革命」「香港人、加油」と声を上げて抗議する若者たち。中核的な組織体やリーダー不在の運動だが、SNSを駆使し、機動的に統制されている実態も明らかになる。立法会、地下鉄駅、香港中文大学、香港理工大学などの場面が積み重なり、組み合わされ、運動の大きなうねりを記録していく。映画では、香港理工大学でのデモ隊の敗北が重苦しく描かれる。増える逮捕者。香港から離れていく人々。民主化運動は逃亡犯条例改正案の撤回を勝ち取ったものの、2020年夏、中国当局の意向を踏まえ、より強圧的な香港国家安全維持法が施行された。自由への圧迫はますます強まった。新型コロナウィルス感染症も追い打ちをかけ、デモは封じられた。自由とアイデンティティーをめぐる、絶望と希望の物語が描かれる。
本作は香港国家安全維持法施行後、地元香港での上映は行えず、カンヌ国際映画祭や東京フィルメックスなどでも上映直前まで作品名・内容共に伏せられ、サプライズ上映をしたことによって国際的にも大きな反響を呼んだ。
『時代革命』
2022年8月より、ユーロスペースほか全国順次公開
監督:キウィ・チョウ
配給:太秦
【作品概要】2019年、香港で民主化を求める大規模デモが起きた。10代の少年、若者たち、飛び交う催涙弾、ゴム弾、火炎瓶……。本作は、この最前線を中心に、壮絶な運動の約180日間を多面的に描いていく。
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