淵上泰史「阿部進之介と現場で一言も会話しなかった」『デイアンドナイト』第2弾公開記念トークショーイベントレポート

名実ともにトップを走り続ける俳優・山田孝之が、一切出演せずに裏方に徹し初の全面プロデュースに挑戦し、山田とは旧知の仲である俳優・阿部進之介が主演を務める映画『デイアンドナイト』が、1月26日より公開中。このほど、2月24日にシネマート新宿にて第2弾公開記念トークショーイベントが行われ、淵上泰史、藤井道人監督が登壇した。

本作では、明石(阿部進之介)の父を死に追い込むきっかけとなる大手企業の社員・三宅(田中哲司)とともにリコール隠しを行う川上役を演じ、本作以外にも映画『7s/セブンス』、『青の帰り道』などにも出演する、藤井監督作品常連の俳優・淵上泰史。2人は、藤井監督が大学時代に友人の卒業制作の作品でプロデューサー、淵上が主演として携わったことで仲良くなったそう。よく2人で「売れたいね」などとお酒を飲み交わしていたエピソードが語られる中で、当時の藤井監督の印象について淵上は「20代だったということもあり、イケメンでイケイケ感があった」と言えば、対照的に本人は「当時、茶髪だったこともあり大学では“キリスト”と呼ばれていた」と会場を笑わせた。

本作で、川上役に淵上を起用した理由について藤井監督は、「助監督経験がなく、自主映画で監督をやり続けてきて、スタッフ、キャストが僕の全て」と自身の作品作りへのスタンスを語り、「作品の中で僕の投影したい役を淵上さんにお願いすることが多い。自分の信頼できる俳優部に最初に声かけさせていただいた」と淵上への全幅の信頼を寄せるコメントに対し、「藤井監督の作品規模が大きくなっている中で声をかけてくれる有難さ、映画としても役者としても残したいなと思う。10年前から映画作りのスタンスが変わっていない。監督として大きくなっていくのはうれしい」と笑顔で讃えていた。

主人公・明石役の阿部との撮影について、淵上は現場では阿部と挨拶程度で一言もしゃべっていなかったという。その理由について淵上は、「役柄として阿部さんと関係性を作る必要がなかった。実際に作品を観た時に変な間が合って緊張感もあって面白かった」と振り返った。藤井監督は、「クランクインしてすぐの撮影で、明石と川上の地方ならではの関係性ってあるよなと思いつつ、芝居を通した時の不快感がすごい気持ちいいと思った。淵上さんの演技には背景が見える」と淵上の演技を絶賛する場面もあった。

さらに、この日、立ち見が出るほどの満員となった場内からいくつかの質問が。その中で、秋田県での撮影にも関わらず、あえて方言を使わなかった理由について質問が及ぶと、実は藤井監督を始めとしたスタッフ間でクランクイン前にその議題になっていたことが明かされた。「海外に目を向けたときに、秋田弁を使うとキャラクターそれぞれの感情に角が立ってしまうので、日本のどこにでも起きることなので限定しなかった」と制作秘話が語られ、観客もうなずいている様子だった。

最後に淵上は、「暗いとも取れる、希望とも取れる映画を作る監督とは、お互いに何物でもないときからの付き合いであり、弟のようにかわいがっている藤井監督の作品をぜひ、みてください。淵上もよろしくお願いします」と茶目っ気たっぷりに語り、藤井監督は「大切な映画になったので、色々な感想が出てくると嬉しいですし、こんな映画観たよと伝えていただけると嬉しいです」とコメントし、会場は大きな拍手に包まれ本イベントは幕を閉じた。

『デイアンドナイト』
1月26日(土) 全国公開中
監督:藤井道人
企画・原案:阿部進之介
プロデューサー:山田孝之 伊藤主税 岩崎雅公
脚本:藤井道人 小寺和久 山田孝之
出演:阿部進之介 安藤政信 清原果耶 小西真奈美 佐津川愛美 深水元基 藤本涼 笠松将 池端レイナ 山中崇 淵上泰史 渡辺裕之 室井滋 田中哲司
配給:日活

【ストーリー】 父が自殺し、実家へ帰った明石幸次(阿部進之介)。父は大手企業の不正を内部告発したことで死に追いやられ、家族もまた、崩壊寸前であった。そんな明石に児童養護施設のオーナーを務める男、北村(安藤政信)が手を差し伸べる。孤児を父親同然に養う傍ら、「子供たちを生かすためなら犯罪をも厭わない」という道徳観を持ち、正義と犯罪を共存させる北村に魅せられていく明石と、そんな明石を案じる児童養護施設で生活する少女・奈々(清原果耶)。しかし明石は次第に復讐心に駆られ、善悪の境を見失っていく—。

©2019「デイアンドナイト」製作委員会