SKY-HI「スパイク・リー監督の最高傑作!」『ブラック・クランズマン』スペシャルトークショー レポート

1979年に黒人刑事が過激な白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査するという事件を綴った同名ノンフィクション小説を映画化し、第91回アカデミー賞では脚色賞を受賞した、スパイク・リー監督最新作『ブラック・クランズマン』が3月22日より公開中。このほど、4月2日にTOHOシネマズ シャンテにてスペシャルトークショーが開催され、ラッパー、SKY-HIと原作本翻訳監修の丸屋九兵衛が登壇した。

たくさんの観客が集まる中、本日のMCである丸屋九兵衛の呼び込みにより、SKY-HIが会場に登場。以前より親交があるという二人は熱い抱擁を交わし、SKY-HIから「宇多丸さんのおかげでラッパーは映画に詳しいと思っている人も多いと思うんですけど、僕はそんなことないんです。この映画を観て、これは面白いと思ったし、今日は先輩の丸屋さんもいらっしゃるので、丸屋さんのお話を聞いて学びたいポイントもあるので楽しみにしていました」と明かしスペシャルトークショーがスタートした。

■映画の感想について
SKY-HI:素晴らしいなと思いました。映画の中で皮肉を込めて現代とリンクさせようとしてるのが、スパイク・リーらしいなと思いました。アメリカ・ファーストという言葉とか、どこかで見たな、聞いたな、と思うことが所々出てきて、70年代が舞台なのに自分の生きている現代につながると思いながら観ていたら、ラストシーンは強烈!スパイク・リーらしいですよね。

丸屋:この映画、ラストシーンに賛否両論があるらしいけど、これごときで強引だとか言ってたら他のスパイク・リーの映画観られないよ。普段どれだけ強引なことやってるか!

SKY-HI:そうですね。最後のシーンが終わって本当にゾワッとしますもんね。

■アカデミー賞におけるスパイク・リーについて
SKY-HI:スパイク・リーって、アカデミー賞のような、そういう権威に認められることにはあまり興味がないのかなと思ってたんですけど、受賞した瞬間すごく喜んでいましたよね。あれは意外でした。アカデミー賞受けする作風を無視して媚びずにやってきての受賞で、すごく熱いものを感じました。

■実話との違いについて
SKY-HI:映画には原作にない部分がありますよね?クワメ・トゥーレの演説シーンを印象的に仕上げていて特に好きです。丸屋さんは要らなかったんじゃないかって言ってましたよね?

丸屋:KKKへの潜入捜査という話に絞るのであればね。原作との大きな違いは時代設定です。映画では1972年になっていますが、実際にはロン・ストールワースが警察官になったのが72年、クワメ・トゥーレの集会に潜入したのが75年、そしてKKKに潜入したのが78年末頃からです。実際には電話じゃなくてKKKに手紙を送っています。そしたら本当に電話かかってきてびっくりしたという…。

SKY-HI:クワメ・トゥーレの演説をめちゃくちゃかっこよく撮っているのに対して、白人警官をかっこ悪く描いているところもありますよね。

丸屋:でもロンの仲間の白人警官は格好良かったよね。あともう一つ、原作ではチャックという偽名で登場する、ロンの代わりにKKKに潜入捜査する白人刑事について。映画ではフリップ・ジマーマンという名前で、彼はユダヤ人だという設定がありました。

SKY-HI:フリップがKKKのメンバーであるフェリックスに尋問されているシーンも印象的でした。フリップは周りの白人と見た目は変わりないし、ユダヤ教徒らしい生活もしてなかった。自分でもその意識のなかった人が、尋問されて自分のアイデンティティを見直すシーンとか…。

丸屋:そこは我が国にも当てはまるよね。

SKY-HI:原作も黒人警官のロンの話だし、映画にしたのも黒人のスパイク・リー、それを見ている我々は黄色人種ですが他人事じゃないなと思いました。

丸屋:他に映画らしい原作との違いは、爆発のシーンとかかな。実際は爆発してないですから。でも原作通りのところももちろんあって、KKK最高幹部のデビッド・デュークが黒人の話し方の特徴について黒人のロンに電話で話しているエピソードとか、本当にデビュッド・デューク間抜けだなと思うんだけど、映画で見るとさらに間抜けに見えるね。

■ハリウッドにおけるブラックムービーの潮流について
丸屋:映画界ではフットボールと同じで、黒人は選手としては一流だが監督コーチはできないと言われてたんです。役者もコメディー役が多かった。それがシリアスな役も認められるようになったんだけど、黒人監督の作品も認められるようになってきました。

SKY-HI:作品のクオリティもそうですけど、権威が無視できない存在になってきましたよね。スパイク・リーなんてその象徴なんじゃないですか。スパイク・リーの主張は僕も物を作る人間としてすごくかっこいいなと思います。スパイク・リー監督作品では『ドゥ・ザ・ライト・シング』が好きです。この映画でスパイク・リーの作品初めて観ましたし。

丸屋:『ドゥ・ザ・ライト・シング』と『ブラック・クランズマン』だったらどっちが好き?

SKY-HI:う〜ん悩みます。今人に勧めるなら『ブラック・クランズマン』。

丸屋:僕は『ブラック・クランズマン』が一番の作品だと思っている。コメディーとかも撮ってたけど、この映画が監督らしくてこれがベストだと思う。

SKY-HI:確かに面白いですもんね。

最後に、SKY-HIは観客へ向けて、「『ブラック・クランズマン』は映画としてが面白いんです。この映画は敷居が低くて奥が深い作品の究極系かな。スパイク・リーの最高傑作だと思います。そしてアメリカ現代の社会を描いているのももちろんだけど、72年のアメリカ社会を描きながら、現代のアメリカ社会を描き、それはこの時代を生きる我々にも自分ごとのように刺さるところがある、そんな映画です」とコメントし、本トークショーは幕を閉じた。

『ブラック・クランズマン』
3月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開中
監督・脚本:スパイク・リー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン アダム・ドライバー ローラ・ハリアー トファー・グレイス アレック・ボールドウィン
配給:パルコ

【ストーリー】 1979年、アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署でロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は初の黒人刑事として採用される。署内の白人刑事から冷遇されるも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)のメンバー募集に電話をかけてしまう。自ら黒人でありながら電話で徹底的に黒人差別発言を繰り返し、入会の面接まで進んでしまう。問題は黒人のロンはKKKと対面することができないことだ。そこで同僚の白人刑事フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)に白羽の矢が立つ。電話はロン、KKKとの直接対面はフリップが担当し、二人で1人の人物を演じることに。任務は過激派団体KKKの内部調査と行動を見張ること。果たして、型破りな刑事コンビは大胆不敵な潜入捜査を成し遂げることができるのか―!?

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