山田孝之「撮影が始まるとあっという間に今日まで来た、感無量」『デイアンドナイト』初日舞台挨拶レポート

名実ともにトップを走り続ける俳優・山田孝之が、一切出演せずに裏方に徹し初の全面プロデュースに挑戦し、山田とは旧知の仲である俳優・阿部進之介が主演を務める映画『デイアンドナイト』が1月26日に公開初日を迎え、同日、シネマート新宿にて初日舞台挨拶が行われ、阿部進之介、安藤政信、清原果耶、藤井道人監督、山田孝之プロデューサーが登壇した。

完成までの6年という長い道のりに阿部は「藤井監督と『どうしようか?』というところから始まり、孝之が入ってくれて、ゼロからみんなで話し合っていく中で安藤さんや清原さん、そしてスタッフの皆が集まってくれた」と振り返り、「ロケ地を決めたり、ゼロから作品を作る過程を経験したことで、自分にとって大切な作品という気持ちも芽生えた。道のりは長かったけれど、一つの作品を観客に届けるとはこういうことだと体感し、とても感無量」と大きな糧を得た様子だ。

プロデューサーとして初めて映画を制作した山田は、ロケ地交渉、脚本開発、キャスティングなど映画制作実務に深く関わり、「脚本の開発に時間を割いたし、脚本会議が終わって外に出たらもう朝だったということも思い出深い。秋田県に行って市長に会って話をしたり。でも撮影が始まるとあっという間に今日まで来たという感覚。感無量です」とシミジミ。藤井監督も「準備期間は長かったけれど、ジェットコースターのような日々。自分の人生の中でもターニングポイントになる作品だと改めて感じる」と感無量の表情だった。

児童養護施設のオーナー・北村役の安藤は「僕は映画俳優ですから、愛のあって尖ったセンスのある映画に出られたことが嬉しい」と喜び、「ゼロから作るという苦悩を分かち合っていないから、孝之たちに比べたら自分は何もやっていません」と言うと、山田からすかさず本作PRのためにテレビ番組に出演したことを感謝される場面もあった。

主題歌も担当する清原は「月日をかけて作ってきたものの中に主題歌としても映画の力になれるのは嬉しい」としつつも、「レコーディングの時はくよくよしっぱなし。声も出ないし、思ったように歌えなくて悩みました」と舞台裏を紹介。藤井監督は「この曲がエンディングで流れることによって、この映画を救ってくれたと思った」と感動し、阿部に楽曲を聴かせた際には「泣きそうになっていたので…可愛いなぁと」と暴露。当の阿部は「清原さんが役として歌っているので、自分も演じた明石の気持ちになってしまって」と照れていた。

また俳優の山田がプロデューサーを務めたことについて阿部は「役者がどうやったら役に集中できるかに重きを置いた配慮があって、それは役者の気持ちが理解できていないとできないこと。『自分だったら』ということを全部やってくれて、集中しやすい現場だった」と同じ俳優ならではの気配りを明かし、「役に入り込むことを知っている人間がプロデューサーとして現場にいてくれるだけで、それが心のよりどころになった」と感謝した。安藤も「現場にはほぼ毎日いてくれて、僕らの芝居も見ていてくれた。孝之は芝居のうまい人なので、見られるとプレッシャーもかかるけれど、それが力になって『もっとやってやるぞ!モニターで見ていてくれ!』というテンションになった」と山田の存在がいい起爆剤になったようだ。

阿部や安藤からの全幅の信頼に、当の山田は「間近で俳優さんたちの本気の芝居を見て、とても感動しまして、俳優って素晴らしいな、カッコいいな、これからは自分ももっと自信を持って俳優だと言っていこうと思った」と照れ隠し。それに阿部は「僕の芝居が終わった帰り道に、『プロデューサーとして役者って素晴らしいと思った』と言ってくれて嬉しかった」と山田の素顔を明かしていた。

最後に阿部は「答えを出さないことを大切にした映画です。なので、皆さんがそれぞれ感じたものが『デイアンドナイト』になる。人それぞれ見方によって感じ方は違うはずなので、大切な人とこの映画について話し合うきっかけになれば嬉しい」とアピール。藤井監督も「大切な人と語り合えるような作品にしようと、丁寧に作り上げたつもり。沢山の答えがある作品です」と思いを込めた。

『デイアンドナイト』
1月26日(土) 全国公開
1月19日(土) 秋田県先行公開中
監督:藤井道人
企画・原案:阿部進之介
プロデューサー:山田孝之 伊藤主税 岩崎雅公
脚本:藤井道人 小寺和久 山田孝之
出演:阿部進之介 安藤政信 清原果耶 小西真奈美 佐津川愛美 深水元基 藤本涼 笠松将 池端レイナ 山中崇 淵上泰史 渡辺裕之 室井滋 田中哲司
配給:日活

【ストーリー】 父が自殺し、実家へ帰った明石幸次(阿部進之介)。父は大手企業の不正を内部告発したことで死に追いやられ、家族もまた、崩壊寸前であった。そんな明石に児童養護施設のオーナーを務める男、北村(安藤政信)が手を差し伸べる。孤児を父親同然に養う傍ら、「子供たちを生かすためなら犯罪をも厭わない」という道徳観を持ち、正義と犯罪を共存させる北村に魅せられていく明石と、そんな明石を案じる児童養護施設で生活する少女・奈々(清原果耶)。しかし明石は次第に復讐心に駆られ、善悪の境を見失っていく—。

©2019「デイアンドナイト」製作委員会