【全起こし】綾野剛が村上虹郎の「自動車教習所での本気芝居」に爆笑! ジョン・ウーも絶賛した『武曲 MUKOKU』初日舞台挨拶を全文掲載!

映画『武曲 MUKOKU』の初日舞台挨拶が、6月3日(土)、新宿武蔵野館で行なわれ、出演者の綾野剛、村上虹郎、監督の熊切和嘉が登壇。作品の裏話などを語った。今回はその模様を全文掲載でお届けする。

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MC:それではお待たせいたしました。早速お呼びいたしましょう。皆さま、盛大な拍手でお迎えください。綾野剛さん、村上虹郎さん、熊切和嘉監督です。
(会場拍手と歓声)
綾野:(新宿武蔵野館の内部を見て)やっぱり好きですねえ、こういう雰囲気は。
MC:リニューアルして、またますます素敵な映画館になりました。そして、今日は初日の第一回目を見に来てくださいましたお客様にですね、早速ご挨拶をいただければと思います。まず初めに、綾野剛さんです。
綾野:どうも。朝からこんな、地獄のような映画を選んでくださって(会場笑い)、本当に感謝です。観終わった後で、非常に余韻が大事な映画なのにも関わらず、こうして出しゃばって出てきちゃいまして申し訳ない気持ちもあるんですが、短い時間ですがよろしくお願いします。
MC:よろしくお願いいたします。続きまして、村上虹郎さんです。
村上:お疲れ様です。そして、おはようございます。この日を迎えられてとても幸せです。よろしくお願いいたします。
MC:ありがとうございます。そして本作を手がけられました、熊切和嘉監督です。
熊切:よろしくお願いいたします。監督の熊切です。上映後の舞台挨拶ってなんかどういう反応があるかすごく不安があるのですが、なんとなく皆さんの表情を見てホッとしました。とにかく今日は感謝しかありません。本当にありがとうございました。
MC:ありがとうございました。まずは綾野さん、熊切組は『夏の終わり』(’13)以来、4年ぶりとなりました。今回、主演でのご出演でしたけども、どんなお気持ちで撮影に臨まれましたか?
綾野:5年前に『夏の終わり』に参加させてもらった時は、熊切組に入れるという喜びで、地に足がついていなくて、すごく心残りがあったんですが、それ以降、熊切さんに会うたびに「必ずまたやろうね」とおっしゃってくれていたので、そのことを信じながら、今日まできて本当に良かったなあと思ってますし、主役として現場に立ってはいるんですが、本当に熊切さんに自分の身を委ねて鮮度の高い状態で現場に入るってことだけしか決めていなかったので、『武曲 MUKOKU』の一員として入ったという意識のほうが強いかもしれないですね。
MC:ありがとうございます。そして、村上さんはとても熊切組に入りたかったという、いつかお仕事してみたい監督のひとりだったということなんですけど、実際に参加されてみていかがでしたか?
村上:最高でした。
MC:特に印象的に残っている出来事はありますか?
村上:監督は、現場に入ってからほとんど会話した記憶がなくて、ずっとこう、誰よりも、僕らなんかよりもキラッキラした目で僕らをずっと見つめていてくれて、いちばん楽しそうに手ぬぐい巻いて、いちばん武士みたいな格好をして見守ってくれていましたね(笑)。「いいっすねえ」って、言ってくれるんですよ。
MC:監督、そんな感じだったんですか?
熊切:はい(笑)。そうだと思います(笑)。
村上:「カット!」ってかからずに、「いっすねえ」って言って、これOKなのかOKじゃないのか分からない時があったっていう(笑)。
熊切:つい出ちゃう(笑)。
綾野:あんまり「いっすねえ」言われると、本当にホッとするよね(笑)。

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MC:ありがとうございます。そして監督、この作品を撮ることになった経緯として、脚本を読んで気に入られたということなんですけど、その辺のポイントはどんなところでしたか?
熊切:このストーリー自体にもとても興味を惹かれたんですが、脚本を読んだ時にあまりセリフに頼らずに肉体表現で見せる映画だと思いまして、これはすごくハードルが高いんだけど、逆に挑戦したいなというところがありました。
MC:そして実際、おふたりが表現してくださって、手応えは?
熊切:ふたりを撮ってると、自分の運動神経が良くなったかのような、錯覚を覚えるような、そういう感じでした。

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MC:ありがとうございます。今回、原作者の藤沢周さんが完成した作品をご覧になって「すごい迫力だった。原作者の僕が研吾という人物、そして融という人物について、こんな人だったんだと逆に教えられた」とおっしゃってましたけど、それぞれこの役に、どのようにアプローチしていったのですか?
綾野:いやでも、恐縮ですね非常に。藤沢さんにそんなことおっしゃっていただけるのは。やっぱり原作がいいから、ここまで映画もたどり着けているので、藤沢さんに感謝ですけど。えーと、なんでしたっけ?
MC:研吾という役に、どのようにアプローチしていったのでしょうか?
綾野:ちょっと救いのない、自分の役に対して「可哀想」だと思ったのは初めてなんですよね。ただここまで生きてるなと実感をしながら、彼を、役を生きていることも初めてに近いぐらい体内に入ってくるものがあったので、「それに侵食されてもいいや」っていう思いで。フィジカル面だけは相当高い位置で、アスリート並で現場に入れたので。どんなに飲み込まれてもいい状態を常に作っていました。役にも自分の身体を委ねていくっていうことを惜しまないっていうことを現場でやっていたと思います。
MC:ありがとうございます。村上さんは、今回融という役にどのように近づけていきましたか?
村上:僕は『武曲 MUKOKU』の原作を読んでいるので、それに助けられました。融は剣道の初心者なんですけど、運動神経が抜群というか。なぜか古武術、下段の構えをするんですけど、あの構えとかも適当にやってるんですけど(笑)。誰にも相談せずに、「こんな感じかな?」と思ってやってるんですけど、それも原作からもらったインスピレーションだったかなと。

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MC:ありがとうございます。そして、熊切監督の映画人生にも影響を与えたジョン・ウー監督も本作を絶賛してくださっています。コメントをご紹介させていただきます。「いろんな面で人を勇気づける素晴らしい映画。剣道という日本古来の武術を題材としながら、現代を生きいる若い世代に希望を与えている」という素敵なコメントをいただきました。(会場拍手)綾野さん、聞かれていかがでしたか?
綾野:ちょっと、あまりにすごくて…ピンとこないのが正直なところですが、非常に言葉を尽くしてくださっている印象を受けていて、自分たちの今後の役者人生の大きな糧となっています。
MC:村上さんはいかがでしょう?すごい監督からこんなコメントがきましたけど。
村上:実感がないです。(一同笑い)
MC:(笑)。本当にたくさんの方が絶賛している本作なんですけども、今回、ラストの台風のシーン、ぜひ監督にお聞きしたいのですけど、過酷でしたよね、撮影は?
熊切:そうですね、三日間かけて撮影してまして、いろいろ仕掛けもありますし大変だったんですけど、でも2人は本当に大変だったと思います。ただ僕は楽しかったです(笑)。
MC:綾野さん、大変でしたよね?
綾野:大変でしたけど、雨も降らせてますし。夏とはいえ、身体は疲弊していくので、その疲弊していくものも、ちゃんと映してくれる監督なので、「ひたすら疲弊していけばいい」という思いでやってましたし、後半から、体力面ではまったく疲れなかったんですよ。本当に身体を作っていたので、なおさらだと思うんですけど、どんどん楽しくなっちゃって、楽しくて仕方なかったというか。「早く殺してやるからかかってこい」みたいなほうが強くて(笑)。なにがともあれ、大きいケガがなく済んだことが大事なので、細かいケガは虹郎も僕もありましたけど、大きいケガがなくて本当に良かったなと。そこのアフターケアだけはちゃんとしていかなきゃいけないなと思ってました。初日から、5日後ぐらいにやったんですけよね、あのシーン。なのでなおさら、はい。
MC:ありがとうございます。村上さんは、あの雨の中で綾野さんと対峙されてみて、どんな気持ちでした?
村上:気持ち?
MC:どんなことを思い出されますか?
綾野:RPG(ロールプレイングゲーム)のラスボスって言ってたよね(笑)?(会場笑い)
村上:そうですね(笑)。それは、アフレコの時ですね。あの雨のシーンですけど、僕はあんまり人と一緒にアフレコする機会がなくて、剛さんと2人で7分位やったんですけど、面白かったですよね。マイクの前で、もう一回格闘してるんですよね。「ワー! うおー!」とか言って(笑)。
綾野:2人で「アホだなあ~」って(笑)、やってましたね。(会場笑い)

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MC:ありがとうございます(笑)。では最後にですね、本作にちなんだ質問をさせていただきます。この作品は闘うことでしか生きられない男たちの物語ですけども、そんな本作にちなみまして、最近皆さんが何かと闘ったエピソードがあれば教えてください。綾野さんから。
綾野:ちょっとマジメな話になっちゃいますけど、結局自分と向き合うことをやめてしまうと、自分が役者としてやっていけないんだなあと、改めて思ったというか。己と向き合って闘っていくという作業をしていかないと、肉体的にも精神的にも自分と向き合っていない作品というのはお客さんに届かないと思いますし、どんな感じの作品でも、まずは自分と向き合った上で役を踏襲していると思うので、そういった意味では改めて、今の自分の立ち位置と言いますか、いろんなパブリック・イメージも含めて、自分が今、この瞬間、自分と闘えているかっていうことを、きちんとこれから確認して実感して、体感していかなきゃいけない。そうしたものを、またよりよい形で皆さまに解き放つということをしていかなきゃいけないと改めて思ってます。
MC:ありがとうございます。
綾野:めっちゃマジメに話しましたね(笑)。
熊切:今ので終わったほうがいいかもしれない(笑)。
村上:終わり(笑)。
綾野:何かないの、虹郎は(笑)?
村上:僕は、闘ったかどうか分からないんですけど、最近僕、車の教習所を卒業しまして、試験だけ受けてないんですよ。
綾野:まだ受かったどうかは決まってないってこと?
村上:そうです。試験って教習所と、鮫洲とかで別じゃないですか?
綾野:あ、俺ね分かんない、実家でとってるから。
村上:あ、そっか。別なんですよ。学校と別なんですよ。で、今やっている作品のクランクインに合わせようと思って頑張ったのに、前日に学校を卒業して試験だけ受けられなかったんです。
綾野:(笑)。
村上:すごい悲しかったです(笑)。
綾野:それ負けになるのかなあ(笑)。
村上:負けましたね(笑)。応急救護ってあるじゃないですか。
綾野:うんうん。
村上:あれってちょっと芝居するじゃないですか。覚えてます?
綾野:分かるよ(笑)。ガチで芝居した時あるから(笑)。
村上:あれ、男女がたくさんいるのかなあと思っていたら、7人ぐらい全員野郎で、先生も野郎で(笑)。
綾野:え?集団芝居だったの?
村上:集団芝居です。
綾野:マジで(笑)!? 難易度高いな(笑)。
村上:で(笑)、芝居していくんですけど、なぜか僕が一番最後で、数人にバレてるんですよ。「あいつ役者だろ」みたいな(笑)。でも、芝居だから、僕は本業だし、ちゃんと声出していこうと。声出していきました。(会場爆笑)
綾野:最高だな(笑)、それ本当に(笑)。
MC:闘ってたんですね(笑)。
村上:「呼吸確認良し!」みたいな(笑)。
綾野:ちゃんとやったのね(笑)。いいねえ(笑)。
MC:ありがとうございます。
綾野:見たいね、いつかそういう虹郎の芝居を(笑)。
MC:じゃあ、熊切監督(笑)、だんだん時間がなくなってきましたが。
熊切:たいした話はないんですけど。普段は闘えない人なので、現場中のことなんですけど、去年の9月に撮影してて、天気と闘ってたなという。台風を狙ってはいたんですけど、台風が関係ないシーンも雨が降ってきたりして、朝撮って雨で中断して、また撮ってみたいな。それがすごく、2人も気持ちを繋ぐのが大変だったんだろうなと思いました。
村上:肝心の決闘シーンは、嵐じゃなかったですもんね。
熊切:あれはさすがに嵐を作ってね。はい。
MC:それでは皆さん、貴重なお話をありがとうございました。それでは最後に、お三方を代表して綾野さんから今日お越しくださったお客様にメッセージをお願いします。
綾野:「破滅か救いか」ということですが、愛に渇望した男たちが地獄に魅せられて、その中で怒りをたぐり寄せる作品だと思っております。この作品を観た時に、皆さんのなかで、なにかひとつ小さな希望が見つけられればと改めて思います。僕はこの作品が本当に、現場にいる時は激しく重い作品になるだろうなという予想しかできませんでした。ただ出来上がった時に熊切さんの愛や、融のみずみずしさだとか、そういったことが映っていて、最後に確かな希望が、確かな光が、それを求めた人間たちにちゃんと注いでいました。何かを求めることって、改めて大事だなと思っています。皆さまの中にも、求められるものがきちんと形になった時に、また僕たちはこうして皆さんの前に立てられるような姿勢で、皆さまにぜひ会えたらと思っています。どんなに作品がそれぞれ違えど、必ずまた戻ってこれますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
(会場拍手)

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『武曲 MUKOKU』2017年6月3日、全国ロードショー
監督:熊切和嘉 原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
配給:キノフィルムズ

©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会